しじみ蝶紫蘇の花の辺ちろちろと子のまま逝きしたれかれ浮かぶ
丁重に弔電披露のまだつづく会葬者こそ弔意はあつし
総毛立つさまに青葉をふるはせて明日は伐らるる桜の一樹
深鍋に春のキャベツをかさね入れ雪に耐へたる滋味ひきいだす
豆電球ともれるごとくはじめての幼の靴が畳に置かる
電柱のタールの匂ふ夕ぐれを肩ゆらすくせの父帰り来る
形見分け争ふこともせぬままに父の兵児帯水色褪せる
缶振りてとり出すドロップ萌黄色ハルモニウムはいかなる音色
生まれたる順列まもりて雲流る四人の姉妹またちりぢりに
兄知らぬ霞草デンファレ投ずれば波たゆたひて離れゆかざり
(寺島弘子 しをりひも 六花書林)
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短歌人同人の寺島弘子の第一歌集『しをりひも』を読む。短歌人入会の前は、日本歌人に所属されていて、歌暦は優に五十年を越える。その間の作品をまとめて五百首に構成しなおしてある。保育所で長く働いておられて、その歌も心に沁みる。寺島さんの人生が詰まっている歌集。表現は、シンプルで難しい言葉など使っていないのに、深く、重みを感じる。
丁重に弔電披露のまだつづく会葬者こそ弔意はあつし
総毛立つさまに青葉をふるはせて明日は伐らるる桜の一樹
深鍋に春のキャベツをかさね入れ雪に耐へたる滋味ひきいだす
豆電球ともれるごとくはじめての幼の靴が畳に置かる
電柱のタールの匂ふ夕ぐれを肩ゆらすくせの父帰り来る
形見分け争ふこともせぬままに父の兵児帯水色褪せる
缶振りてとり出すドロップ萌黄色ハルモニウムはいかなる音色
生まれたる順列まもりて雲流る四人の姉妹またちりぢりに
兄知らぬ霞草デンファレ投ずれば波たゆたひて離れゆかざり
(寺島弘子 しをりひも 六花書林)
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短歌人同人の寺島弘子の第一歌集『しをりひも』を読む。短歌人入会の前は、日本歌人に所属されていて、歌暦は優に五十年を越える。その間の作品をまとめて五百首に構成しなおしてある。保育所で長く働いておられて、その歌も心に沁みる。寺島さんの人生が詰まっている歌集。表現は、シンプルで難しい言葉など使っていないのに、深く、重みを感じる。