通勤という苦役幾年重ね来て妖怪ツトメニンに化けるか
日々の泡を抽象的に語りたる活字を追いて芯を病みしか
マンションのロビーに蝉の亡骸が転がっているそんな日常
総務部の管理職ゆえ管理する会議室、倉庫、その他の鍵を
ケイタイの液晶画面にいつの日かTHE ENDの文字浮かんで消える
罰としてコピー用紙で指を切り冬のオフィスの無期囚徒なる
(藤原龍一郎 日々の泡・泡の日々 邑書林)
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邑書林セレクション歌人シリーズの番外、藤原龍一郎集を読む。第九歌集。
都会的で華やかなイメージの藤原さんではあるが、日々の労働の歌に勤め人の悲哀を感じる。
目を引くような固有名詞が頻出する歌以外にも、しんみりした歌もあると思った。
歌集の後半には、アンソロジー 藤原龍一郎の目という章があって、これも面白く読める。
こういうオマケをつけるところが、藤原さんのサービス精神旺盛なところだろう。
わが夫と生年月日の近きゆゑ他人事ならぬ辰年の彼
(近藤かすみ)
日々の泡を抽象的に語りたる活字を追いて芯を病みしか
マンションのロビーに蝉の亡骸が転がっているそんな日常
総務部の管理職ゆえ管理する会議室、倉庫、その他の鍵を
ケイタイの液晶画面にいつの日かTHE ENDの文字浮かんで消える
罰としてコピー用紙で指を切り冬のオフィスの無期囚徒なる
(藤原龍一郎 日々の泡・泡の日々 邑書林)
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邑書林セレクション歌人シリーズの番外、藤原龍一郎集を読む。第九歌集。
都会的で華やかなイメージの藤原さんではあるが、日々の労働の歌に勤め人の悲哀を感じる。
目を引くような固有名詞が頻出する歌以外にも、しんみりした歌もあると思った。
歌集の後半には、アンソロジー 藤原龍一郎の目という章があって、これも面白く読める。
こういうオマケをつけるところが、藤原さんのサービス精神旺盛なところだろう。
わが夫と生年月日の近きゆゑ他人事ならぬ辰年の彼
(近藤かすみ)
というよりは、「まぼろしを視せてくれる、ただごと歌」といったほうがいいのでしょうか。
また、
謡歌(わざうた)として倖田來未ありたるを知らざれば新宰相の早口
みたいに大衆的で、新しいネタを盛り込むあたりは、さすがだと思います。
文庫歌集に新歌集を収録するのは、「新作をこそ、ベストの歌に。」という藤原さんの詩歌に対する、強い志を感じました。
色々と学ぶことの多い、一冊です。
体調が良くなくて、へろへろです。
このときの新宰相は安倍さんだったかな・・・?
世の中の変化が早くて、しんどいです。
この歌集、私はどちらかというと従来の藤原さんの
イメージ(彼の言葉で言えば「ギミック」)の延長上
で読みました。そういう歌と、「日々の労働の歌」と
混交している歌集、ということになるのでしょうか。
文学にかかわる者としての宣言のような歌も何首
かあって、印象に残りました。「日々の労働の歌」
の中に、勤めておられた企業の経営をめぐるゴタ
ゴタなどを題材にしたものが見当たらないのは、
藤原さんの見識なのであろうと思います。
何を歌にして、何を歌にしないかは、本人次第ですね。
会社のことは守秘義務もあるでしょうし。
後半のアンソロジー、とても面白く読みました。