地下鉄の高齢者席にわれはゐて点眼液を三種類注す
有終の美といふはかなき日本語を残して小さき同人誌消ゆ
<あなたにしか出来ない歌を作れ>とふこゑがまたする闇のなかより
(明石雅子 闇のなか)
白雲は空にくつきりその下に死の這ひ寄るは誰も知らずに
冬枯れの庭に遊ぶは風ばかり地震(なゐ)よりこなた雀が居らず
もう誰もかへらぬ家の葉牡丹の白冴え冴えと夕陽を迎ふ
(大和類子 白雲)
寡黙なる河原の石は孤独にて春の流れにうす目をあける
ねころびてけむりの輪っか作らむとほほポンと打つ弥生の空に
となりあう死とは思えど呵呵と笑えばペパーミントの風吹きわたる
(松永博之 弥生の空)
損益のバランスなどは考へもせずに一日レントゲン撮る
冬越せるブルーテントの三軒がそれなりの距離空けて立つ岸
雪舞へるなかを郵便自動車が道に出でむと一時停車す
(神代勝敏 風塵抄)
**********************************
短歌人5月号、初夏のプロムナードより。
有終の美といふはかなき日本語を残して小さき同人誌消ゆ
<あなたにしか出来ない歌を作れ>とふこゑがまたする闇のなかより
(明石雅子 闇のなか)
白雲は空にくつきりその下に死の這ひ寄るは誰も知らずに
冬枯れの庭に遊ぶは風ばかり地震(なゐ)よりこなた雀が居らず
もう誰もかへらぬ家の葉牡丹の白冴え冴えと夕陽を迎ふ
(大和類子 白雲)
寡黙なる河原の石は孤独にて春の流れにうす目をあける
ねころびてけむりの輪っか作らむとほほポンと打つ弥生の空に
となりあう死とは思えど呵呵と笑えばペパーミントの風吹きわたる
(松永博之 弥生の空)
損益のバランスなどは考へもせずに一日レントゲン撮る
冬越せるブルーテントの三軒がそれなりの距離空けて立つ岸
雪舞へるなかを郵便自動車が道に出でむと一時停車す
(神代勝敏 風塵抄)
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短歌人5月号、初夏のプロムナードより。