気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人10月号 秋のプロムナード つづき

2010-10-03 01:43:51 | 短歌人同人のうた
マネキンのくちびる読めば少年が妹を呼ぶニュウドウグモダ

足が消えパラソルのこりパラソルも見えなくなったオランダ坂に

(吉岡生夫 茅の輪)

夏つばめプールの水をその腹に青く映してすれすれに飛ぶ

冷房の部屋より見おり立秋の暑きベランダ蟻の動くを

(岩下静香 夏の縁(へり))

病みし子に夕月昇りいちめんの麦のにおいにつつまるる家

麦畑の遠きおもいでわが一世 いい月の夜の晩年であれ

(松永博之 ふるさとの歌そして山の歌)

親子丼の親子を憐れみ見下ろし居り こんなことの時折起こる

人毛筆使ひをりけり有るか無き泣きこゑ聞こゆる筆の付け根ゆ

(和嶋忠治 はんぺん男)

閉ざされたホテルに残る旗の列ひと夏風の栖でありぬ

壊れそうな君の風景支えゆく杭くらいにはなれただろうか

(守谷茂泰 光の街)

迷いたくなる美しい森のような人わたしを鎖で繋いでください

小さくて黒い鞄に一生を詰めこむ詰めこめてしまう実際

(高田薫 蜻蛉と紅葉)

卵料理はつねに塩味、甘き厚焼き卵は記憶にとおく

雷鳴に右往左往したるのちシャッター通りに軒下かりる

(井上洋 往還)

長靴の子はみづたまり突き進み虹にゆがみを与へてをりぬ

逢はざりし杉恒夫とささやかに関はり合へる歳月まぶし

(宇田川寛之 遠景近景)

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短歌人10月号、秋のプロムナードから、後半部分。

心ひかれたのは宇田川寛之さん、高田薫さん、守谷茂泰さん。高田さんの黒い鞄の歌は謎があって出色だと思う。

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