気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

きのうの朝日歌壇

2012-12-17 00:27:21 | 朝日歌壇
オナモミを頬に額にくっつけて山羊は枯野に残る葉を食う
(常滑市 中野幸治)

赤き実を少し食べすぎたる鳥も群れに混じりて空を飛ぶらむ
(八王子市 瀧上裕幸)

五十年貸出記録なき本に廃棄の印を黙々と押す
(岡山市 石原和美)

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一首目。実は山羊を見ることなどほとんどない。二十年ほど前に子供たちと動物園で見た気もするが、忘れてしまった。作者の暮らしには、山羊が近くにいるから、オナモミをくっつけたこともわかるのだろう。秋から冬に向かう寂しさの中に、ユーモアや生命力を感じる。
二首目。鳥の生態を想像している歌。たしかに食べすぎの鳥もいそうだ。赤は人間にも食欲をそそる色。赤い実から、イクラのにぎり寿司を想像してしまった。
三首目。五十年も借りる人のない本はどんな本だろうと考えると興味がわく。ある意味、本としての命を全うしたので、これでいいようにも思う。図書館には、こういう仕事もあるのだと思った。