気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

しをりひも 寺島弘子

2012-12-30 01:15:49 | つれづれ
しじみ蝶紫蘇の花の辺ちろちろと子のまま逝きしたれかれ浮かぶ

丁重に弔電披露のまだつづく会葬者こそ弔意はあつし

総毛立つさまに青葉をふるはせて明日は伐らるる桜の一樹

深鍋に春のキャベツをかさね入れ雪に耐へたる滋味ひきいだす

豆電球ともれるごとくはじめての幼の靴が畳に置かる

電柱のタールの匂ふ夕ぐれを肩ゆらすくせの父帰り来る

形見分け争ふこともせぬままに父の兵児帯水色褪せる

缶振りてとり出すドロップ萌黄色ハルモニウムはいかなる音色

生まれたる順列まもりて雲流る四人の姉妹またちりぢりに

兄知らぬ霞草デンファレ投ずれば波たゆたひて離れゆかざり

(寺島弘子 しをりひも 六花書林)

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短歌人同人の寺島弘子の第一歌集『しをりひも』を読む。短歌人入会の前は、日本歌人に所属されていて、歌暦は優に五十年を越える。その間の作品をまとめて五百首に構成しなおしてある。保育所で長く働いておられて、その歌も心に沁みる。寺島さんの人生が詰まっている歌集。表現は、シンプルで難しい言葉など使っていないのに、深く、重みを感じる。