気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人12月号 同人のうた その3

2012-12-22 22:58:04 | 短歌人同人のうた
知恩院の山門にいて風渡るおにやんまゆるり飛び去りにけり
(松圭子)

試着する古着の胸のポケットに異国の文字の葉書がありき
(八木博信)

立ち並ぶ家のはざまの公園の隅に残れる首洗ひ井戸
(秋田興一郎)

ごみの日に捨てられずまた戻される広辞苑を五年は開かず
(川島眸)

卓上に影を落してしんしんと葡萄と我は夜を呼吸す
(守谷茂泰)

一会(いちゑ)とふ夢の中なる銀幕に生前の父がわが名を呼べり
(大森益雄)

十六冊歌集を出しし人がゐて十六回手術をなしし人がゐる
(中地俊夫)

おそらくはこれが最後の一花(いつくわ)なれ月の雫のごとく 夕顔
(蒔田さくら子)

さは言えど異国力士のひたむきさ手刀切って受ける懸賞
(諏訪部仁)

舌炎の舌のおもてを刺激してながれゆくなりたばこのけむり
(小池光)

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短歌人12月号、同人1欄より。


短歌人12月号 同人のうた その2

2012-12-22 01:29:08 | 短歌人同人のうた
まだ旅の途中のわれはこの夏のむくげの白に洗はれてたつ
(三井ゆき)

ふくらみて滴と落ちくる点滴の朝の光はいのちのひかり
(松永博之)

とりかへしつかぬ速さで緑からオレンヂ色になりゆくゴーヤ
(杉山春代)

ガーベラのいちりん咲ける文机に父の使いし虫めがね輝(て)る
(木曽陽子)

天津のポプラの葉裏しらしらと太極拳の師のさよならの声
(岡田経子)

ふるさとはとほきにありて思ふことさへなき日日や 花いちもんめ
(菊池孝彦)

負けて勝つそんな人生もう厭きた尖閣諸島は日本の領土
(卯城えみこ)

うっすらと錆をうかべて剃刀は放置されたり父の剃刀
(村田馨)

少年の顔をはなれて濃紺のセルの眼鏡が夜の卓にあり
(春畑茜)

窓を開け名月みながら横たはる私がずんずん初期化されてゆく
(檜垣宏子)

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短歌人12月号、同人1欄より。