気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2011-09-26 17:30:31 | 朝日歌壇
いつくるも香深(かふか)の町のさびしかりフェリーが発てばうみねこの鳴く
(静岡市 篠原三郎)

シュレッダーに餌やることも我が仕事「今日のは堅いからよく嚙んで食え」
(大牟田市 桑野智章)

添え文のなしを良しとす義弟の送りくれたる百年の孤独
(新居浜市 紺屋四郎)

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一首目。香深(かふか)という地名を出したのが手柄。カフカを思わせ、また漢字を見ると「香りが深い」とまことに魅力的だ。この固有名詞を引き立てるように、歌の他の部分は、それらしいものがあればよいと思った。
二首目。シュレッダーは書類を裁断するのが仕事だが、餌をやるという言い方が面白い。
小池光の歌に「機械山羊に紙食はしむるたのしみや機械山羊とはシュレッダーなり」というのがある(『草の庭』)。この歌は下句でシュレッダーに語りかけているのが良い。
三首目。百年の孤独は、高級焼酎の銘柄。同名の小説から取った名前だが「百年の孤独」という言葉が、とても魅力的なので、これを入れると何でも歌になりそう。
義弟はおとうとと読むのだろう。男の人には筆無精な人が多いが、ぶっきらぼうさも好ましい。