気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2011-09-11 20:34:29 | 朝日歌壇
猪が昨夜荒らしたる実り田を嘆く声する通夜の座敷に
(三重県 喜多功)

ヒマワリはかなしき花となりにけり汚染の土地にあまた咲きいて
(福島市 美原凍子)

前足を揃えて猫は猫ポーズ柘榴樹の下涼みていたり
(四街道市 佐相倫子)

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一首目。結句の「通夜の座敷に」で一気にリアリティが出た。通夜の席では、故人を偲ぶ会話はもちろんされるが、そればかりでは辛く、なんとなく「場が保たない」雰囲気がある。よって、その場に合った不謹慎でない話題が、繰り返し話されることになる。この場合、昨夜、田を荒らした猪が格好の話題となったのだ。
二首目。放射能で汚染された土地にヒマワリを植え、ヒマワリに放射能を吸収させて、土壌を回復させる実験がすすめられているらしい。単純に愛でられるだけでない「捨て身の役目」を負わされた花と言える。「かなしき」は「悲しき」「哀しき」「愛しき」のどれも含んでいるという意味で、ひらがなになっているのだろう。「なりにけり」の詠嘆が心に沁みる。
三首目。猫のポーズというのも、いろいろあって、前足を揃えるのは一番おすましのポーズではないだろうか。ヨガにも猫のポーズなるものがある。柘榴の樹の下に澄ましているのが、いかにも涼しげに見えたのだろう。

二首目と三首目は、新かなの歌なので、あまた咲きいて、涼みていたり、となっているが、これが旧かななら、あまた咲きゐて、涼みてゐたり、となるところ。
私は旧かな派なので、やはり「ゐ」に魅力を感じてしまう。
一首目は、この歌だけでは、新かなか旧かなか、判断できない。