気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人9月号 同人のうた

2011-09-01 00:40:07 | 短歌人同人のうた
おとなしく目をみひらきて餓死せりけり青き紗をもてその目を隠す
(酒井佑子)

樹の咲ける花のふちよりふうはりと蛍流れて寂しき夏ぞ
(大谷雅彦)

床の上(へ)の桐箱の紐ほどけるをああくちなはに見ゆるまで病む
(青輝翼)

東北の人はがまん強いと書かれるを東北のひとはげしく嫌へり
(山寺修象)

バラ園に驟雨来たりて遠く近く花より明るき傘のひらきつ
(木曽陽子)

未完なる世界であればいくらでも挿入できる物語がある
(高野裕子)

故郷に似たる町角ハングルの看板あふれ立葵咲く
(林悠子)

ふるさとはフクシマと書かれ人住めぬ土地としてチェルノブイリと並ぶ
(紺野裕子)

人間の手に汚されてゆく地球孫がも一人欲しいと言へぬ
(山下柚里子)

眠りおる母の時間はゆききする昭和の父に逢いにゆくらし
(水谷澄子)

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短歌人9月号。同人1欄から。