気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2011-09-05 19:26:25 | 朝日歌壇
見つけても放射線出す一枚の家族写真を持ち出せぬ友
(福島市 澤正宏)

八月に生まれる子の名に「葉」をつけよう日傘くるりと回して思う
(和泉市 星田美紀)

大原の里は穏しく秋澄みて茄子の支柱に蜻蛉がならぶ
(上越市 宮沢君代)

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一首目。放射能を浴びたものは、家族写真さえ持ち出せないのか。この事実に驚く。写真を写真に撮って持ち出すしかないんだろう。気になったのは、結句の「友」。実際に友達がそういう目に遭ったとしても、自分として詠ってもいいんじゃないだろうか。その方が歌が強くなる。わたしなら、結句を「持ち出せぬまま」と自分のこととして作ってしまうが・・・。
二首目。八月は葉月なので、子供の名前に葉を入れるという。発想に目新しさはないが、四句目で「日傘くるりと」と動きが出たのが、軽やかで良いと思った。
三首目。作者は、上越市の人だから、旅行で大原に来られたのだろう。絵はがき的ではあるが、爽やかな初秋のうたとして感じがいい。