気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2010-08-23 18:37:47 | 朝日歌壇
友の畑赤や緑の夏野菜抱きし胸に陽は集まれり
(東久留米市 網頭翠)

夏夕べ牧からさきにかへりたる牛がおくれし牛を呼ぶ声
(川越市 小野長辰)

網とカゴ手に子どもらはマンションの十二階から下界におりる
(和泉市 星田美紀)

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一首目。夏野菜の鮮やかな色彩が目に浮かぶような歌。そこにまた夏の陽は集まる。しかし、今年は猛暑のため野菜の収穫にも悪影響が出ているというニュースも見る。この歌のような元気な野菜が収穫されれば、本当にうれしいことだが・・・。
二首目。わたしは、都会育ちでこういう風景には縁がないのだが、牛にも人間のような連帯感や友情があるのだろう。そう思うと、先ごろの口蹄疫による殺処分が、ますます惨いことに思えてくる。
三首目。たしかにマンションの高層階は下界とは別世界のように思える。「網とカゴ」「十二階」の具体が、結句「下界におりる」を強調している。

さくらあかり  加藤隆枝  つづき  

2010-08-23 00:44:58 | つれづれ
かなしみの縁より淵へおりてゆく冬のさなかのうさぎの忌日

はるるるる……語尾ふるわせてくる春の寒のもどりに身をふるわせる

どこまでもさくらあかりの細道を異界の人にひかれて歩む

風の日にひとり遊びをする男(お)の子「ながれごっご」と言いて吹かるる

何びとも寝入るまぎわにほほえむと聞きたる話こころを満たす

しまり雪ふみゆくときにクックックッとブーツはもらすしのび笑いを

正装の二羽のつばめがやってきて小屋の間借りを申しでる朝

<まばたき>を<目のつぶやき>といいたる子 仔牛のようなうるむ目をもつ

歳時記のならぶ書棚に春の巻一冊分のすきまがありぬ

(加藤隆枝 さくらあかり 砂子屋書房)

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加藤隆枝さんが短歌を志すきっかけとなった永井陽子さんの命日は、一月二十六日。永井さんは卯年卯月うまれなので「うさぎの忌」とよんでひそかに偲んできたと、あとがきにある。「こころねのわろきうさぎは母うさぎの戒名などを考へてをり」(てまり唄 永井陽子)という歌を思い出した。
四首目。加藤さんは、小学校の先生をしておられるらしく、生徒たちを温かく見た歌も楽しい。「ながれごっこ」の一連を読んで、わたしも子どもに戻って、この遊びをしてみたくなった。
七首目。正装のつばめもメルヘンを感じさせて面白い。
秋田県の冬は雪が多くて、厳しいのだろうな・・・。春の歌が多いのも、そのせいかも知れない。