気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

ペロポネソス駅  松原あけみ  つづき

2010-08-10 20:00:12 | つれづれ
筆談がやうやく通ひし老婦人と天井たかきペロポネソス駅にゐる

物乞ひの母は手のひら差し出せりしづかに真似るとの幼き子

ジョゼのゐぬ庭にあまたのあんず咲くはなびら白く吹かれてゆきぬ

見も知らぬ一人の不都合ねがひをり 時雨れる窓に空席待ちする

さくさくと上手く仕分けてくれるなり経理ソフトの<小番頭>呼び

待つひとの帰らぬ真夜中ココアいろの小さき扉ゆ小さき鳩出づ

炎天の斎場まへに人あふれ列を解かれぬ ずれる黒色(こくしよく)

葉桜の梢に首を伸ばしつつマサイキリンの喰ふ春の空

細長いキッチンは舟、ゆふぐれを少なき家族はときをりゆき交ふ

(松原あけみ ペロポネソス駅 本阿弥書店)

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七月末から、結社の全国集会やその他もろもろのことで忙しく、歌集の紹介がおくれてしまった。

四首目。上句でドキっとさせられるが、航空券のキャンセル待ちの歌だろう。「時雨れる窓」で歌になったと思う。
五首目。経理ソフトの<小番頭>、ほんとに従順によく働く小番頭さんがいるようだ。
六首目。鳩時計なのだろう。「小さき」のくりかえしが愉快。
十首目。「キッチンは舟」・・・たしかにそんな感じがする。