気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2009-11-23 22:13:48 | 朝日歌壇
晩秋の朝の茶房の湯の音を最初の客として聞いてゐる
(京都市 才野 洋)

後向きに店内に立つケンタッキーおじさんを見た開店前に
(東京都 夏川 直)

さっきまで紙を次々繰り出した箱が途端に洞窟となる
(郡山市 畠山理恵子)

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一首目。晩秋の朝のしんとした静けさが伝わってくるような歌。俗ながら「朝起きは三文の得」という言葉を思い出す。場面の切り取り方が巧い。結句の「聞いてゐる」の「ゐ」を見るにつけ「旧かなはいい」と再確認する。
二首目。面白い場面を見つけた歌。説明などするのは野暮というものだ。ケンタッキーおじさんも後向きで休みたいときもある。まして、生きている私たちならなおさら、と読みが広がる。
三首目。一読、ティッシュの箱の歌だとわかるが、ティッシュという言葉は使われていない。一番言いたい言葉を抜いて歌を作れと言われるが、そのお手本のような歌。