気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2009-11-02 20:50:12 | 朝日歌壇
ふつうの人ふつうのことっていうときの普通があなたもよくわからない
(掛川市 村松 建彦)

罪事(つみごと)に連座せしごとその家の者は濃厚接触者と呼ばる
(可児市 前川 泰信)

永遠に閉ざされしもの美しき寄りてまた散る秋の万華鏡
(ドイツ 西田リーバウ望東子)

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一首目。まさにそのとおり。結婚式などとなると、式場の担当者(今はウェディングプランナーという)に「ふつうはこうなさいます」などと言われると逆らえない。「一生に一度のことなので」とサイフの紐も緩む。普段、切り詰めて暮らしてるのに!
ほとんどひらがなで一か所だけ「普通」を漢字にして印象を際立たせている。
ただ、なぜ「あなたもよくわからない」なのか、もやもやする。「わたしはよくわからない」ではいけないのだろうか。それではあまりに散文的なのかもしれない。言外に「わたしもよくわからない」と言っているからこれでいいのだろう。
二首目。新型インフルエンザの歌。家族が罹ると、濃厚接触者と呼ばれるらしい。濃厚接触者という言葉を初めて聞いた。家族と病気を分け合うほど、濃厚に接触してみたいものだ。
三首目。海外のお土産に万華鏡をもらって持っているが、これがとても美しい。ガラスの薄い円筒の中に花びらが閉じられている。永遠に万華鏡のガラスに閉じられて鑑賞されるためだけの美しいもの。四句目の「寄りてまた散る」が小さな空間のなかの小さな自由を言っているようで、象徴的だ。