気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2008-12-22 12:28:52 | 朝日歌壇
一枚の絵から見えない手が伸びて引き込まれたある花の下ゆく
(吹田市 豊 英二)

4Bの芯やわらかく手先より気持ちほぐれて無防備な午後
(広島市 大堂洋子)

諦めてどこかに捨ててきた尻尾トカゲはうしろをふり向かずゆく
(館林市 阿部芳夫)

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一首目。絵を見て引き込まれたことを「手が伸びて」という表現をして、歌が強くなった。結句でその絵が花の咲いている風景を描いたものだと、明かされるのも面白い。
二首目。無防備な午後をいうために、4Bの芯という具体を持ってきたのが手柄。読者を十分納得させる。
三首目。トカゲのことを詠いながら、実は作者自身の後悔や諦めを詠っている。作者は本当は後悔していて、ふり向かないトカゲを羨んでいるように読める。私はこんな悩みがあって後悔してます、と言わずにトカゲに仮託するのが、短歌らしい。トカゲのカタカナ表記も軽くてよい。

今週も、ホームレスの公田耕一さんの歌が載り、彼への返歌らしき作品も載った。朝日歌壇という場で、たくさんの人がつながっているのがわかる。
短歌の場は、ほかにもいくつもあって、目指すところが違うのか、好みの問題か、それぞれ微妙に評価が違っている気がする。私の目指すのは、どこだろうかと思いつつ、朝日歌壇も読む。ほかの場も読む。

拾ひたる唐楓の葉いちまいを手帖に挟む沙をぬぐひて
(近藤かすみ)