気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

コントラバス 細溝洋子

2008-12-05 19:22:50 | つれづれ
シーソーは上下してまた上下してある日船出をするにやあらん

速達を出してそこだけ早くなる時間の帯を思うしばらく

このままで曲がっていたい栞紐、本の半ばにへばりつきおり

地下鉄のドアより人は溢れ出る生まれて初めて見る顔ばかり

窓から窓へ紙飛行機を飛ばすように少し無理して伝えたいこと

鯉のぼり片付けられて家家に眩しき風の記憶眠れる

(細溝洋子 コントラバス 本阿弥書店)

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心の花所属の細溝洋子さんの第一歌集『コントラバス』を読む。
細溝さんは、2006年に歌壇賞と心の花賞を受賞されている。
物の見方の新鮮さが的確な言葉で表現されて、読者を納得させる力のある歌がたくさんある。ここに挙げたどの歌も、くどくどと説明の必要もなくすんなり読めて、意味がわかりやすい。作者が、独自の視点を持って、対象をよく見ていることに感心する。見習わねばならないと思う。
私が今年読んだ歌集の、ベストスリーに入れたい歌集。ぜひ一読をおすすめする。