気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

眠つてよいか  竹山広  つづき

2008-12-18 23:42:04 | つれづれ
死ぬときは死ぬとかならず言つてよと泣きゆきし妻しづかになりぬ

歩む日を疑はず妻が上げくれしズボンの裾のこの三センチ

くちなはがくねくねと泳ぎくるやうにひねりあげたる一首を仕舞ふ

出で合ひて一生連れ添ふ芸のなさ手の先触るる近さに寝ねて

被爆時刻のサイレンを聞く最後かと鳴り終るまで耳に納めつ

おそろしきことと思へや二十首の依頼を受諾する欲のあり

歌三首さらりとできて気分よし朝(あした)しつかり飯食ひたれば

(竹山広 眠つてよいか ながらみ書房)

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八十八歳の夫に添うて看病をする奥様も、きっと八十歳を越えておられるのだろう。ダイヤモンド婚を迎えるということだから、結婚して六十年。お互いに感謝の気持ちがあるから、続くのだ。ズボンの裾あげの歌、病人に希望を持ってもらうことがいかに大事かよくわかる。私はこういうことを出来るだろうか。自信がない。
当然のことながら、歌を詠むことに支えられて、一日一日を大事に過ごしておられるのがわかる。歌に生かされることの尊さを感じる。