気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

眠つてよいか  竹山広

2008-12-17 00:16:19 | つれづれ
一年に一、二度むすぶネクタイを結びをり渡世円満のため

朝刊の第一面に息つぎの口おしひらく金メダリスト

びつしりと空の羊ら寄り合へりよき死を死にしたましひのごと

崩れたる石塀の下五指ひらきゐし少年よ しやうがないことか

一瞬にして一都市は滅びんと知りておこなひき しやうがないことか

死んだあとのことなど知るか西遠くばら色の秀をかざしゆく雲

あな欲しと思ふすべてを置きて去るとき近づけり眠つてよいか

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大正九年生まれ、今年八十八歳の竹山広の最新の第九歌集。あとがきによると、前歌集『空の空』を出してまもなく、脳に出血があり、さらに二ヵ月後、再出血という事態を招き、行動の自由を奪われたとある。ダイヤモンド婚を迎える奥さまの献身的な看病で、歌作を続けておられるが、ここで七首目に引用した結句「眠つてよいか」に今の思いは集約されているのだろう。どれもすんなり読める歌で、作者の思いが伝わってくる。
短歌人の同人で亡くなられた武田英男さんも竹山広のファンだったなとふと思い出した。