気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

藤原龍一郎集 日々の泡・泡の日々

2008-02-07 01:46:35 | つれづれ
通勤という苦役幾年重ね来て妖怪ツトメニンに化けるか

日々の泡を抽象的に語りたる活字を追いて芯を病みしか

マンションのロビーに蝉の亡骸が転がっているそんな日常

総務部の管理職ゆえ管理する会議室、倉庫、その他の鍵を

ケイタイの液晶画面にいつの日かTHE ENDの文字浮かんで消える

罰としてコピー用紙で指を切り冬のオフィスの無期囚徒なる

(藤原龍一郎 日々の泡・泡の日々 邑書林)

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邑書林セレクション歌人シリーズの番外、藤原龍一郎集を読む。第九歌集。
都会的で華やかなイメージの藤原さんではあるが、日々の労働の歌に勤め人の悲哀を感じる。
目を引くような固有名詞が頻出する歌以外にも、しんみりした歌もあると思った。
歌集の後半には、アンソロジー 藤原龍一郎の目という章があって、これも面白く読める。
こういうオマケをつけるところが、藤原さんのサービス精神旺盛なところだろう。

わが夫と生年月日の近きゆゑ他人事ならぬ辰年の彼
(近藤かすみ)