気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2008-02-18 19:19:16 | 朝日歌壇
何となく口数少なになりし夫今宵は鮟鱇鍋がよからむ
(東村山市 岡本和子)

北側は雪を被(かず)きてからからと水子地蔵の抱く風車
(四万十市 島村宣暢)

母が負い引き揚げをせしゼロ歳の兄が米寿の母を祝いぬ
(東京都 影山博)

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一首目。長年連れそった夫婦の阿吽の呼吸を感じさせる歌。妻の夫に対する愛情が、歌の余情として感じられる。鮟鱇鍋の具体が良い。
二首目。うら寂しい風景なのだが、巧く出来ている歌だと思う。北側に説得力がある。風車を水子地蔵が「抱く」としたのが、産まれなかった子を抱いていることを想像させて良かった。木枯し紋次郎のドラマに出てきそうな風景だ。
三首目。この一首の中に、母子の引き揚げの経験や年齢など、たくさんの情報がうまく収まっているのに感心させられた。

今朝の文化欄には、「朝日歌壇 番外地でニヤリ」という記事があり、選からは漏れたものの選者の話題に上った歌が紹介されていた。言いたいことをズバリと言って自分が悦に入ってしまっては、やはり歌としては選ばれないらしい。
「緒の切れた堪忍袋携えて今週も行く熟年離婚講座」なんて歌が新聞に載って家族が見たら、あわてるだろう。短歌だからフィクションだと思い至るまで、時間がかかる。説明してもわかってもらえないだろう。作者名はあえて伏せました。

なにゆゑか鶏肉食べぬ宿六の寝グセ頭はとさかの形
(近藤かすみ)