気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2008-02-25 22:44:25 | 朝日歌壇
ひとりごとぽそりこぼして昏るる日のぽそりが部屋のすみっこにいる
(夕張市 美原凍子)

水仙のようにやさしくうつむきて窓辺の椅子で本を読む祖母
(東京都 岩崎佑太)

御し難き鬼も棲みいるわが胸を鋭く照らす玄冬の月
(春日市 村松初子)

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一首目。作者の美原凍子さんはこの欄の常連。夕暮れにぽそりとこぼしたひとりごとが、しばらくしても部屋のすみっこに居る。見えるはずもないのに、余りに部屋が静かでひとりぼっちだから、そんな気がしたのだろう。「ぽそり」が効いている。
二首目。若い作者のような気がする。綺麗な歌で、祖母を見る目がやさしい。水仙は上品で少し俯いているように見える。三句目は「うつむいて」でもいいように思う。
三首目。自分のなかの負の感情を強く意識すると、冬の月にまで責められている気がしたのだろう。自制心の強い人の歌。

こころまだ熱ければ出づる嫉妬心をんな偏なりわが裡に棲む
(近藤かすみ)