気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2008-02-11 17:36:02 | 朝日歌壇
マンションの最上階で見る雪は落ちゆくものの表情をせり
(奈良市 森秀人)

いっぱいに詰め込まれたるスケジュール余暇を栞(しおり)の如くに挿む
(横須賀市 中川栄治)

ファックスが送信されて来るように此の世に咲いてゆく花水木
(津市 伊藤焯)

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一首目。雪が降るのを、地上で見るのとマンションの最上階で見るのとでは、雰囲気が変わってくる。高い位置にいる作者の目を経たあと、雪はまだ旅をして地上にたどり着くのだ。「落」を「堕」としても面白いかもしれない。
二首目。下句の「余暇を栞の如くに」が洒落ていると思った。「如く」という書き方は近頃あまり見ない気がする。ひらがなで書くことが多い。年配の方なのだろうか。
三首目。ファックスが最先端であったころと、花水木がよく植えられ始めた時期が重なっているような気がする。10年くらい前だろうか。ほんのちょっとレトロ感がある。
話は逸れるが以前ドラマ「愛していると言ってくれ」で、聴覚に障害のある主人公(豊川悦司・トヨエツ)とその恋人(常盤貴子)は、ファックスで連絡をとっていた。その後、恋人同士の連絡の手段はEメールになり、今は携帯メールなのだろうか。