気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2008-01-28 19:48:07 | 朝日歌壇
着ながしの会津八一の憩いいし佐久間古書店ついに店を閉ず
(新潟市 山田昭義)

帰省して語尾にうつりし方言のなくなる前に日常は来る
(高槻市 有田里絵)

母の字で播き時書きし花の種まかれざるまま十三回忌過ぐ
(福山市 武暁)

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一首目。新潟は会津八一のゆかりの地。去年の夏、新潟市を訪れたとき、会津八一のことについて講演を聴いた。当時にしては体格の大きい人だったらしい。佐久間古書店という具体名が生きている。
二首目。お正月に帰省して一時方言に戻っても、また日常に戻ると方言を忘れてしまう。故郷の方言に浸る間もなく、帰省の終わるさみしさ。
私の場合、帰省する子を迎えはするが、自分自身帰省するところはない。それもまたさみしいものだ。
三首目。十三回忌にお母様の家から、古い種が出て来た。子供たちはそれぞれいそがしく、その種を播いて花を咲かせる余裕がないのだろう。
母の字(筆跡)と残された種に出会った作者の切なさが伝わってきた。

あの世へは持つてゆけない本棚の蔵書はこの世の道しるべなり
(近藤かすみ)