気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

歌集 モーパッサンの口髭 木曽陽子

2008-01-29 23:38:47 | つれづれ
淋しさを逃さぬように聴いている霙降る夜のチャイコフスキー

遥かなる眼差のまま倒されし巨像レーニンその後を知らず

ほの甘き果肉は旅情をくすぐれり巴里の朝に食む世紀末の梨

草原(くさはら)に一脚の椅子棄ててあればつくづく椅子というものを見き

サイモンとガーファンクルが聞こえきて水のようなる街の夕暮

教科書に見しモーパッサンの口髭が性のめざめと言わば言うべく

(木曽陽子 モーパッサンの口髭 砂子屋書房)

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新年歌会でお会いした木曽陽子さんの第一歌集を読む。
この『モーパッサンの口髭』は、第四回筑紫歌壇賞を受賞している。
旅行詠や美術館の歌、海外文学など、カタカナの固有名詞の入った歌が多い。おしゃれで上品な印象を受ける。ときおりお父さま、お母さまの歌があるが淡い歌。
一首目。淋しさというとマイナスのイメージだが、それさえも逃さないようにする感性の奥深さを感じる。
四首目の椅子の歌。棄てて在るからこそ人の目を引く椅子。
六首目。木曽さんは、永遠の文学少女なのだろうが、性のめざめも詠うところは、やはり大人。
教科書、モーパッサンという言葉があるので、いやらしさがない。