気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

獨孤意尚吟  清水房雄 

2008-01-16 20:01:04 | つれづれ
人類の運命などは思ふ無し朝の散歩のただのろのろと

老心をゆさぶりたてて詠まむとす今日注文の新作二十首

老いて得る心安らぎなど有る筈なし苛立ち傷つき来る日も来る日も

九十まで生きよと言ひ来し子の一人あと三年と気づかぬらしく

ださいたまには仮名書きがよく似合ふしてやつたりな彼のお歴々

すべて具象は抽象をめざすといふ一句ばさりと巻を伏せて立ちたり

在るものを在るがまま言ふ倦怠に耐へざるものは去りゆきたり

すぐ前に近づける死を歌はむか歌はむか人笑はば笑へ

(清水房雄 獨孤意尚吟 不識書院)

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清水房雄の第十一歌集を読む。アララギを経て、青南編集委員。
この歌集のとき、八十代後半だが、大正4年生れでいまや九十二歳か。歌集もあと二冊出ている。わかりやすくて気持ちにすんなり落ち着くのが良い。アララギの気概を感じる。