気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

花柄 魚村晋太郎 つづき

2008-01-19 01:02:25 | つれづれ
うつむいて時雨のなかに火をつくるひとてのひらで火をまもりつつ

これ以上くづしたら誤字になりさうな具合に偏と旁 抱きあふ

届かない手紙のやうにカムチャッカより来て橋にまふ百合鷗

殺されて眼のうつくしいさかなたち錦小路を烏丸はぬける

もうあれは終つたんだと夢のやうな花柄のシャツ着て俺が言ふ

消えるのが正しいのかも知れなくてデッキに銀の受話器をたたむ

コピー機にひかりはうごく約束をしたつてきつとまもれないけど

死ぬひとと死なないひとがゐるやうな気がする鴨脚樹(いちやう)並木ゆくとき

自転車でゆけない場所とゆける場所へだててあさの虹は出てゐる

(魚村晋太郎 花柄 砂子屋書房)

****************************

歌集の題『花柄』は、5首目の夢のやうなシャツから取られたのだろう。以前金魚?の柄のアロハを着ておられるのを見たことがある。どこかの歌会でご一緒したときの詠草で記憶のある歌に出会うと、ふと嬉しくなる。終わりの二首は歌のつくりが似ているが、後半にひとひねりあって、なかなかこういう風にはうまく出来ないものだ。上句と下句の微妙な距離の巧みさ。道具立てのセンスが良い。