気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

歩く 河野裕子歌集

2008-01-11 01:13:57 | つれづれ
さびしさよこの世のほかの世を知らず夜の駅舎に雪を見てをり

枯れ切れぬこの梅の木の半身が今年も咲かすしらうめの花

小さき鍵は大きな秘密を守るため帽子箱のやうなものに隠す

ひき出しの中はぼんやり梅月夜 うちの子がまだ子供だつた頃の

滾る湯に菠薐草を放ちたりわつと噴きくるヨモツヒラサカ

(河野裕子 歩く 青磁社)

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河野裕子の歌集を再読した。この時期、大病をされ心細くなっておられたのがわかる。この歌集の歌が読まれた時期の裕子さんといまの私は同年代。子供はおとなになって離れてゆき、身体に弱い部分もあらわれてくる。ご近所でときどき姿を見かけることもあり、偉い歌人さんなのに身近な存在に感じられた。