シリーズ終了から20年が経ち、今も世界で人気のあるスーパーヒーロー〝バードマン〟。そのバードマン役でスターとなったリーガンも今や失意のどん底、再起をかけたブロードウェイの舞台で脚色・演出・主演で昔の名声を取り戻そうとするが、共演する俳優との対立、薬物依存から回復したばかりの娘をアシスタントとし、プレ公演に挑むのだがそのあまりの重圧に自分の中のバードマンがリーガンに話しかける。リーガンはもう一度バードマンのようなスターになれるのだろうか。
アカデミー賞の作品賞など4部門を受賞した今作、バードマン=リーガン役のマイケル・キートンが自分自身の姿を映画にしたとも言える作品で、鬼気迫る演技は評価は高かったものの、「博士と彼女のセオリー」でスティーヴン・ホーキング博士役を演じたエディ・レッドメインが受賞することになった。
このバードマンの面白いのはこの一本の映画を長回しと言って、カットせずに延々と撮影を続けていくところである。これまで私が見た中では「スネークアイズ」が20分ほどの長回しがあったり、ヒッチコックの「ロープ」は全編カットなし…に見せる手法で、「バードマン」も「ロープ」と同様の手法で撮影されているが、デジタル化によってそれがそうとは思わせないところが素晴らしい。
マイケル・キートンはバットマンで共演したジャック・ニコルソンにマイケル・キートンのバットマン採用は「興味深いキャスティングだ」と語ったとか。実際、後のバットマン役の俳優はどちらかというとマッチョな男たちで、マイケル・キートンは若干大人し目に見えたものだ。
しかしバットマンを演じた事でマイケル・キートンの人生も大きく変わって大スターと地位も名声も得たのだろうが、それ以降の作品で代表作というものはあまり思い浮かばない。何もマイケル・キートンに限った事でもないし、一本でも大ヒット作品に出られたというのはとても幸せな事だけれど、逆にそれが重荷になってその後の人生を変えてしまうという事も有り得そうな話だ。
これだけ話題になる映画になってしまうとまた今後の作品を期待させてしまうけれど、60歳を過ぎたマイケル・キートンができる役柄はこれでもっと幅広いものになり、きっとこれからも面白い作品を見せてくれると期待して良いだろう。