四畳半の部屋で独り、
フレッシュな炒り立てのキリマンジャロとモカとサントスを5:3:2でミルに入れ手挽く。
その配分が美味いかどうかは解らないが、なぜかそうしていた。
部屋中に満ちていく珈琲の香りが、足りない何もかもは隅に押しやる。
あまったミックスナッツは、夜のウィスキーの友とする。
やがてピーピーと薬缶の蒸気機関車がご到着する。
ドリップは、・・・どうしたっけ、想い出せない。
ただ、豊かではないがスローで落ち着いた時間をすごした記憶が蘇る。
そういえば、あんな繭にこもったような時間を過ごすことを忘れて幾月日。
おんぼろアパートも気にならず、食いもんがなくても、金がなくても、人の目も、寒さ暑さも無頓着に過ごせたのはいつまでだったろうか。
霞んではいるが、確かに生命というものを自覚していたようなときがあった。
もういちどやってみたら、私は納得するだろうか、それとも途方にくれるだろうか。
今はそんな甘ちゃんを言ってられるような立場ではないことは重々承知の助ではあるが。
でも、私にも還暦が来ることがあれば、是非にやってやろうと思う。
忘れたらいけないのでここに書いておこうと思いました。