九州ブルトレの中で、最も長距離を走行した特急「富士」。東京発西鹿児島行きである。同じ西鹿児島でも、「はやぶさ」は鹿児島本線経由、「富士」は日豊本線経由だから、僅差で「富士」の方が走行距離が長かったのだ。
夕方の東京駅ブルトレのホームに佇んでいると、あちこちから九州弁が飛び交っていて、当時は異様に感じたものだ。24系客車の「西鹿児島行」の表示を見て、まだ未知の土地へと想いを馳せたもの。いつかは完乗してみたいと思いながら、とうとう果たせなかった。目の前のデッキに乗りさえすれば、そのまま遠い異国へと繋がっていく、何ともロマンティックに感じていたが、現代では、そんな気持ちにさせてくれる列車はいなくなった。
EF65PF時代の「富士」を掲載しておく。特急「富士」は、この後のEF66けん引時の「山型」マークがメジャーに感じるが、65P時代から引き継ぐ丸型富士も魅力的だった。
1984-03-18 8ㇾ EF651091 特急「富士」 東海道本線:湯河原付近