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アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

カーチュン・ウォンの「復活」

2025-03-08 05:00:00 | 音楽/芸術
 先週に続いてカーチュンの演奏会に行ってきた。
 このカーチュン・ウォンという若手指揮者に興味を持ったのは、昨年のブルックナーの第9交響曲の演奏会からだったが、マーラー国際指揮者コンクールに優勝した実績のあるカーチュンだから、やはりマーラー演奏を実演で聴きたくなるのは当たり前の話だ。唯一発売されているマーラーの第5交響曲は、直ぐに手に入れ聴き込んできたが、11月に兵庫で第6を演奏するというので、関西まで行ってきたのは、すでにここで報告済である。そして今回は、マーラーの中でも最も聴きたい楽曲である第2交響曲だ。「復活」とタイトルが付いているが、90分近く演奏時間を有し、巨大なオーケストラに歌手や混声合唱団が加わる大仕掛けであり、聴きどころ満載な楽曲なのである。
 学生時代からマーラーは聴き込んできているが、特に第2,第3、第8あたりは、実演奏に限ると思えるほど内容が濃いい。確かに録音で譜面を見ながら何十回と聴き込んでも、生演奏から感じる音楽の情報量は比べ物にはならないのだ。そんなマーラーの交響曲だが、今回の演奏は、満を持して挑んでいるかのようなカーチュンの指揮ぶりに最後まで圧倒されてしまった。
 今まで鑑賞したメインのプログラムはほぼ暗譜で指揮していたカーチュン・ウォンであるが、今回のマーラーにおいても当然のことながら譜面台はおいていなかった。彼の大振り明解な指揮ぶりは、この日もいつもより増してオケを引き付けていたが、全体的にはアコーギクが大きく、それも要所で決まるので聴いていて気分が良い。音の幅、バランスも見事なもので、1階4列の座席でも明確に響きが聴き取れ、やはりこの指揮者かなりの耳を持っていると思わせたのだ。「復活」を語るに当たっては外せない、第5楽章の合唱が加わって以降の部分だが、クライマックスに向かう過程での流れの美しさ、そしてオルガンが加わった頂点での音楽的バランスと響きの世界。この部分で、合唱と管弦楽、オルガンの響きがここまで一体化した演奏は、聴いたことがなかったかもしれない。オルガン奏者の両脇にTpとHrnのバンダを置いて吹かせていたが、音圧は感じるものの、決して煩くならないのであった。この日の演奏は、何とNHKの地上波で後日放送予定があるとのこと。TVだから細かなポイントまで感じ取れないだろうが、興味があれば一度ご視聴頂きたい。
 マーラーの第2番「復活」は、なかなか実演ではやらない大曲であり、アントンKの過去を振り返っても、実演での鑑賞となると限られてしまうが、今回のカーチュン・ウォンの演奏は、滅多に聴けない感動的な演奏だったと言えるのではないか、と思っている。しかし昔鑑賞した時とは違い、聴き終わってから心地よい疲労感も覚えたことに、時の流れを痛感したのである。

 日本フィルハーモニー交響楽団 第768回 東京定期演奏会
 マーラー 交響曲第2番 ハ短調 「復活」
 指揮    カーチュン・ウォン
 Sp    吉田 珠代
 Msp    清水 華澄 
 合唱   東京音楽大学
 コンマス 田野倉 雅秋
 

2025年3月7日  東京 サントリーホール


カーチュン・ウォン名曲コンサート

2025-03-04 14:00:00 | 音楽/芸術
 ここのところアントンKが注目している指揮者カーチュン・ウォンの演奏会に行ってきた。
 組曲「展覧会の絵」をメインとしたプログラムだったが、若い頃から聴き続けた名曲たちを久しぶりに生演奏で鑑賞して、新たな発見がまた出来たことに少々驚いている。それは、新時代の指揮者であるカーチュンの解釈が今までにないものであり、少なくともアントンKには実演奏や録音を含めて初体験となったからなのだ。
 この組曲「展覧会の絵」は、アントンKが中学生の時、生演奏に初めて触れて以降、オーケストラ演奏の素晴らしさに開眼したと言ってもいい楽曲で、あの時代から、可能な限り鑑賞した楽曲だった。来日オケでも何度か鑑賞した機会を持て、そのスケール感に圧倒された想いでも数多い。原曲がピアノ曲であり、恐る恐る原曲を鑑賞してその地味さに絶句した思い出も懐かしい。オケに編曲したラヴェルこそ、天才だ!と当時は興奮して聴きまくっていた訳である。そんな思い入れの多い「展覧会の絵」だが、カーチュンの演奏も心に残るものとなった。日本フィルとの演奏も、今回のプログラムを持って九州地方を周り、演奏回数でいえば通常とは異なり多いはずだが、指揮者とオケとの駆け引きも抜群にマッチしており、余裕すら感じてしまうほどだったのだ。特に打楽器の絶妙なるタイミングやバランスは、鑑賞していて嬉しくなってしまうほど。的を得た演奏とはこういう演奏なのだと納得してしまったのである。印象に今でも残っているポイントは、やはり終結部「キエフの大門」の箇所での弦楽器の刻みの強調だ。ここでは、楽曲が大きな門を見上げるごとく、徐々に音楽が膨れ上がるが、上昇していく音階にアクセントを付け、くっきりと高みに向かう解釈は素晴らしいし、鑑賞していて熱くなるポイントだった。まるで、チェリビダッケのシベリウスや、ブルックナーの第4の終結部で聴かれる弦楽器の刻みを想起させたのだった。
 前半に演奏されたチャイコフスキーのVn協奏曲は、やはり好きな楽曲だが、ソリスト小林の実に丁寧な音色に感服し、楽曲にのめり込むことが幸せだった。技術はもちろんだが、ソリストの楽曲への想いが響きから伝わってくるような演奏だった。
 アントンKにとって、普段聴きたい楽曲が大きく重い楽曲に偏りがちとなり、今回のようなクラシック音楽でも人気曲の演奏会には出向くことが少なくなってしまっていた。カーチュンとはどんな指揮者なのか知るために、可能な限りプログラムに関係なくしばらく聴いてみようと思いチケットを取っているが、直感にも似た最初の出会いは、まんざら外れてはいないのかもしれない。

日本フィルハーモニー交響楽団 第409回名曲コンサート

伊福部 昭   管弦楽のための「日本組曲」
チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 OP35
ムソルグスキー(ラヴェル編曲)組曲「展覧会の絵」
(アンコール)
バッハ    無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番~ラルゴ
R.コルサコフ 熊蜂の飛行

指揮       カーチュン・ウォン
Vn       小林 美樹
コンマス  田野倉 雅秋

2025年3月1日 サントリーホール



 

佐渡 裕のマーラー演奏

2025-01-27 14:10:00 | 音楽/芸術
 先日テツ仲間からお誘いを頂き、マーラーの演奏会に行ってきた。
 鉄道撮影の仲間内だから、いつもは線路端でカメラを持ちながら撮影を楽しむ間柄なのだが、アントンKと同じように音楽鑑賞にも日頃親しみをもち、趣味として楽しんでいるお仲間からのお誘いは、何にも増して嬉しいものだ。鉄道撮影のお誘いより心弾むような気がしている。お互い同じような趣味の中でも、別次元の話ができ、新たな発見にも気づかせられることも多く楽しい時間なのである。
 今回のオーケストラは長年集中して鑑賞してきた新日本フィルだが、ここのところ、ちょっとご無沙汰が続いてしまっていた。コロナ禍の大変な時期を越し、昨年から音楽監督に佐渡裕氏を迎えた同オケだが、アントンKにとって、佐渡氏の作り出す音楽が経験上あまり好まなかったこともあり、少しだけ足が遠のいていた。アントンKにとっては、尊敬すべき演奏家であるコンマスの崔 文洙氏が君臨するオケゆえ、常に気になっていたことは確かで、当日も久しぶりに彼のソロパートの響きに感銘を受け、相変わらずの舞台姿に勇気をもらったのである。
 この日は、マーラー第9交響曲1曲というプログラムで、指揮者佐渡氏にとっても、プレトークによると思い入れのある楽曲らしく、どんな演奏になるのか楽しみだった。この演奏、今まで感じてきたようなエネルギッシュな煽りや力づくの要求は影を潜め、ハーモニーを感じて音楽を作り上げ、決してフォルテがうるさくならない内容で、ハッとするほどそれまでとは変化していたように思う。全体的にたっぷりとした情感ある響きがホールを包み込み、とても満足した演奏会だった。木簡パートは相変わらず素晴らしく、特にClなどは冴えわたっていた印象だが、アントンKにとっては、何と言ってもアダージョ楽章の深く高貴な響きに心打たれたのである。このアダージョを聴きに来たと言っても過言ではないくらい、今思い返しても素晴らしい内容だった。出の弦合奏の音色がホールに響き渡ったところから、アントンKはすぅーと音楽に引き込まれてしまった感覚で集中でき、コンマス崔氏率いるVn郡の切ない音色に自然と涙があふれてしまった。この楽章は、息を引き取るように静かに、細く長く消えていくが、その最後の数小節の最弱音は、ピンと張りつめたホールの隅々まで染み渡り、この日の感動を決定づけたのである。

新日本フィルハーモニー交響楽団1月定期演奏会
マーラー 交響曲第9番 ニ長調
指揮    佐渡 裕
コンマス  崔 文洙
      立上 舞

2025年1月25日 すみだトリフォニーホール

渾身の「レニングラード」~井上 道義

2024-11-20 21:00:00 | 音楽/芸術
 ミッチーことマエストロ井上道義は、今年で現役引退を宣言しているが、いよいよ押し迫ってきた今週、新日本フィルとの最後の公演を鑑賞してきた。ベートヴェン、ブルックナーを始めとしたドイツものを中心に長年鑑賞してきたが、最後は井上氏の十八番とも言うべきショスタコーヴィッチ、それも最も過激に感じる第7交響曲となった。
 演奏そのものの感想は、やはり想像していた通り凄いものがあり、全身全霊で楽曲に向かう姿勢に感動すらしたが、何より指揮者、オーケストラの意思疎通が完璧と言えるほど一つになっていて、集中力が目に見えるようで、聴衆にもそれがビンビン伝わってきた。楽曲の出だしからオケの鳴りが良く、すぐに引き込まれたが、全体を通して精神的な気高さは一貫していたように思う。約80分の長い楽曲も、あっという間に感じるくらい心を持っていかれていたアントンKだったが、最後の音が消えて、終演した時の井上氏とコンマス崔氏との安堵の表情が良かった。長い年月をともにして、ここにやり終えたというような安堵の表情が忘れられない。この演奏会は、普段とは違う空気が流れていたように思えるのである。
 マエストロ井上道義氏、昔と何ら変わらずお元気で、お茶目な身振りも相変わらずで楽しい。これぞエンターテイナーそのものなのだが、おそらく来年からも何か自分の中でお考えがあるのだろう。きっと我々ファンを喜ばせる何かを持って再び現れるのではないか。期待して待つことにしたい。
 
第659回 新日本フィルハーモニー交響楽団定期演奏会
ショスタコーヴィチ 交響曲第7番 ハ長調 OP60  「レニングラード」
 
指揮   井上 道義
コンマス 崔 文洙・伝田 正秀

2024年11月18日 東京サントリーホール



兵庫でマーラーを聴く新たな人生~カーチュン「悲劇的」

2024-11-14 13:00:00 | 音楽/芸術
 アントンKが今注目している指揮者カーチュン・ウォンがマーラーを振るというので、勢いに任せて兵庫まで足を運んできた。管弦楽は、兵庫芸術文化センター管弦楽団といって、この文化センターのホール開設に合わせて出来たオーケストラで、アントンKも過去東京遠征公演に出向き鑑賞した覚えがある。
 さて、今回は定期演奏会ではマーラー第6交響曲一曲のみが演奏され、3日間連続しての演奏スケジュールだった。(2024-11-8~9~10)アントンKは、スケジュールの都合から最終日を選び鑑賞したが、結論から言ってしまえば、新進気鋭の若手中心のオケではあるものの、やはりこの大曲を3日間続けることの厳しさは聞き手に伝わってきてしまった。90分にわたるドラマは、全体的には指揮者の意図が明確にオケに届いていたと思われるが、時に緊張がほぐれる場面、力づくになってしまう場面に遭遇したのである。特に第4楽章でのパフォーマンスは、この楽曲の鑑賞においては避けて通れない訳だが、fffが汚く音楽的でないため耳にうるさく感じてしまった。もちろんハンマーを打ち鳴らすポイントでは、舞台奥にひな壇を作り、豪快に鳴らしていたが、それに負けじと金管楽器郡がこれでもかと轟音を掻き立てていたのである。座席による差があるかもしれないが(2F正面)、結構響きはデットで残響が短く感じ、オケの鳴りは必要以上に思えたのである。
 指揮者カーチュン・ウォンにとって、今回の第6交響曲は初めてとのこと、譜面こそ置いていたが堂々と自信に満ちた表現は、聴衆を圧倒し楽曲の確信に触れていたように思うが、今回の演奏で云々いうことはせず、前日や初日の演奏の方がさらに理想的だったに違いないと思いたい。昨年の第5に続けて3回目の兵庫芸術文化センター管の定期演奏会だったらしいが、日フィルとの音作りがあまりにも良かったため、少し落胆を隠せないでいる。今後はさらに新たな演奏を聴かせてくれると信じて新幹線に乗った。
 思えば、マーラーを聴きに関西まで行くなんて今までになかったことで、時代は移りつつあることを実感した次第。関西と言えば、ブルックナーというくらい、アントンKには根付いてしまっているが、生誕200年の年に新たな気持ちになるのも何かの縁を感じている。
  第155回 兵庫芸術文化センター管弦楽団定期演奏会
 マーラー  交響曲第6番 イ短調 「悲劇的」
 指揮 カーチュン・ウォン
 
2024-11-10     兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール