アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

インバル=都響のブルックナー

2014-07-30 21:00:00 | 音楽/芸術

現在「フェスタサマーミューザKAWASAKI 2014」としてミューザ川崎にてイベントを開催しているが、プログラムを見てみると、インバルが都響を振ってブルックナーを演奏するので、聴きに行くことにした。

インバル=都響といえば、今年の3月に聴いたマーラーの「1000人」が忘れられない。20年以上前に初めて聴いたインバルのマーラーの印象を塗り替え、圧倒的なまでに衝撃をこのアントンKに与えた演奏は、おそらく生涯語り継いでいく演奏会だと思っている。そんな想いも冷めやらぬこの時期、今度はブルックナーの第7だ。やはりインバルは90年代に、フランクフルト放送響を振ってブルックナーの交響曲全集を制作したが、この時は、当時はまだ聴いたこともなかった第8番の初稿のCDで世間を驚かせた。今でこそハース版、ノヴァーク版はもちろん、多岐にわたる譜面も出そろっているし録音もあるから、何も感じなくなったが、たった20数年前は、まだ音として聴いたことがなかった訳だ。インバルは、第8に続き第3でも初稿で録音し、その時の印象も今も思い出深い。

そんなインバルだが、もちろん過去にも都響や、来日時のフランクフルト放送響との組み合わせでブルックナーは聴いている。第1番や第2番といった初期の交響曲は、昔から実演が珍しいからかかさず出向いて聴いていたが、キリッとしまった演奏表現は、当時から楽曲とマッチして好感をもっていた。

さて数年にわたる都響とのマーラーチクルスを終え、ひとしきりついたインバルは、どんなブルックナーを聴かせてくれるのかワクワクして会場に向かった。このミューザ川崎のシンフォニーホール、座席配置には違和感があるものの、新しいホールとあって響きは素晴らしいものがある。残響3~4秒という理想的なものだと思うが、当日のブルックナーも煩雑にある全休符箇所での響きが素晴らしく、これを聴いただけでも来た甲斐があったというもの。最近絶好調の都響ならではの演奏で安心して鑑賞できた。しかし肝心のインバルの解釈には、多少なりとも違和感をもってしまった。少なくとも以前の演奏より、より細部にこだわった緻密な演奏になっていて、それはそれでよいのだが、どちらかというと楽曲が小さくなってしまった感がある。演奏タイムのことではない。起伏が大きく即興性に富んでいたためなのか、スケール感が小粒に感じてしまった。アダージョでもホルンの強奏、スケルツォ主部でのトランペットの強奏など新しい発見もそれなりにあり面白かったが、今やブルックナーの第7でこの程度の内容では、ビクともしない身体になってしまった、ということなのか・・・

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ワーグナー ジークフリート牧歌

ブルックナー 交響曲第7番 ホ長調(ノヴァーク版)

エリアフ・インバル指揮

東京都交響楽団

2014年7月30日 ミューザ川崎シンフォニーホール


上岡敏之のブルックナー演奏

2014-07-23 19:00:00 | 音楽/芸術

ここ最近聴くことがなかった上岡敏之のCDを入手した。曲目は、ブルックナーの第4交響曲。あまり予告もなく突然発売になった感がある。

指揮者上岡敏之といえば、もう7年前になってしまうが、ヴッパタール交響楽団と来日した時の演奏会を思い出す。みなとみらいホールで聴いたブルックナーの第7のことで、まずその個性的な演奏にぶっ飛んでしまった。曲の出から、極端にテンポが遅く、しかも弦の伴奏も聴こえないくらいピアニッシモであった。展開部に入っても、速度はあまり動かないので、これでは永遠に終わらないのではないかとまで思えたくらい。実際、この時の演奏は、トータル90分を越えていたのではないかと思う。

こんな演奏会で度肝を抜かれてしまったアントンKであったが、それ以降、上岡は、読響、新日本フィルその他のオケで指揮しているようだったので、一度足を運ぼうと思って数年経ってしまった。そんな矢先での新譜である。まだ数回しか聴いていないので、隅々までわかっていないことが多いが、基本は、前作第7番(CD録音)のアプローチとあまり変わらない印象を持った。どちらかというと、よく考えられて指揮しているというよりも、その場の雰囲気で、即興でやってしまう印象をもつ。具体的にはしないが、第1楽章では、かつて聴いたことのないくらい音楽が止まり、心配させられる箇所もあったが、展開部でのオルガン的な重奏は、鳥肌がたつ。この辺のバランス感覚は流石で、全楽章においてその雰囲気作りの妙が感じられる内容だった。こういった内容だから、一部のパートが際立つような解釈はなく、従ってここは決めて欲しいポイントでも決まらず、ここだけはちょっと不満が残る。思っていた通りの個性的な内容であるため、初心者にはあまり勧められないが、聴きこんだ方々ならブックリストに加えられても良いのではないか。上岡氏の今後の活躍に期待したいと思う。

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ブルックナー 交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」~ハース版

上岡敏之 指揮

ヴッパータール交響楽団

EXTON  OVCL-00546


千葉局のブルトレ「市川・佐倉120周年記念」号

2014-07-20 19:00:00 | 鉄道写真(DL)

関東地方はどうも天気が安定しない。ここのところ綺麗に晴れた日はほとんど無く、カメラを持ち出す気に中々なれない。まだ梅雨明けの予報もないのだから仕方がないが、スカッとした晴れ間が恋しくなってきた今日この頃・・

さて、今日は総武線の佐倉まで、24系の団臨が走ったので、朝の1本だけ狙いに行ってきた。昨日夜行ではるばる青森からやってきた24系は、武蔵野~常磐~新金~総武線経由で佐倉まで入線する。DE10とEF641001とのプッシュプル運行と聞いて、出動を見送ろうと思っていたが、やはり当日になって気になり出し、手軽に撮影できるところで1枚撮ろうということになった。急ぐことなく、ゆっくりと現地に向かい、撮影ポイントを探ったが、流石にこの時間では、どこも鉄チャンで満員御礼状態になっており、あまり近づく気になれず。しかしそれでも、少し離れたポイントから狙うことに落ち着いた。通過時間が迫る頃、ますます鉄チャンや地元の見物人が増えてきてしまい、対応に苦慮したが、そんな中ゆっくりと凸型のDE10が現れた。

普通に撮影したのでは、どこかの入替え中?と言われかねないので、どう撮るか悩んでいたが、HMが装着され、最後部のEF64もかろうじて見えているので、これで良しとしておこう。しかしスノープロウの無いDE10はどこか間抜けで締りがない。写真もいくらDLとはいえ「引っ張り過ぎ」ですな・・

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2014(H26)-07-20     9315レ  DE101751  24系6B+EF641001 JR東日本/総武本線:物井-佐倉


千両役者!大植英次

2014-07-19 20:00:00 | 音楽/芸術

久しぶりに大植英次の演奏会に出向いた。

大阪フィルの常任を離れ、現在は日本に世界に大活躍の大植氏だが、今回は、東京フィルの定期に客演している。シューマンの第2と、ブラームスの第2というどちらかというと地味な選曲だが、彼がいったいどう表現しているのかいつもながらワクワクして会場に足を運んだ。4月に大阪のシンフォニーホールで演奏された大フィルとの「アルペン」には行けず、涙を飲んだから、なおさらその思いは強かった。

前半は、シューマンの第2交響曲。これは指揮者大植氏の修行時代、師であるレナード・バーンスタインの得意レパートリーである同曲をPMFオーケストラで採り上げた際、大植氏自身も一緒になって演奏していた思い出深い楽曲のはず。師であるバーンスタインの演奏とは、当日はかなり違っていたが、それでも大植氏の大胆な表現は、楽章が進むにつれて明白になり、聴衆を圧倒していた。特に第2楽章のコーダのスピードは、限界に挑戦といった感じで、オケをあおり、この部分は聴衆も息を飲んでいただろう。

後半は、ブラームスの第2交響曲。今思い返せば明らかにこちらに重きを置かれた演奏内容だったと思う。アントンKが気がつかず、聴き逃しているだけかもしれないが、このブラ2での指揮者大植の表現は、かつて聴き覚えのない内容で、これがブラームスか、と思い返すほど。特に木管楽器のCLなどの演奏表現力は、舌を巻いてしまう。もちろんこれは、指揮者の指示であることは明白だが、それに応えたプレーヤーの技量も大したものだ。オケも、曲が進むに連れて益々好調になり、そしてフィナーレを迎える。全体的にいえることだが、早めのテンポ設定で通し、縦の線が揃わない箇所も多いが、明るく、勢いがあり、指揮台の大植氏は、まさに「大植、ここにあり!」といった感じで、特徴的な指揮表現でオケを引っ張る。昔、朝比奈隆が、「指揮者は、歌舞伎で言えば千両役者のようなもの」と言っていたが、まさに、目の前の大植氏を見てそのことを思い出してしまった。身振り手振りはもちろん、顔の表情などは、まさに歌舞伎の世界を思わせる。彼にとって、舞台袖から聴衆の前に立った瞬間から、役者に徹しているのだろう。いわゆるナルシストとも言えるかもしれないが、大植氏を見ていると、全てが決まっていてカッコ良い。東京フィルの技術力も大したもので、各声部とも良く鳴っていて気持ちがよい。第4楽章のコーダでは、Tbの下降音形の後の(405小節目以降)ティンパニの八分音符が、これほど聴こえた演奏をアントンKは知らない。全休符前の2拍にアクセントを付けて全体をキリっとさせて(もちろん指揮者大植の指示だが)おり、その後に続く金管楽器群の絶叫は、まるで大蛇のごとく絡みついてきた。ここの部分は、完全にインテンポを保ち、最後まで突進したが、中々の迫力と豊満な音色に圧倒されてしまった。決して好みの演奏内容ではなかったが、大植氏の体臭のする表現力に「ブラボー」と叫んでいた。

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第850回 サントリー定期シリーズ

シューマン 交響曲第2番 ハ長調 OP61

ブラームス 交響曲第2番 ニ長調 OP73

大植英次指揮

東京フィルハーモニー管弦楽団

 


指揮者 ロリン・マゼールの旅立ち

2014-07-16 19:00:00 | 音楽/芸術

13日、アメリカの自宅で指揮者ロリン・マゼールが死去した。(享年84歳)

5月にボストン交響楽団を引き連れて来日の予定だったが、急遽中止され何か体調が優れないのかと懸念していた矢先の訃報だ。昨年は、ミュンヘン・フィルと来日を果たし、とてつもないブルックナーを披露して、とても80過ぎとは思えない指揮振りでアントンKも圧倒されまくったのだが、もうあのエネルギッシュな演奏に触れられないと思うと残念でならない。VPOと来日時のNHKホールで聴いたマーラーの第5、芸劇で聴いたバイエルン放送響とのブル8、そして昨年のMPOとのブル3、と今思い出しても、全てが想像を超え心に焼き付いた演奏会となっている。

今年はいつにも増して、音楽界の訃報が多くなってしまった・・・今晩は追悼の意味を込めて、彼の指揮でブルックナーのアダージョを鳴らしたいと思っている。