新聞の片隅に載ったニュースから(80)
スイス企業の高額報酬にNO 「株主が制限」導入(2013.3.4 毎日新聞夕刊)
【ローマ福島良典】スイスで3日、企業経営陣の高額報酬を制限するか否かを問う国民投票が実施され、7割近い賛成で、制限導入が承認された。
憲法が改正され、上場企業の株主が経営陣の報酬に制限を課したり、法外な退職金の支払いを阻止したりできるようになる。報酬制限に違反した企業幹部に罰金や禁固刑が科される可能性がある。これによりスイスは、株主が企業トップらの報酬について強い発言権を持つ国の一つになるという。
スイス政府によると、投票者の67.9%が報酬制限の導入に賛成した。
ビジネス界はスイスの国際競争力が損なわれるとして制限導入に反対してきたが、企業役員らが高額報酬を受取っている現状への国民の怒りが噴出した形だ。
□□――――――――――――――――――――――――――――――――――――――□□
外国で起きたことのニュースですが、日本にも大いに関係のあるニュースですので、お伝えします。
一昨年秋、ニューヨークで始まったWe are the 99%の「ウオール街を占拠せよ」の運動は、日本でも広がり、六本木や日比谷でOccupy Tokyoのデモが行われました。
その時、企業経営者の高額報酬や賃金は上がらず、非正規労働者の割合が増加しているのに、株主配当は高い水準を維持していることが問題になりましたが、今でも大企業の経営者が長者番付の上位に並び、企業の内部留保の多さが問題なる一方、働く者の年間収入が下がり続けていることがデフレ脱却の足枷になっているという議論が起きています。他国で起きたことでは済まない、わが国の現状とも一致する問題として考える必要があると思います。
なお、NHKのニュースもこのスイスの国民投票のことを伝えていましたが、それによりますと、スイスでは国民投票の直前に製薬会社が前の会長に対して、同業他社への転職を防ぐことを目的に、6年間で7299万スイスフラン(日本円にして凡そ71億円)を支払う計画が明らかになり、企業幹部への行着過ぎた報酬に対する批判が高まっていたということです。スイスでは国民投票によって憲法を変更し、国民の要求を実現する仕組みになっているのですね。
改憲論者は「外国では何回も憲法を改正している。制定以来一度も改正を行っていないのは日本だけだ」と憲法改正の“必然性”を主張していますが、外国で行われている憲法改正はこのように国民の要求を憲法で確認するというものや、大統領の任期や再選回数を制限するといったものが殆どで、9条改正といったような国のあり方の根本を変えるようなものではありません。今回のスイスの憲法改正はそのことを私たちに教えてくれています。(ドイツで西ドイツ時代に再軍備を認める憲法改正が行われましたが、これは稀有の例です。)
参議院選挙へ向けて、憲法改正当然論が横行すると思いますが、その狙いを見極めることが大切ですね。
大西 五郎
スイス企業の高額報酬にNO 「株主が制限」導入(2013.3.4 毎日新聞夕刊)
【ローマ福島良典】スイスで3日、企業経営陣の高額報酬を制限するか否かを問う国民投票が実施され、7割近い賛成で、制限導入が承認された。
憲法が改正され、上場企業の株主が経営陣の報酬に制限を課したり、法外な退職金の支払いを阻止したりできるようになる。報酬制限に違反した企業幹部に罰金や禁固刑が科される可能性がある。これによりスイスは、株主が企業トップらの報酬について強い発言権を持つ国の一つになるという。
スイス政府によると、投票者の67.9%が報酬制限の導入に賛成した。
ビジネス界はスイスの国際競争力が損なわれるとして制限導入に反対してきたが、企業役員らが高額報酬を受取っている現状への国民の怒りが噴出した形だ。
□□――――――――――――――――――――――――――――――――――――――□□
外国で起きたことのニュースですが、日本にも大いに関係のあるニュースですので、お伝えします。
一昨年秋、ニューヨークで始まったWe are the 99%の「ウオール街を占拠せよ」の運動は、日本でも広がり、六本木や日比谷でOccupy Tokyoのデモが行われました。
その時、企業経営者の高額報酬や賃金は上がらず、非正規労働者の割合が増加しているのに、株主配当は高い水準を維持していることが問題になりましたが、今でも大企業の経営者が長者番付の上位に並び、企業の内部留保の多さが問題なる一方、働く者の年間収入が下がり続けていることがデフレ脱却の足枷になっているという議論が起きています。他国で起きたことでは済まない、わが国の現状とも一致する問題として考える必要があると思います。
なお、NHKのニュースもこのスイスの国民投票のことを伝えていましたが、それによりますと、スイスでは国民投票の直前に製薬会社が前の会長に対して、同業他社への転職を防ぐことを目的に、6年間で7299万スイスフラン(日本円にして凡そ71億円)を支払う計画が明らかになり、企業幹部への行着過ぎた報酬に対する批判が高まっていたということです。スイスでは国民投票によって憲法を変更し、国民の要求を実現する仕組みになっているのですね。
改憲論者は「外国では何回も憲法を改正している。制定以来一度も改正を行っていないのは日本だけだ」と憲法改正の“必然性”を主張していますが、外国で行われている憲法改正はこのように国民の要求を憲法で確認するというものや、大統領の任期や再選回数を制限するといったものが殆どで、9条改正といったような国のあり方の根本を変えるようなものではありません。今回のスイスの憲法改正はそのことを私たちに教えてくれています。(ドイツで西ドイツ時代に再軍備を認める憲法改正が行われましたが、これは稀有の例です。)
参議院選挙へ向けて、憲法改正当然論が横行すると思いますが、その狙いを見極めることが大切ですね。
大西 五郎