OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

リトル・フィートのライブは凄かった

2009-05-21 12:31:21 | Rock

Waiting For Columbus / Little Feat (Warner Brs.)

幸せにも、私には記憶に残るライブコンサートが幾つもありますが、その中でも特に熱くさせられたのは、1978年7月に行われたリトル・フィートの来日公演です。

リトル・フィートは皆様ご存じのとおり、所謂ウエストコーストロックの一派ですが、シングルヒットよりはアルバム単位で人気を獲得したバンドです。

そのデビューは1971年で、当初はリーダーのローウェル・ジョージが都市の情景をファンキーロック化するという、ちょうど我が国の「はっぴいえんど」にも通じるものを表現していたのですが、もちろんリアルタイムでは売れませんでした。

ただし現場主義の巡業ライブでは熱狂的なファンを掴んでいたようですし、業界関係者からも高評価だったと言われています。それはバンドメンバーが皆、鍛え上げられた腕利きだったことから、当時の西海岸ではスタジオセッションで重宝されるという結果に結びつくのですが、現実的にはバンドの運営が経済的に芳しくなく、必然的にアルバイトせざるをえないという……。

で、そんな流れの中で、前述した「はっはいえんど」のラストアルバム「Happ End (ベルウッド)」が昭和48(1973)年に発売され、そこに助っ人で参加していたのがリトル・フィートの面々でした。そして細野晴臣や鈴木茂が、各方面でリトル・フィートの凄さを語り始めてから、我が国でも注目が集まるようになったと記憶しています。

と、同時に、その頃のウエストコースト系ロック&ポップスの人気アルバムには、リトル・フィートのメンバーがセッション参加したクレジットが目立つようなり、そのあたりも人気獲得に大きな要因だったと思います。

そして決定的だったのが、フュージョンブームでしょう。

実はリトル・フィートはロックバンドだったはずが、メンバーチェンジやリーダーのローウェル・ジョージが病欠という変転が重なり、1977年に発表した傑作アルバム「Time Loves A Hero」では、ついにウェザー・リポートも真っ青のジャズロックフュージョンを聞かせてしまうのです。

つまりリトル・フィートは既に述べたようにファンキーロックからスタートし、それがニューオリンズ系R&Bビートを巧みに取り入れたルーツロックバンドへと進化(深化?)した末に、とうとうフュージョンにまで足を踏み入れてしまったのが、1978年頃の実相だったと思います。

そして当然ながら、サイケおやじを熱狂させた当時の来日公演は、それらがゴッタ煮となったライブ演奏の強烈さ! ウネリとヨジレ、そしてズレが混濁するボリリズム的な興奮に加え、タイトでシャープなビートが飛び跳ねる快感は、唯一無二♪♪~♪

陶然とさせられた私がコンサートの帰りに、本日ご紹介のライブ盤を輸入の新譜としてゲットしたのは、当たり前だのクラッカーです。

 A-1 Join The Band
 A-2 Fat Man In The Buthtub
 A-3 All That You Dream
 A-4 Oh, Atlanta
 A-5 Old Folk's Boogie
 B-1 Time Loves A Hero
 B-2 Day Or Night
 B-3 Mercenary Territory
 B-4 Spanish Moon
 C-1 Dixie Chicken
 B-2 Tripe Face Boogie
 B-3 Rocket In My Pocket
 D-1 Willin'
 D-2 Don't Bogart The Joint
 D-3 A Apolitical Blues
 D-4 Sailin' Shoes

上記演目のライブレコーディングは1977年8月にロンドン及びワシントンDCで行われ、メンバーはローウェル・ジョージ(g,per,vo)、ポール・バレール(g,vo,per)、ビル・ペイン(p,key,vo)、ケニー・グラドニー(b,per)、リッチー・ヘイワード(ds,vo)、サム・クレイトン(per,ds) という当時のレギュラー6人組に加え、ホーンセクションとしてタワー・オブ・パワー、さらにミック・テイラー(g) が「A Apolitical Blues」に飛び入りという豪華版♪♪~♪

まず冒頭、楽屋かステージ裏あたりで演じられたようなアカペラコーラスの「Join The Band」、そしてその途中から被さってくる観客の期待のざわめき、こうしてスタートする「Fat Man In The Buthtub」のファンキービートの大波という卓越したアルバム編集が、本当にたまりません♪♪~♪ 私なんか、ここだけが聴きたくて何度、A面に針を落としたことかっ!

実は来日公演では当然ながら、こういうスタートではありませんでしたからねぇ~。尚更にウキウキさせられましたですよ。

で、肝心の演奏は、そういうタフでしなやかなファンキービートが堪能出来ますし、加えてフュージョン味も濃厚です。

「All That You Dream」のヘヴィなスピード感、ニューオリンズ系R&Bピアノが冴える「Oh, Atlanta」のシンプルな楽しさ、ヨジレたビートが快感に繋がる「Old Folk's Boogie」というA面の流れの良さは流石でありながら、実は小手調べにしかすぎません。

リトル・フィートの曲と演奏は、メロディの良さというよりも、複合リズムの面白さを堪能できるバンドアンサンブル、そして妙に依怙地で変態的な歌詞のミスマッチを楽しむのが本来の持ち味だと、私は思います。

その意味ではシングルヒットが出なかったのはムペなるかな、しかしアルバム単位での鑑賞やライブの現場ではバカウケするのも当然でしょう。

ですから、このライブが名盤・人気盤となるわけですが、それにしても、ここでのリトル・フィートは凄すぎますねぇ~♪

既に述べたように、この頃のバンドはフュージョン化も著しく、それが爆発したのがスマートなファンクピートに導かれた「Time Loves A Hero」から始まるB面です。蠢くケニー・グラドニーのエレキベース、ラテンロックのリックさえも自在に使うドラムスや打楽器のコンビネーション、そして抑揚の少ない歌メロを膨らせていく演奏の展開は、スティーリーダンのようでもあり、キーボードの色彩豊かな使い方はウェザーリポートを強く想起させられます。

私が行った来日公演の会場には、おそらくフュージョンファンが半分ほどは座席を占めていた様子で、彼等はきっと、このB面のような演奏を期待していたはずです。

助っ人参加したタワー・オブ・パワーのホーンセクションも、実に効果的に使われていますよ。

そしてアルバムの山場となるのがC面! リトル・フィートの人気曲「Dixie Chicken」からの流れでしょう。これは彼等が一応のブレイクとされる3作目のアルバムタイトル曲で、ニューオリンズ系R&Bピアノのストライド奏法っぽいメロディがキモになっていますから、その楽しさは保証付き! 加えてローウェル・ジョージが畢生のスライドリフと呼応するポール・バレールのカキクケコギターが良い感じ♪♪~♪ さらにビル・ペインのピアノとキーボードが果てしないジャズ地獄へと入っていきますし、タイトなドラムスと柔軟なエレキベースに執拗なパーカッションが唯一無二のファンクピートを作り出しています。もちろんホーンセクションの懐メロジャズ味も、イヤミがありません。

ここでは短めに編集されていますが、来日公演では相当に長い演奏でしたよ。

それが続くアップテンポの「Tripe Face Boogie」からヘヴィファンクな「Rocket In My Pocket」と展開されるライブならでは流れは実に豪快で、見事に全盛期だったバンドの勢いを記録していると思います。

そしてD面では、いよいよ素敵な名曲「Willin'」が、情感たっぷりに歌われ、言うまでもありませんが、ここで「大阪で生まれた女」を我々は歌ってはいけません。要注意!

あぁ、それにしても間奏で聞かれるビル・ペインのピアノが良いですねぇ~♪ ただし歌詞の内容は悪いクスリを運ぶトラック野郎の独り言……。

こうして迎える終盤では、まず長閑なカントリーロック系バラードの「Don't Bogart The Joint」が、これまた素敵な雰囲気を醸し出し、続くミック・テイラーがゲスト参加のハードロックブルース「A Apolitical Blues」が、激ヤバ! この粘っこくてガチガチの演奏こそが、ロック黄金期の証でしょう。2コーラスを弾きまくるミック・テイラーも最高ですよ♪♪~♪

もう会場は興奮のルツボという熱気の中、オーラスの「Sailin' Shoes」は、これまたファンキーなブルース魂が力みいっぱいに披露されますが、この疲れ果てた雰囲気の良さも捨て難く、レイジーな余韻を残してアルバムは終わります。

ということで些か、とっつきにくい演奏かもしれません。しかし、このリズム的興奮度の高い面白さの虜になると、抜け出せません。

ちなみに私は最初、2作目のアルバム「Sailin' Shoes」から聴いたんですが、まさかここまで演奏が濃くなっていくとは、リアルタイムでは想像もつきませんでした。

しかし当時のバンドの内部事情はドロドロの極み……。リーダーのローウェル・ジョージとビル・ペインやリッチー・ヘイワードの確執は深刻だったと言われ、リーダー不在のままに作られた前述の傑作盤「Time Loves A Hero」に収録の曲を演奏する時には、ローウェル・ジョージがステージから引っこんでしまうほどでした。これは日本公演でも、実際にあったことです。

それでも、このライブ盤が素晴らしいのは、当然ながらスタジオの手直しでローウェル・ジョージの存在感が強調されているからでしょう。しなやかで繊細なスライドギター、力んだボーカルも上手くバランスがとれているようです。

ただし、これ以降に出されたバンドの解散声明とローウェル・ジョージの急逝……。

リトル・フィートはローウェル・ジョージが作ったバンドなのに、最後にはリーダーの自分が居場所を失ったという悲劇は、どうしてもストーンズのブライアン・ジョーンズの思い出と重なってしまうのが、サイケおやじの今も変わらぬ気持ちです。

初めて聴いたアルバムの「Sailin' Shoes」は、ブライアン・ジョーンズがストーンズを辞めて作ったかのような錯覚さえ覚える作品だと、私は思います。

その意味で、この実質的な集大成アルバムこそが悲喜こもごも……。

私は死ぬまで、愛聴すると決意しております。

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テッドは繊細な野獣!?

2009-05-20 07:47:14 | Rock

傷だらけの野獣 / Ted Nugent (Epic)

ヘビメタには拒絶反応を示すサイケおやじも、しかしハードロックは大好きです。

本日の主役、テッド・ニュージェントも、その分野の第一人者として1970年代後半には絶大な人気がありましたが、実はトンデモ系ギタリスト! その破天荒というか、プロの技術の物凄さには、聴くほどに驚嘆させられてしまいます。

私がテッド・ニュージェントを強く意識したのは、まず本日掲載の名曲で、それはヘヴィな8ビートにキメのリフが一発という、典型的なアメリカンハードロック♪♪~♪ 1978年春頃のラジオから流れまくっていた、そのキャッチーなノリの良さは、当然ながらサイケおやじ好みでしたから、とりあえずゲットしたのが、このシングル盤というわけです。

しかしテッド・ニュージェントという名前には、リアルタイムで微かな記憶がありました。

それは1960年代後半のハード&サイケロック、今日ではガレージなんて呼ばれている単発ヒット曲を集めた名編集盤「Nuggets (Elektra)」に取り上げられた The Amboy Dukes でした。

このアンボイ・デュークスはテッド・ニュージェントがブレイク前にデトロイトで率いていたバンドで、件のオムニバスにはブルースの古典「Baby Please Don't Go」をエレキで激烈に焼き直した1967年の名演が収められていたのですが、そこで聞かれるフィードバックを最高に上手く使ったギターは圧巻!

そのテッド・ニュージェントが紆余曲折の末、1975年にエピックとソロ契約してからが全盛期というわけですが、この「傷だらけの野獣 / Cat Scratch Fever」で記憶が蘇ったサイケおやじをさらに驚愕させたのが、テッド・ニュージェントが使っているギターでした。

それはギブソンのバードランドという、ホローボディのギターなんですが、これで大出力のハードロックを弾きまくり、さらに物凄いフィードバックを演じるなんて、エレキギターを多少なりとも弾かれる皆様には、百も承知の神業と痛感されるでしょう。

私がそれを知ったのは、このシングル盤のジャケット裏解説に「ギターは全てギブソンのパードランド」と書いてあったことに加え、それまでに発売されていた数枚のアルバムジャケット写真にも、これ見よがしにバードランドとのツーショット(?)が使われているんですねぇ~。

つまり、それがテッド・ニュージェントのウリになっていたのでしょう。

実際、フィードバックを自在に操るためには、ホローボディの基本的な難点というナチュラルなフィードバックをコントロールする技術が必要なわけで、それを逆手にとっての大出力ハードロックを演じるためには、ピックアップと弦の調整に拘るギターの改造、またアンプとギターを弾くステージ立ち位置の関係あたりまで、非常に気を使うことが推測されます。

しかもギターテクニックそのものでは、ピッキングハーモニクスとかブリッジ付近の弦を押して作り出すボリューム奏法、スピード感満点の早弾きや疑似スライド奏法等々、とにかく現場主義で鍛え上げられたプロの技術がテンコ盛り!

そして、これは私の勝手な推理なんですが、ここまで演じてフィードバックを自在に操るには、弾いていない弦を適宜、小まめに両手でミュートしているんじゃないでしょうか?

う~ん、テッド・ニュージェントの風貌は野獣ですが、やっているこは実に繊細だと思います。そして飛び出しくるのは、全てがクライマックスという痛快ハードロック♪♪~♪ これで人気が出なかったら、神も仏もない世界でしょう。

残念ながら私はライブには接することが出来ませんでしたが、もちろんライブ盤も出ていますし、全盛期の映像も残されてます。

ちなみにこのシングル盤はA面がスタジオバージョン、B面がライブバージョンという、損得勘定が微妙な仕様ですが、それだけ「キャット・スクラッチ・フィーバー」が人気曲だったという証でしょうねぇ。

そしてテッド・ニュージェントは、何時の間にかフェードアウトしてしまった感も強いのですが、狂乱のステージを演じているのとは裏腹に、現場での繊細な仕事は異常とも思えるトンデモなさだと思います。

また、この人はドラッグ等々は大嫌いだったそうで、前述したアンポイ・デュークス時代からバンドのメンバーがコロコロと変わっていたのは、その所為だと言われています。

さらに1980年代からは、トレードマークだった「野獣」を捨て去るかのようにワイルドな髭もさっぱりと剃り落とし、近年は保守的なハードロックに邁進しているとか!? 何時かは「生」で聴きたいギタリストです。

実にトンデモ系!

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初夏に聴くヴァン・モリソン

2009-05-19 08:59:03 | Rock

A Sence Of Wonder / Van Morrison (Mercury)

キング・クリムゾンの「エピタフ」は、グレッグ・レイクが畢生の名唱だと思いますが、さりとてグレッグ・レイクが自分のバンドで歌うことには必然性が無いのでは?

と書いたのは、先日の「宮殿」の文章でしたが、それではグレッグ・レイク、あるいはキング・クリムゾン以外で、誰がそれを歌ったら!?

という希望的観測に相応しいのが、ヴァン・モリソンでしょうか。それとアート・ガーファンクルでも聴いてみたいもんです。

そこで本日はヴァン・モリソンが1984年に出してくれた、サイケおやじの愛聴盤♪♪~♪

この人はアイルランド出身の白人ソウル歌手で、そのキャリアは1960年代の英国ビートバンドのブーム時からスタートしていますが、大きな注目を集めたのは1967年頃からアメリカのレコード会社と契約し、所謂ブルーアイドソウル系の、しぶといレコードを出し始めてからでしょう。

特に私にとっては、「Tupelo Honey (Warner Brs.)」という若き日のサイケおやじをシビレさせた名盤以降、新譜が出る度に迷わずそれをゲットさせられてきた偉人となっています。

そしてこのアルバムは、なんと引退騒動の渦中で突如発売されたという、実に印象深い問題作!

 A-1 Tore Down A La Rimbaud
 A-2 Ancient Of Days
 A-3 Evening Meditation
 A-4 The Master's Eyes
 A-5 What Would I Do ?
 B-1 A Sense Of Wonder
 B-2 Boffylow And Spike
 B-3 If You Only Knew
 B-4 Let The Slave
 B-5 A New Kind Of Man

一聴、まず嬉しい驚きだったのは、収録楽曲が押し並べて分かり易い♪♪~♪ このアルバム以前に続いていた宗教的(?)価値観に基づいたような自己満足っぽい雰囲気が薄れていたことです。

それをあえて「問題作」としたのは私だけではなく、ほとんどのファンが逆に戸惑ったというか、実は既に述べたように、ヴァン・モリソンはこの数年前から引退を公言しては撤回するという狼少年、いや、正確には狼中年を繰り返していましたし、前作はなんとサヨナラ公演ともいうべきライブ盤「Live At The Grand Opera House Belfast」まで出していたのですから……。

それゆえに、ここでの妙に明るい悟りのような、ふっきれた雰囲気は嬉しくもあり、逆にせつなくもあったのが、サイケおやじの偽らざる気持ちです。

さらにヴァン・モリソンのアルバムと言えば自作自演曲が普通だったはずが、ここではカバー曲がふたつも演じられています!

まずレイ・チャールズの「What Would I Do ?」が、スローテンポでジワジワと熱気を滲ませていく、ヴァン・モリソンが十八番の名唱♪♪~♪ バックの女性コーラスやリズム隊のハートウォームな伴奏、さらにツボを外さないホーンのアレンジも、こちらの思っているとおりの快感をプレゼントしてくれました。

また、もうひとつの「If You Only Knew」は、ジャズ者にも気になる存在のモーズ・アリソンがオリジナルで、実は私の大好きな名曲「Sunny」の元ネタ的な味わいも強く含んでいますから、いゃ~、本当にたまりませんよっ! ハモンドオルガンの使い方も良い感じ♪♪~♪

そしてオリジナル曲の充実度は言わずもがな、その歌唱と演奏が絶妙の融合度で和みと興奮を両立させてくれます。

特にヴァン・モリソンのハミングと中華メロディのアイルランド的解釈が最高という「Evening Meditation」は、何時、何度聴いても不思議な感動を呼ぶことが必定♪♪~♪ ピアノやベースの醸し出す味わいは、ちょっと「戦場のメリークリスマス」に近いムードがありますね。もちろん私は両方とも大好き♪♪~♪

そして、それに続くソウルフルなイントロから熱く歌われる「The Master's Eyes」が、これまた最高の極み! 歌詞の内容は相当に宗教的ですから、こうなって当たり前かもしれませんが、単なるゴスペルの模倣ではなく、完全にヴァン・モリソンの世界! その味わいがファンをシビレさせるボーカルのディープな魅力が、本当に素晴らしいです。

さらにここから前述したレイ・チャールズのカバー曲「What Would I Do ?」へと続く流れは、キリスト教徒ではない私にとっても、まさに至福としか言えません♪♪~♪

ところがB面に入ると、もちろんそうしたソウルフルな世界は継続されていますが、タイトル曲の「A Sense Of Wonder」では英国トラッドの味わいも潜んだ独自の世界が楽しめます。バックの演奏には当時の事ですから、シンセやデジタル系の楽器も密かに使われていますが、そのヒューマンな味わいは絶品! 当然ながらヴァン・モリソンも魂の歌を聞かせてくれます。

それがギリギリまで行ってしまったのが、続く「Boffylow And Spike」で、なんとアイルランド民謡をロック化したようなインスト曲なんですねぇ。いったいヴァン・モリソンは何を演じているのか??? アルバムの趣旨からすれば全くの意味不明なんですが、深読みすれば、このアルバムのセッションをしっかりと支えてくれたバンドの面々に花を持たせたのかも?

なんて勘ぐっているところに入ってくる前述の「If You Only Knew」が、尚更に痛快という仕掛けが鮮やかです♪♪~♪

そしてオーラスの「A New Kind Of Man」が、実に分かり易い和みを提供してくれます。ラテン風味も入ったAOR系のメロディと演奏、そして肩の力が適度に抜けたヴァン・モリソンのボーカルが心地良いですねぇ~♪ 女性コーラスのミエミエな存在感も憎めません。

ということで、これはサイケおやじの初夏の定番アルバムです。

とにかくヴァン・モリソンの必要以上に力まない姿勢が好きです。もちろん何時もの熱血に入れ込んだボーカルも大好きなんですが、やはり今の時期には、このあたりがジャストミート♪♪~♪

発売当初はAORに走ったとして、一部からは批判もされていたんですが、今となっては関係なく楽しめると思います。

ところでヴァン・モリソンは、「エピタフ」を歌ってくれるでしょうか?

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ビートルズのライブ盤、これっきり!?

2009-05-18 09:33:08 | Beatles

The Beatles At The Hollywood Bowl (Capitol / Parlophone)

いよいよ今秋、ビートルズのリマスター版CDが出ますねっ!

もちろんCDは、これまでも出ていたわけですが、時代の流れから音質等々の改善が求められるのは当然が必然ですから、やっぱりビートルズの曲は分かっていても楽しみが尽きません。

こうした企画は、あの賛否両論が渦巻いたアンソロジープロジェクトやアメリカ盤仕様アルバムのCD復刻、またネイキッド騒動等々、その度に喜怒哀楽が伴いました。

しかしここまで来ても、未だにCD化されていない幻のアルバムが本日ご紹介の、ビートルズにとっては唯一の公式完全ライブ盤です。

ご存じのとおり、ビートルズは1963年の大ブレイク以降、そのライブステージはファンの狂騒と歓声に支配され、当時のロクな設備も整っていなかった音響システムでは、その演奏や歌が客席はもちろん、ステージ上のメンバー達にもほとんど聞こえていなかったのは、歴史上の真実となっています。

ただし、それでもライブ盤を作りたかったレコード会社の要請は厳しく、既に1964年のアメリカ巡業時から、各所で実況録音が試みられましたが、その中で特に有名なのが「ハリウッドボウル」における音源です。

これは、まず1964年8月23日に録音された中から、12曲が翌年に発売予定とされましたが、音質的な問題はもちろんの事、演奏レベル云々の事情もあってオクラ入り……。そして翌1965年8月29&30日、場所も同じハリウッドボウルで再びライブレコーディングが敢行されますが、これもまた……。

ところがその音源が巧みに編集され、1977年5月に1枚物で待望の発売となったのは、既に流出していた音源による海賊盤の存在があった事に加え、ビートルズが下積み時代だった1962年のライブ音源が、「Live! At The Star-Clue」としてドイツのレコード会社から堂々と世に出ることになった所為だと言われています。

そして前述した3ステージ分のマスターテープが、ビートルズと言えば、この人というプロデューサーのジョージ・マーティンに委ねられ、録音エンジニアのジェフ・エメリックとの共同作業の末に完成されたというわけです。

 A-1 Twist And Shout (1965年8月30日録音)
 A-2 She's A Woman (1965年8月30日録音)
 A-3 Dizzy Miss Lizzie (1965年8月30日録音)
 A-4 Ticket To Ride (1965年8月30日録音)
 A-5 Things We Said Today (1964年8月23日録音)
 A-6 Roll Over Beethoven (1964年8月23日録音)
 B-1 Boys (1964年8月23日録音)
 B-2 A Hard Day's Night (1965年8月30日録音)
 B-3 Help ! (1965年8月30日録音)
 B-4 All My Loving (1964年8月23日録音)
 B-5 She Loves You (1964年8月23日録音)
 B-6 Long Tall Sally (1964年8月23日録音)

上記のプログラムのとおり、音源は両年の演奏を混ぜ合わせて使われていますが、それでも当時のステージの流れが上手く再現されています。またビートルズのパフォーマンスも、流石に長年の巡業で鍛え上げられた現場主義というか、その纏まりやノリは、ロックの根源的なビートが荒っぽさの中で存分に活かされた名演といって、過言ではないでしょう。

ジョンの熱いシャウトが観客の熱狂を煽る「Twist And Shout」、スタジオバージョンよりも、さらにロックっぽいアレンジに変えられた「She's A Woman」、そして強烈なドライヴ感が永遠に不滅の「Dizzy Miss Lizzie」と続くド頭3連発には、ビートバンドの本質を鋭く演じていたビートルズの凄さが凝縮されています。

確かにジョージ・ハリスンのギターは、今となっては些かショボイのは否めませんが、リンゴのドラムスの的確な上手さは流石ですし、ジョンのサイドギターとボールのペースが鉄壁のコンビネーションで、これぞロックの熱気が歴史となったのも肯けます。

また、そのジョージにしても、持ちネタの「Roll Over Beethoven」では、後年の悟りの境地とは雲泥の熱血節を披露して素晴らしく、ツッコミ過ぎるギターソロや微妙にリバプール訛りの歌いまわしが憎めませんねぇ~♪

同時にポールのドライヴしまくったベースも強烈な存在感! 今でも驚異という「All My Loving」での歌いながらの4ビートランニングには圧倒されますよ。

そしてバンドとしての纏まりの良さは、本当に特筆すべき点が多く、例えばリンゴの楽しいボーカルを支える「Boys」でのコーラスワーク、随所で聞かれるジョンとポールの胸が熱くなるようなハーモニーのせつなさ、さらにオリジナル楽曲の不滅の良さ♪♪~♪

ただし、こうした音源は、既に述べたように、多くの海賊盤としてコアなファンの間に流通していましたから、それらよりは音質が良くなっていることを除けば、特に新鮮味が無いのも事実でした。以下に一応、リアルタイムのレコーディング演目を記しておきます。

☆1964年8月23日
 01 Twist And Shout
 02 You Can't Do That
 03 All My Loving
 04 She Loves You
 05 Things We Said Today
 06 Roll Over Beethoven
 07 Can't By Me Love
 08 If I Fell
 09 I Want To Hold Your Hand
 10 Boys
 11 A Hard Day's Night
 12 Long Tall Sally

キャピトルで作られたオリジナルマスターミックスでは、ステレオとモノラルの両バージョンが残されているようですが、海賊盤としてアナログ時代に流出していたのは、主にモノラルバージョンでした。これは関係者用のアセテート盤が元ネタらくし、ヒスノイズも確かにあるのですが、海賊盤そのものの盤質の悪さと音場を占有している歓声の凄さゆえに、それほど気になりません。

そして何よりもビートルズ全盛期の勢いが素晴らしく、個人的には大好きな「You Can't Do That」のライブバージョンには感涙♪♪~♪ また「I Want To Hold Your Hand」でのジョンとポールのハモリも、本当にせつないですよ。それとミディアムスローな「If I Fel」では、劣悪なステージ環境でありながらのハーモニーワークの上手さ、そしてバンドアンサンブルの纏まりの良さに驚かされます。

☆1965年8月29&30日
 01 Twist And Shout
 02 She's A Woman
 03 I Feel Fine
 04 Dizzy Miss Lizzie
 05 Ticket To Ride
 06 Everybody's Trying To Be My Baby
 07 Can't By Me Love
 08 Baby's In Black
 09 I Wanna Be Your Man
 10 A Hard Day's Night
 11 Help!
 12 I'm Down

こちらの音源は主にステレオミックスが流出していて、まずは何といっても公式盤では使われていないとされる8月29日の演奏に興味深々! しかし結論から言えば、バンドメンバーがお疲れ気味なのか、ミスの連発……。全体的に、もっさりとした感じがリアルではありますが、加えて音響システムの不備から「She's A Woman」ではポールのボーカルが入っていないという大失態! それは「I Feel Fine」でも同様に続き、それゆえにジョンの魂の歌が楽しめるというのは言い訳にすぎません。なんとか「Ticket To Ride」あたりからは持ち直すのですが、う~ん……、録音の不備は最後まで随所に汚点を残していきます。

ちなみに私のアメリカ人の友達のワイフが十代の頃、この日の公演に行ったそうですが、彼女の話によると演奏も歌も覚えていないほどに興奮したそうで、つまりはビートルズとその場を共有した事のほうが大切な思い出だとか!? 演奏や歌が聞こえなくても、何らの問題も無い!?

あぁ、それも「あり」、なんですよねぇ~、大衆芸能の本質は♪♪~♪

一方、翌日8月30日の音源は、公式盤でもメインで使われたとあって、ビートルズの演奏もビシッと芯が通っています。

気になる新演目では、「Baby's In Black」の和やかなムードが実に素敵♪♪~♪ また「I Feel Fine」でのイントロフェードバックやジョンとジョージによるツインリードのギターアンサンブルが、これまたニューロックの萌芽として貴重ではないでしょうか。

ということで、この3日間の音源は全て、3トラックのオリジナルマスターが存在しており、公式盤の「ハリウッドボウル」も、そこから作られたわけですが、実はその後にも度々、拡張バージョンの発売が噂されてきました。個人的には前述の「アンソロジープロジェクト」の時点で、それが実現するかと期待したのですが……。

そして今回の新規盤でも無かったことにされているのは???

それゆえに、このアナログ盤が尚更に愛おしくなったりもしますが、海賊盤では完全バージョンも楽しめるわけですから、このあたりは皆様それぞれの思い入れの大きさによるところでしょうか。

ビートルズ神話への期待と夢は、やっぱり尽きませんね♪♪~♪

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2年遅れのクリムゾンの宮殿

2009-05-17 09:44:56 | Weblog

In The Court Of Crimson King / King Crimson (Island)


ブログレッシヴ・ロック、通称プログレの金字塔にして大衆音楽のひとつの側面を見事に確立させた人類の遺産!

そう言い切って、決して過言ではない超名盤でしょう、これはっ!

しかし、それは今となっての感想で、我が国での発売状況を鑑みれば、果たして最初から、そうだったのか!?

そんなふうに私は思う時があります。

何故って?

オリジナルの発表はイギリスで、1969年10月とされていますが、我が国では確か1971年! しかも私の記憶によれば、キング・クリムゾンでは通算3作目にあたる「リザード」の次に発売されたのですよっ!

しかも最初は、それほど話題にはならなかったと思います。何しろ当時の一番人気はレッド・ツェッペリンになっていましたし、他にもクリーデンス・クリアウォーター・リバイバル=CCR、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング=CSN&Y、ブラッド・スエット&ティアーズ=BS&T、テン・イヤーズ・アフター=TYA、スリー・ドッグ・ナイト=3DN、グランド・ファンク・レイルロード=GFR等々、やったらに長ったらしいバンド名の人気グループが、歴史に残る名盤を連発していた時期です。

もちろんビートルズのメンバー達やストーンズは別格!

さらにオールマン・ブラザース・バンドやロッド・スチュアート、ディープ・パープルといったハードロック系に加えて、キャロル・キングやジェームス・テイラー、エルトン・ジョンあたりの所謂シンガーソングライターが、さらにブラスロックのシカゴやラテンロックのサンタナあたりが、時期スタアの座を狙っていたのですから、本当に当時のロックは熱かったです。

で、そんな中で発売された、このキング・クリムゾンの名盤は、ジャケットにアルバムタイトルもバンド名も記載されておりませんから、日本盤には特有の「帯」が巻かれ、その邦題がご存じ「クリムゾン・キングの宮殿」ですし、何よりも怖いジャケットのイラスト!

これじゃ、最初っから腰が引けてしまいますよね。

ところが、ここに凄い「ウリ文句」が広まります。

それはビートルズの「アビイロード」をチャートの首位から引きずり下ろした!?!

これは現在では、真っ赤なウソとして扱われていますが、情報が不足していた1971年当時の我が国の青少年ロックファンは、それだけで偉大な金字塔として、このアルバムを聴かなければならないという逼迫感に苛まれたのです。

もちろんサイケおやじも、そのひとりでした。

そして昭和46(1971)年の暮になって、ようやく入手して聴くことが出来たそこには、確かに恐ろしく、しかも耽美な世界が封じ込められていたのです。

キング・クリムゾンは1968年12月頃に正式発足し、紆余曲折の末に翌年のデビュー時にはイアン・マクドナルド(sax,fl,key,vo,vib,etc.)、ロバート・フリップ(g,key)、グレッグ・レイク(el-b,vo)、マイケル・ジャイルズ(ds,per)、そして曲作りやステージの演出を担当する詩人のピート・シンフィールドの5人組として、この名盤アルバムを作っていますが、既にデビュー前から業界関係者の間では評判も高く、それは新しいロックのスタイルとして、所謂プログレの需要が高かった証かもしれません。

ちなみに当時のプログレでは、ピンク・フロイドが、あの「原子心母」を出し、またムーディ・ブルースが名作アルバムを意欲的に連発ヒットさせていた黄金期ですし、他にもイエスとかソフトマシーンのようなロックジャズ系のバンドさえも、プログレ街道へと歩み始めていたのは、言わずもがなでしょう。

A-1 21st Century Schizoid Man / 21世紀の精神異常者
 こんなに驚かされた曲と演奏もありませんっ!
 まずレコードに針を落として聞こえてくるのが、妙に不気味なノイズと雑音ですからねぇ~、一瞬、ステレオが壊れたのか思ったほどです。
 が、次の瞬間、あのヘヴィなリフの大合奏! そして歪みきった叫びのボーカル! グイグイと嵐の中を突き進んで行くが如き前向きな姿勢に、いきなり凄いなぁ~、と思わされましたですね。
 そして猛烈にスピードアップして、強烈なウネリと鉄壁のアンサンブルで演じられる驚愕のキメのリフ! そこからロバート・フリップのギターとイアン・マクドナルドのサックスが激情的なアドリブソロを聞かせつつ、その背後では好き放題に暴れるマイケル・ジャイルズのドラミングが、あらゆるリズムパターンを包括した素晴らしさ! また混濁しながらフリーロックに躍動するグレッグ・レイクのエレキベースも強烈です。
 そしてそれを収束させるのが、4分半あたりから突入して行く、ストップタイムを使いまくった危険極まりないキメのリフのスリルとサスペンスです。
 あぁ、さらに悶絶させられますねぇ~~~♪
 ここは分かってはいるんですが、何度聴いても、誰かがミスってしまうんじゃないかと、ハラハラドキドキさせられるんですよっ! しかし絶対に誰もミスらないという、そのギリギリの緊張感が、最高の極みとしか言えません。
 大団円のラストテーマがヘヴィに盛り上がり、ドス黒い余韻を残して終わるかと思いきや、またまたバンドが未練の雄叫びも、見事に次曲へと繋がっていきます。

A-2 I Talk To The Wind / 風に語りて
 そして一瞬の間合いで始まるのが、この和みのジャズフォークソング♪♪~♪
 イントロのストリングスオーケストラ系の音は、イアン・マクドナルドがフルートとメロトロンという、管弦楽の響きに近い音を作り出せるキーボードで演じたもので、この「音」の響きが全篇を決定づけています。
 もちろん歌メロのゆったりして和やかな魅力は言わずもがな、グレッグ・レイクのヘタウマボーカルが良い感じ♪♪~♪
 そして間奏で聞かれるイアン・マクドナルドのジャズっぽいフルート、またジム・ホールからパット・メセニーに繋がる美しき流れの間に位置するようなロバート・フリップのギターも最高です。
 また、ここでも実に刺激的なドラミングを聞かせるマイケル・ジャイルズは本来、モダンジャズの世界でも活躍していたそうですから、さもありなん! そのタイトにビシバシと印象的なスタイルは、ロイ・ヘインズとジャック・ディジョネットの折衷かもしれませんが、実はマイケル・ジャイルズだけにしか敲けないオリジナルでしょうねぇ~♪
 ちなみに、ここではジャズメンの名前を様々に出してしまいましたが、リアルタイムの高校生の時には、それを知っているはずもないサイケおやじですから、完全な後付けです。しかし、その新鮮な存在感というか、それまでのロックでは聞けなかった刺激的なピートとリズムには、怖いものを見てしまったような……。

A-3 Epitaph
 なんて思っていると、前曲の最終フェードアウト部分に被さって聞こえてくるのが、この感動の名曲の大袈裟なイントロです。マイケル・ジャイルズの劇的なドラミングとイアン・マクドナルドのメロトロン、そしてロバート・フリップのギターが絶妙のお膳立て!
 そしてグレッグ・レイクが畢生の入れこみ歌唱! 失礼ながら、そんなに上手いボーカリストでは無いと思うグレッグ・レイクにして、ここまでの「歌いっぷり」が実に素晴らしいです。
 いや、というよりも、バックの演奏の完璧さとギリギリの状態までテンションが上がっているボーカルの対比、それこそが感動を呼ぶんでしょうかねぇ~~♪
 曲そのものも、意味不明にして荘厳な歌詞、せつないメロディと演奏アンサンブルのドラマチックな展開が、もうこれ以上無いという危険な関係に発展しています。
 そして特筆すべきは、ここまでのA面の流れの素晴らしさでしょう。
 それがあってこそ、この曲と演奏が見事な大団円になっているんですねぇ~。
 これについては、様々なご意見があろうことは、百も承知の暴言だと、自分でも思います。しかし、何度聴いても、このA面の流れには血が騒ぎ、感動させられます。圧倒されます!
 ちなみにグレッグ・レイクは、自分のバンドのライブでは、今でもこの曲を歌っているそうですが、それが出ないと収まらないことは分かっていても、あまり必然性は無いでしょうねぇ……。それほど、ここでの感動は大きいということです。

B-1 Moonchild
 そしてB面にレコードをひっくり返すと、ここでも静謐なフォーク系のメロディと夢幻的な歌詞が、幾分歪んだボーカルで歌われます。
 もちろんそのバックには、シンプルにして刺激的なジャズっぽい伴奏が存在していますから、なんと間奏のパートに入ると、ロバート・フリップ、マイケル・ジャイルズ、そしてイアン・マクドナルドがフリーにして環境音楽系のアドリブを演じてしまうんですねぇ~♪ エレピとヴァイブラフォンをメインに使うイアン・マクドナルドに対し、ジム・ホール系のギターで深淵なフレーズを投げかけるロバート・フリップ、その空間を埋めていくかのようなマイケル・ジャイズのドラムス……。
 正直言うと、これはリアルタイムのサイケおやじには、完全に???の世界でした。
 だって、音の出ていない時間があるというか、その時空の緊張感と歌心の無いアドリブフレーズの応酬、そしてアナログ盤ですから、音の強弱と針音ノイズの関係が、通常の大衆音楽とは反比例するように耳ざわりな……。
 今にして思えば、これはECMレーベルあたりで作られるジャズ作品と共通する味わいなんでしょうが、どうも私には苦手な世界ですし、フリージャズの要素が濃厚なのは言わずもがなでしょう。
 しかし、それを我慢して通り抜けてしまうと、再び安らぎのメロディがジンワリと滲んでくるという仕掛けが、憎たらしいほど! 何、この中華メロディは?
 こうした展開は、後のキング・クリムゾンでは常套手段となるのですが……。

B-2 In The Court Of Crimson King / クリムゾン・キングの宮殿
 こうして突入するアルバムタイトル曲は、例によって劇的なマイケル・ジャイルズのドラムス、大袈裟なイアン・マクドナルドのメロトロン、さらに上手すぎるロバート・フリップのギターに導かれたグレッグ・レイクの情緒不安定なボーカルが荘厳なメロディを歌うという、まさにキング・クリムゾンの黄金律が聞かれます。
 そして中間分の演奏パートではビートルズのマジカルミステリーっぽさ、あるいはピンク・フロイド流儀の作り込み、そしてムーディ・ブルースやプロコルハルム仕込みのクラシック趣味が、適度なジャズ味で煮〆られ、さらに盛り上がっていくのです。
 しかし……。
 告白すれば、今も昔もサイケおやじは、このB面の流れには些か、ついていけないものを感じています。
 イアン・マクドナルドのフルートによる素晴らしいアドリブから、最終パートの歌が始まり、ぐわ~~ん、と盛り上げておいてのワザとらしい疑似ラストシーン、さらにブチ切れたような終わり方にもイヤミを感じてしまうのですが、いかがなもんでしょうか?

ということで、何度聴いても圧倒されるアルバムでありながら、私は、ほとんどA面しか聴きません。CDだったらノー文句でB面ラストまで一気に聴かされてしまうんでしょうけど、それじゃ疲れてしまうと思うんですよ。

その意味でアナログ盤は、上手く出来ていますねぇ~♪

あと、キング・クリムゾンといえば、ロバート・フリップのバンドという雰囲気が、現在は濃厚になっていますが、このデビュー盤では、むしろイアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルズが目立ちまくっています。そしてこの2人が、このアルバム発表直後のアメリカ巡業中に脱退を決意してしまうのですから、後はムべなるかな……。グレッグ・レイクにしても、あのエマーソン・レイク&パーマーの結成へと向かっていくのです。

その意味で、ギリギリのパワーバランスが最良の形となって、ここに記録されたのは、まさに人類にとっては幸せだったと思います。これは決して大袈裟な書き方ではないでしょう。このアルバムから出てくる音、そしてジャケットの雰囲気も含めて、これしか無い!

むろん、後は私がB面を好きになれるかが、今後の個人的な課題というわけですが、あぁ、ようやく4ビートが聴きたくなってきました。

最後になりましたが、ここでのマイケル・ジャイルズのドラミングの驚異的な凄さは、やっぱり最高です。演奏とドラムスが、これほど素晴らしく対峙して融合した例としては、例えば「Now He Sings, Now He Sobs / Chick Corea (Solid State)」でのロイ・ヘインズ、「Four & More / Miles Davis (Columbia)」におけるトニー・ウィリアムスと比較して、全く遜色が無いものと確信しております。そしてマイケル・ジャイルズは、この名演を残して以降、数々のセッションでも敲いておりますが、実はこれほどのドラミングは、二度と聞かせてくれないのでした……。

このアルバムでマイケル・ジャイルズを楽しむ! それがジャズ者の掟かもしれません。

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アン・リチャーズの素敵なポートレート

2009-05-16 09:39:10 | Pops

Ann, Man! / Ann Richards (Atoc)

出張疲れと親戚の不幸で、心身ともにバテ気味です……。

そんな時は自室の壁に飾られた彼女のポートレートに癒されます。

女性ボーカル天国が地獄に変転していたサイケおやじは前非を悔いて、今は足を洗っているのですが、こうして好きなジャケットを眺める趣味だけは未練の名残♪♪~♪

個人的にはアン・リチャーズは、それほど好きな歌手ではありませんが、その華やかなルックスは、若き日の浅丘ルリ子のようでもあり、私は大好き! 特に、このジャケットは♪♪~♪

それゆえに中身については、書きません。

ただ、ジャケットを眺めるだけということで、本日はご容赦下さい。

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ジャーメインもよろしく

2009-05-15 08:50:49 | Soul

パパの家 / Jermaine Jackson (Motowm / ビクター音楽産業)

オールディズ趣味にどっぷりと浸かっていた昭和48(1973)年頃には、当然ながら、そういう味わいを持ったメロディやカバー物にも惹きつけられていました。

本日ご紹介のシングル盤も、その中のひとつとして、私の大好きなカバーバージョン♪

オリジナルは Shep & Limelites という所謂ドゥーワップのグループが、1961年に大ヒットさせた、オリジナルタイトルは「Daddy's Home」という「泣きメロ」の名曲 ♪♪~♪ その魅力は本当に絶大で、我が国でもキングトーンズやシャネルズはもちろんのこと、山下達郎までが影響を多大に受けたオリジナル曲を歌っているほどですから、きっと皆様も耳にしたことがあろうかと思います。

で、これを歌っているジャーメイン・ジャクソンは、ご存じ、マイケル・ジャクソンの実兄で、この当時は2人ともジャクソン5というファミリーグループをやっていたのですが、当然ながら一番の才能があるマイケルは、既にソロ歌手としても評価が高かったのですから、ルックス的にはグループ内で最高の人気があったジャーメインにしても、ソロ活動を並行させるのが業界の掟でしょう。

そして幾つかのヒットを出しているのは言わずもがな、中でもこの曲は全米チャートの9位にランクされる成功作となっています。ただし我が国ではイマイチ……。

しかし、ここでの素直な歌い方は、なかなか魅力的ですよ。

失礼ながらジャーメインはマイケルほど歌のフェイクが上手くないのが、逆に良かったというストレートな表現が結果オーライだったのでしょう。ジーン・ペイチのアレンジも良い感じ♪♪~♪

また、さらにグッと惹きつけられるのが、B面に収録された「君の胸に抱かれたい / Take Me In Youre Arms」です。

これは一応、同じモータウンに所属している女性歌手の Kim Weston が1965年にオリジナルヒットさせたアップテンポのR&B曲ですが、今となってはドゥーピー・ブラザーズが1975年に出したカバーヒットバージョンが一番有名かもしれません。

しかし両方のバージョンを聴き比べて瞭然なのは、直線的なノリを重視したキム・ウェストンの特攻歌唱よりも、相当に白人ロックど真ん中というドゥーピーズのバージョンがカッコイイ! というのは時代の流れというものでしょう。

そして、そのドゥーピーズが元ネタとしていたのは、このジャーメイン・ジャクソンのバージョンなんですねぇ~♪

実にスマートな黒人フィーリングがモロに最高のロッキンビートで演じられた快演!

ということで、凄すぎる弟にはどうしても負けてしまったジャーメイン・ジャクソンですが、そのカッコ良さと粋なスタイルはファンも多いと思います。

と書きながら、サイケおやじは、このシングル盤だけしか所有していないのですが、とにかく両面ともに魅力の1枚ということで、本日はご理解願います。

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忘れていた朝のショーター

2009-05-14 09:37:12 | Jazz

Schizophrenia / Wayne Shorter (Blue Note)

あれぇ、なんだっけ……?

という曲名を失念したメロディの断片が自意識の中に浮かんでしまうことは、誰にでもあることだと思いますが、昨夜の就寝前から私の感性を独占していたそれが、このアルバムに入っていることに気がついたのは、本日の早朝でした。

そこで早速、久々の鑑賞に入ってみると、これがタイトルどおりに分裂したウェイン・ショーターの幅広い音楽性が存分に楽しめる傑作盤だと再認識!

録音は1967年3月10日、メンバーはカーティス・フラー(tb)、ジェームズ・スポールディング(as,fl)、ウェンイ・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、ジョー・チェンバース(ds) という、実力派のセクステットです。

A-1 Tom Thumb
 これが前述した曲名失念のメロディ! その演奏です。
 ほとんどホレス・シルバー(p) の「Song For My Father」にクリソツというイントロから、そのリズムパターンをラテンロック系のモダンジャズへと発展させていくゴッタ煮感覚が、まず最高です。
 作曲はもちろんウェイン・ショーターですが、そのテーマをリードしていくのが、ジェームズ・スポールディングのウソ泣きアルトサックス! そしてもうひとつメインのメロディがテナーサックスとトロンポーンによるカウンターリフで演じられるアンサンブルの心地良さ♪♪~♪ ジョー・チェンバースの刺激的なドラミングとハービー・ハンコックの楽しい合の手ピアノにもウキウキさせられますよ♪♪~♪
 そしてウェイン・ショーターが演じるアドリブは、キメが十八番の脱力節! グッと煮詰めて、一瞬にしてズッコケさせるようなフレーズの使い方は、すべらない話だと思いますが、いかがもんでしょう♪♪~♪ 私は、これをやってくれるんで、ウェイン・ショーターが大好きなのです。
 さらにハービー・ハンコックのファンキーでありながら斬新なピアノ、今にも走りだしそうなジョー・チェンバースのヘヴィなドラミング、我が道を行くジェームズ・スポールディングのアルトサックスという共演者達の自己主張も侮れません。
 あぁ、名曲名演とは、こういう充実度を指すんだと思います。
 ちなみに、例えば作者本人がボビー・ティモンズ(p) と演じているように、この曲はワンホーン演奏も幾つかのバージョンが残されていますが、やはり複数管で表現されるテーマアンサンブルがあってこその魅惑曲じゃないでしょうか?
 あと、スティーリー・ダンは、これを聴いていたのか!? 彼等は絶対に好きなはず! 私は、そう信じています。Rikki Don't Lose That Number ♪♪~♪

A-2 Go
 ウェイン・ショーターが得意技というミステリアスな曲調は、後のウェザーリポートを強く感じさせます。
 アドリブパートも、まずはハービー・ハンコックの実に新鮮なハーモニー感覚が素晴らしく、またここでも刺激的なジョー・チェンバースのドラミング、さらに怖いロン・カーターのペースワークが圧巻!
 ですからジェームズ・スポールディングのフルートが些か委縮気味に聞こえてしまうんですが、いよいよ登場するウェイン・ショーターが隠れ名演の決定版を披露してくれますよ。それは演奏を貫く複合ビートの間隙を縫うような、まさに独特の浮遊感と過激なフレーズの化学変化とでも申しましょうか、一筋縄ではいきません。
 それゆえに、とっつきにくいムードも強いのですが、これの虜になると抜け出せないのは言わずもがなです。

A-3 Schizophrenia
 アルバムタイトル曲は、これまたモヤモヤした出だしから一転、激烈なアップテンポで豪快無比な演奏が楽しめます。
 それを徹頭徹尾リードしていくのがジョー・チェンバースのハッスルドラミングで、エルビン・ジョーンズとトニー・ウィリアムスの折衷スタイルは、ジャズ者の心を捕らえて放さないでしょう。
 溌剌としたテーマリフからストレートに天の邪鬼を演じるウェイン・ショーターのテナーサックスは、マイルス・デイビスのバンドでは表現を許されなかったフラストレーションの開放かもしれませんし、それを察したハービー・ハンコックの伴奏も楽しいかぎり!
 またカーティス・フラーの爆裂トロンボーンに呼応するジョー・チェンバースのヤケッパチのオカズとか、ジェームズ・スポールディングのイライラしたようなアルトサックスも強い印象を残します。
 その意味でハービー・ハンコックのクールで熱いジャズ魂は全く立派でしょう。熱血のアドリブソロから周りの意見を無視しない柔軟な伴奏まで、流石だと思います。
 この演奏は、ジャズ喫茶の大音量で聴くと、尚更にブッ飛びますよ!

B-1 Kryptonite
 このアルバムでは唯一、ジェームズ・スポールディングのオリジナル曲ですが、そのテーマメロディはジョージ・ラッセルの「Ezz-Thetic」にクリソツ!?
 しかし、その過激な勢いは熱い盤石のリズム隊に支えられ、フルートで思いっきりの心情吐露に徹する作者のジャズ魂は、決して憎めるものではありません。
 そのあたりを考慮したのでしょうか、ウェイン・ショーターの、これも得意技という「はぐらかし」が、いきなり使われるアドリブパートの潔さ♪♪~♪ もちろんその後はフリーフォームも含んだ思索的な展開へと進むのが「お約束」ながら、その最後の部分でのテナーサックの低音歪み奏法(?)は、ヴァン・ゲルダー録音だけが成し遂げた世界遺産でしょうか。ここは再生装置の故障ではない、必聴の名演だと、強く思います。
 そして続くハービー・ハンコックの爽快なピアノとリズム隊3者のコンビネーションも、実に素晴らしいです。あぁ、これが新主流派の面目躍如でしょうか、本当に痛快ですよ。ラストテーマのスマートな混濁も、さらに素敵です。

B-2 Miyako
 おそらくは、このアルバムでは一番有名だろうと思われるウェイン・ショーターが畢生のバラード♪♪~♪ もちろんタイトルどおり、愛する女性に捧げたワルツテンポの愛らしいメロディが、作者本人の好むミステリアスなムードで染め上げられていく演奏です。
 その陰の立役者は、皆様ご推察のようにハービー・ハンコックで、流石のコードワークが素敵ですねぇ~♪ 地味ながらツボを外さなロン・カーターのペース、しぶといブラシを聞かせるジョー・チェンバースも名演だと思います。
 そしてウェイン・ショーターの一期一会というか、ひとつひとつの「音」を大切にした優しい音色のテナーサックスがスピーカーから流れ出て、その場の空間に広がっていく心地良さは絶品♪♪~♪

B-3 Playground
 オーラスは如何にもブルーノートがど真ん中の熱血モードジャズ!
 テンション高いテーマアンサンブルや演奏全体の雰囲気には、当然ながら時代の要請でフリーな味わいも含まれていますが、アドリブパートは正統派4ビートがメインですから、ウェイン・ショーターにしろ、カーティス・フラーにしろ、決してデタラメは吹いていません。
 なによりもリズム隊のビシッと芯のはっきりしたノリが痛快です。
 そしてジェームズ・スポールディングの、どっちつかずの姿勢さえも結果オーライ! はっきり言えば迷い道かもしれませんが、それすらも名演の範疇にしてしまう当時のブルーノートのセッション現場の雰囲気の熱さは、本当に好ましいと思います。
 その意味で過激なフリー地獄へと足を踏み入れていくハービー・ハンコック以下のリズム隊が熱演が、時間切れでラストテーマへと繋がってしまうのは残念至極なんですが、そのテーマアンサンブル終盤での、フリーの嵐の再襲来には溜飲が下がるというものです。

ということで、今となっては中途半端な人気盤というか、現代のジャズ喫茶では、どの程度の鳴らされ方になっているのか知る由もありませんが、1970年代までのジャズ喫茶では、これが鳴り出すと店内の雰囲気がグッと本格的なジャズムードへと変化したほどの印象盤でした。当時の大学のジャズ研や学生バンドのメンバーにも人気があったと記憶しています。

大仰なアルバムタイトルと不気味なジャケットデザインゆえに、暴虐のフリージャズだとして聴かず嫌いになっている感もある作品ですが、中身はとっても楽しくて刺激的! 聴き易さも当然の如くですから、決して忘れてはならない作品じゃないでしょうか。

と、書きながらも、実は忘れていたサイケおやじは、深く反省をするのでした。

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今朝、急に聴きたくなったオーティス

2009-05-13 10:06:43 | Soul

ドッグ・オヴ・ベイ / Otis Redding (Volt / 日本グラモフォン)

私が初めてオーティス・レディングを意識した最初の曲が、いみじくも、この天才ボーカリストの遺作でした。原曲タイトルは、(Sittin' On) The Dock Of The Bay ♪♪~♪

それは昭和43(1968)年の初夏のことで、既にオーティス・レディングが飛行機事故で亡くなっていたことは当時、人気があった朝の若者向けワイドショウ「ヤング720 (TBS)」等々からの情報で知ってはいたのですが、実際にオーティス・レディングの歌をリアルタイムで聴いたのは、これが初めてだったのです。

そして一聴、妙に達観しているというか、不思議な哀しみが滲み出た歌唱に???

というよりも、当時の黒人大衆音楽、所謂R&Bは強いビートをベースにしながらも、例えばモータウンに代表されるスマートでメロディアスなポップス系か、もしくはウィルソン・ピケットやサム&デイヴのようなワイルドで熱い魂の叫びが魅力のギトギト系の二通りしか、私は意識していませんでした。

もちろん実際には、もっと多彩な楽しみが、黒人音楽にはあったわけですが……。

そこで、この曲はイントロの波のSEから、真摯でジェントルな歌い出し、そして強いビートとメロディ優先主義の演奏が、ジワジワと胸に迫ってくるという感じでした。

実は告白すると、私はオーティス・レディングがそれまでに大衆を熱狂させていた、あの強烈なソウル魂が溢れる歌は、聴いたことがありませんでしたから、それが結果的に良かったのかもしれません。

というのも、後追いで聴いたオーティス・レディングの熱唱名演の数々とは、明らかに異質なスタイルが、ここに楽しめるからです。おそらくデビュー当時からオーティス・レディングを聴き続けてきたファンの皆様ならば、大いに違和感を覚えたんじゃないでしょうか?

しかしそれにしても、この録音に関しては、セッション終了後の週末巡業中に飛行機事故で急逝……、という事実を鑑みても、歌詞の内容が意味深すぎます。

故郷を遠く離れた老人が独り、サンフランシスコの夕日の港で、海を眺めて物思い……。

後で知ったことですが、オーティス・レディングの歌は圧倒的にラブソングが多いのですから、こんな人生のせつない終焉を歌った曲が遺作になるとは、あまりにも出来すぎで、絶句するしかありません。

もちろん当時は中学生だったサイケおやじには、歌詞の意味も、その重さも、リアルタイムで理解していたはずもありませんが、この物悲しい雰囲気には非常に胸を熱くさせられました。

これも、ソウルミュージックの魅力なんですねぇ~。

そして当然ながら、速攻でこのシングル盤を買い、オーティス・レディングを追いかけ始めたわけですが、やはり聴くほどに早世が悔やまれてなりません。

ちなみに最近、有名人の訃報が連続にあって、本日は朝から、このシングル盤を聴きたくなったわけですが、やはり先ごろ天国へ召された忌野清志郎のキメ台詞「愛しあっているかい?」は、オーティス・レディングがオリジナルとされています。

それは1967年のモンタレー・ポップ・フェスティバルに出演したオーティス・レディングが、歴史的な熱唱となった「I've Been Loving You Too Long」を歌い出す前のMCの一節として、そのドキュメント映画に残されていますが、そこで字幕に「愛しあっているかい?」が出るのです。

ただし残念ながら、現在のソフトでは別に訳されているそうですが……。

それはそれとして、オーティス・レディングは映像作品も様々に出ておりますので、その熱いパフォーマンスにもシビレて下さいませ。

とにかくオーティス・レディングの影響を受けた歌手や音楽家の存在は限りなし!

享年26歳、しかし、その天才は永遠に不滅です。

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オリバー・ネルソンの脂っこさ

2009-05-12 08:34:36 | Jazz

Screamin' The Blues / Oliver Nelson (New Jazz)

食べ物の好みでも若い頃は脂っこいものが好きなように、聴く音楽も例えばハードロックとかサザンソウル、あるいはスワンプロック等々、相当にギラギラしたものが好きでした。

それはジャズでも同じ事!

本日ご紹介の1枚は、そのタイトルどおりに粘っこく、ギトギトした演奏がびっしり詰まった名盤だと思います。

録音は1960年5月27日、メンバーはオリバー・ネルソン(as,ts)、エリック・ドルフィー(as,bcl)、リチャード・ウィリアムス(tp)、リチャード・ワイアンズ(p)、ジョージ・デュヴィヴィエ(b)、ロイ・ヘインズ(ds) という、当時のオリバー・ネルソンやエリック・ドルフィーの周辺では気心の知れた面々♪♪~♪ おそらくオリバー・ネルソンとエリック・ドルフィーの共演セッションは、これが最初になると思われますが、結論から言えば、その意気投合した雰囲気の良さ、そして尖鋭的な部分も含んだ、その新進の過激さも素晴らしいかぎりです。

A-1 Screamin' The Blues
 いきなりネバネバ、ギットギトのゴスペルハードバップで、テーマの主旋律を力んでリードするオリバー・ネルソンがなんとも憎めません。フロントの他の2人が合わせるホーンのアンサンブルも良い感じ♪♪~♪
 そしてアドリブの先発を務めるリチャード・ワイアンズのファンキーピアノが、これまた最高なんですねぇ~♪ まさにブルース&ファンキーの真骨頂というか、コクがあるのに飽きないという、料理の鉄人的な名手の証だと思いますが、そのリチャード・ワイアンズにしても当時はニューヨークに出てきたばかりの新人扱いだったというのですから、流石に本場の懐の深さには驚かされますねぇ。
 その意味ではオリバー・ネルソンやエリック・ドルフィーも同じ立場だったわけですが、妙な落ち着きと過激さを同居させたオリバー・ネルソンのテナーサックスのアドリブに対し、バスクラリネットのネクラ節で呼応するエリック・ドルフィーの激ヤバな感性は、やっぱり強烈です。
 また溌剌としたハードバップど真ん中の快演を聞かせてくれるリチャード・ウィリアムスも、生涯の名演セッションがこのアルバムに記録されたように、素晴らしいトランペットを披露しています。

A-2 March On, March on
 これまたタイトルどおりにマーチテンポのゴスペルハードバップ! ほとんどジャズメッセンジャーズかジャズクルセイダーズという感じが楽しいかぎりです。この、いっしょに口ずさせめるマイナーメロディのテーマ♪♪~♪ その絶妙な「泣き節」が私は大好きです。
 しかしイントロでジョージ・デュヴィヴィエが作り出すアブナイ雰囲気とか、演奏全体は、なかなか一筋縄ではいきません。
 明快に鳴りまくるリチャード・ウィリアムスのトランペット、シンプルにして悪い予感に満たされたオリバー・ネルソンの陰湿なアドリブ、直線的にエグイことをやらかすエリック・ドルフィーのアルトサックス、さらにジェントルなムードが素晴らしいリチャード・ワイアンズのセンスの良さ!
 そうした全くバラバラの思惑がラストテーマへと収斂していく、その密度こそが名演の条件だと痛感させられるのでした。

A-3 The Drive
 如何にもオリバー・ネルソンの曲らしい、アップテンポで流れるようなテーマメロデイが印象的です。そしてアドリブパートでのメンバー全員の大ハッスルも、実に好ましい名演が続くのです。
 特にリチャード・ウィリアムスの絶好調は嬉しいかぎりで、リー・モーガンにも決して負けていないクリフォード・ブラウン直系のアドリブが冴えわたり! これにはエリック・ドルフィーも必死にならざるを得ないわけですが、そこで案外と保守的な展開を演じているのは興味深々でしょう。
 ですからリチャード・ワイアンズのハードバップピアノが、尚更に素晴らしく輝くんですねぇ~♪ もちろんロイ・ヘインズのドラミングもテンションが高く、演奏全体をビシッと引き締める強烈な存在感を聞かせています。
 肝心のオリバー・ネルソンは、意想外とも思える正統派!?

B-1 The Meetin'
 オリバー・ネルソンのオリジナル曲としては、カウント・ベイシー楽団あたりでも演じられているメロディで、あれっ、そこでのクレジットは?
 まあ、それはそれとして、ここでもゴスペルマナーの粘っこいテーマアンサンブルが実に魅力的で、そのミディアムテンポの高揚感にはワクワクさせられます。
 そしてアドリブパートに入っては一転してのスピードアップ! ドラムスとベースが、まさにハードバップの真骨頂ですし、メンバー各々が全力疾走のアドリブ合戦を披露してくれます。
 中でもエリック・ドルフィーの過激節が良いですねぇ~~♪ さらにリチャード・ワイアンズの小気味よいスイング感とか、それを煽りまくるロイ・ヘインズのスティック、野太いヤケッパチを演じるオリバー・ネルソンも侮れません。 

B-2 Three Secnods
 グッと抑えた感じの思索的な曲と演奏ですが、これこそ、後の名盤「ブルースの真実 (Impules!)」へとダイレクトに繋がるものじゃないでしょうか。
 その静寂を一瞬に破壊するエリック・ドルフィーの先発アドリブの恐ろしさ! さらにミュートで疑似ブッカー・リトルを演じてしまうリチャード・ウィリアムスにも、ハッとさせられます。
 そしていよいよ登場するオリバー・ネルソンの煮詰められたアドリブ、それに続くリチャード・ワイアンズのピアノがビル・エバンス化しているのは、言わずもがなです。
 終盤のソロチェンジのパートでは、熱いアドリブに興じるフロント陣に対し、クールなビートとコードワークの秘密を解き明かすリズム隊が、最高にカッコ良いです♪♪~♪

B-3 Alto-itis
 オーラスは循環コードっぽい進行のビバップ系演奏ですが、そのキモはオリバー・ネルソン対エリック・ドルフィーのアルトサックスバトル!
 熱血のアップテンポに乗って飛びだすエリック・ドルフィーの痙攣的な自己主張、それに続くオリバー・ネルソンの棄てばちな感性が、ある意味では開き直りかもしれませんが、アドリブが進んでいくうちに自らが熱くなってしまうあたりは憎めません。

ということで、アルバム全体に捨て曲無しの名演集だと思います。

既に述べたように、あのウルトラ人気名盤「ブルースの真実」への道程としても興味深い作品です。そしてこの熱気と自然体の雰囲気良さは特筆すべきでしょう。これは毎度お馴染みのサイケおやじ的暴言になりますが、「ブルースの真実」では失われていた何かが、ここには確かにあると感じています。

今となってはエリック・ドルフィーのファン以外には忘れられたアルバムかもしれませんが、機会があればジャズ喫茶でリクエストして聴くのもお勧めです。自宅じゃ、ちょいと胃もたれ……。

ちなみに掲載ジャケットは一目瞭然、歪みがあるのですが、これは以前、裏側にカップ麺を溢した未練のなごり……。ジャケット全体がボワボワになってしまったというお粗末です。まあ、日本盤だから、なんて負け惜しみもせつないわけですが……。

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