OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

オリバー・ネルソンの脂っこさ

2009-05-12 08:34:36 | Jazz

Screamin' The Blues / Oliver Nelson (New Jazz)

食べ物の好みでも若い頃は脂っこいものが好きなように、聴く音楽も例えばハードロックとかサザンソウル、あるいはスワンプロック等々、相当にギラギラしたものが好きでした。

それはジャズでも同じ事!

本日ご紹介の1枚は、そのタイトルどおりに粘っこく、ギトギトした演奏がびっしり詰まった名盤だと思います。

録音は1960年5月27日、メンバーはオリバー・ネルソン(as,ts)、エリック・ドルフィー(as,bcl)、リチャード・ウィリアムス(tp)、リチャード・ワイアンズ(p)、ジョージ・デュヴィヴィエ(b)、ロイ・ヘインズ(ds) という、当時のオリバー・ネルソンやエリック・ドルフィーの周辺では気心の知れた面々♪♪~♪ おそらくオリバー・ネルソンとエリック・ドルフィーの共演セッションは、これが最初になると思われますが、結論から言えば、その意気投合した雰囲気の良さ、そして尖鋭的な部分も含んだ、その新進の過激さも素晴らしいかぎりです。

A-1 Screamin' The Blues
 いきなりネバネバ、ギットギトのゴスペルハードバップで、テーマの主旋律を力んでリードするオリバー・ネルソンがなんとも憎めません。フロントの他の2人が合わせるホーンのアンサンブルも良い感じ♪♪~♪
 そしてアドリブの先発を務めるリチャード・ワイアンズのファンキーピアノが、これまた最高なんですねぇ~♪ まさにブルース&ファンキーの真骨頂というか、コクがあるのに飽きないという、料理の鉄人的な名手の証だと思いますが、そのリチャード・ワイアンズにしても当時はニューヨークに出てきたばかりの新人扱いだったというのですから、流石に本場の懐の深さには驚かされますねぇ。
 その意味ではオリバー・ネルソンやエリック・ドルフィーも同じ立場だったわけですが、妙な落ち着きと過激さを同居させたオリバー・ネルソンのテナーサックスのアドリブに対し、バスクラリネットのネクラ節で呼応するエリック・ドルフィーの激ヤバな感性は、やっぱり強烈です。
 また溌剌としたハードバップど真ん中の快演を聞かせてくれるリチャード・ウィリアムスも、生涯の名演セッションがこのアルバムに記録されたように、素晴らしいトランペットを披露しています。

A-2 March On, March on
 これまたタイトルどおりにマーチテンポのゴスペルハードバップ! ほとんどジャズメッセンジャーズかジャズクルセイダーズという感じが楽しいかぎりです。この、いっしょに口ずさせめるマイナーメロディのテーマ♪♪~♪ その絶妙な「泣き節」が私は大好きです。
 しかしイントロでジョージ・デュヴィヴィエが作り出すアブナイ雰囲気とか、演奏全体は、なかなか一筋縄ではいきません。
 明快に鳴りまくるリチャード・ウィリアムスのトランペット、シンプルにして悪い予感に満たされたオリバー・ネルソンの陰湿なアドリブ、直線的にエグイことをやらかすエリック・ドルフィーのアルトサックス、さらにジェントルなムードが素晴らしいリチャード・ワイアンズのセンスの良さ!
 そうした全くバラバラの思惑がラストテーマへと収斂していく、その密度こそが名演の条件だと痛感させられるのでした。

A-3 The Drive
 如何にもオリバー・ネルソンの曲らしい、アップテンポで流れるようなテーマメロデイが印象的です。そしてアドリブパートでのメンバー全員の大ハッスルも、実に好ましい名演が続くのです。
 特にリチャード・ウィリアムスの絶好調は嬉しいかぎりで、リー・モーガンにも決して負けていないクリフォード・ブラウン直系のアドリブが冴えわたり! これにはエリック・ドルフィーも必死にならざるを得ないわけですが、そこで案外と保守的な展開を演じているのは興味深々でしょう。
 ですからリチャード・ワイアンズのハードバップピアノが、尚更に素晴らしく輝くんですねぇ~♪ もちろんロイ・ヘインズのドラミングもテンションが高く、演奏全体をビシッと引き締める強烈な存在感を聞かせています。
 肝心のオリバー・ネルソンは、意想外とも思える正統派!?

B-1 The Meetin'
 オリバー・ネルソンのオリジナル曲としては、カウント・ベイシー楽団あたりでも演じられているメロディで、あれっ、そこでのクレジットは?
 まあ、それはそれとして、ここでもゴスペルマナーの粘っこいテーマアンサンブルが実に魅力的で、そのミディアムテンポの高揚感にはワクワクさせられます。
 そしてアドリブパートに入っては一転してのスピードアップ! ドラムスとベースが、まさにハードバップの真骨頂ですし、メンバー各々が全力疾走のアドリブ合戦を披露してくれます。
 中でもエリック・ドルフィーの過激節が良いですねぇ~~♪ さらにリチャード・ワイアンズの小気味よいスイング感とか、それを煽りまくるロイ・ヘインズのスティック、野太いヤケッパチを演じるオリバー・ネルソンも侮れません。 

B-2 Three Secnods
 グッと抑えた感じの思索的な曲と演奏ですが、これこそ、後の名盤「ブルースの真実 (Impules!)」へとダイレクトに繋がるものじゃないでしょうか。
 その静寂を一瞬に破壊するエリック・ドルフィーの先発アドリブの恐ろしさ! さらにミュートで疑似ブッカー・リトルを演じてしまうリチャード・ウィリアムスにも、ハッとさせられます。
 そしていよいよ登場するオリバー・ネルソンの煮詰められたアドリブ、それに続くリチャード・ワイアンズのピアノがビル・エバンス化しているのは、言わずもがなです。
 終盤のソロチェンジのパートでは、熱いアドリブに興じるフロント陣に対し、クールなビートとコードワークの秘密を解き明かすリズム隊が、最高にカッコ良いです♪♪~♪

B-3 Alto-itis
 オーラスは循環コードっぽい進行のビバップ系演奏ですが、そのキモはオリバー・ネルソン対エリック・ドルフィーのアルトサックスバトル!
 熱血のアップテンポに乗って飛びだすエリック・ドルフィーの痙攣的な自己主張、それに続くオリバー・ネルソンの棄てばちな感性が、ある意味では開き直りかもしれませんが、アドリブが進んでいくうちに自らが熱くなってしまうあたりは憎めません。

ということで、アルバム全体に捨て曲無しの名演集だと思います。

既に述べたように、あのウルトラ人気名盤「ブルースの真実」への道程としても興味深い作品です。そしてこの熱気と自然体の雰囲気良さは特筆すべきでしょう。これは毎度お馴染みのサイケおやじ的暴言になりますが、「ブルースの真実」では失われていた何かが、ここには確かにあると感じています。

今となってはエリック・ドルフィーのファン以外には忘れられたアルバムかもしれませんが、機会があればジャズ喫茶でリクエストして聴くのもお勧めです。自宅じゃ、ちょいと胃もたれ……。

ちなみに掲載ジャケットは一目瞭然、歪みがあるのですが、これは以前、裏側にカップ麺を溢した未練のなごり……。ジャケット全体がボワボワになってしまったというお粗末です。まあ、日本盤だから、なんて負け惜しみもせつないわけですが……。

コメント
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