OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

初買いエバンスが、これ

2009-05-11 09:09:37 | Jazz

The Bill Evans Album (Columbia)

私が初めて買ったビル・エバンスのアルバムで、高校生の頃には、それこそ朝な夕なに聴きまくった1枚です。

まあ、今となってはビル・エバンスがエレピを弾いている事だけが有名な作品かもしれませんが、もうひとつ、演目が全て本人のオリジナルというも、ある意味では画期的!?

告白すればサイケおやじは、ビル・エバンスのアルバムは既にジャズ喫茶で幾つかを聴いていましたし、実際にレコード屋には何枚もあったリーダー盤の中から、あえてこれを選んだ理由は、新譜だったことに加えて、「全曲オリジナル」というのが大きな魅力でした。

このあたりはジャズ者からすれば、スタンダード曲の味わいを知らない愚か者という烙印も当然ながら、当時の私は、例えばビートルズのように、演目は自分達のオリジナルが一番というふうに洗脳されていたのですから、ねぇ……。

録音は1971年5月11&20日、そして6月9日とされていますが、これには諸説あるようです。そしてメンバーはビル・エバンス(p,el-p)、エディ・ゴメス(b)、マーティ・モレル(ds) という当時のレギュラートリオですから、如何にも大手会社の制作らしい安定感と前向きな姿勢が、未だジャズの入口に立ったばかりの私にはジャストミートでした。

A-1 Funkallero
 1950年代に作られていたとされるオリジナル曲で、この時点までには既にズート・シムズやスタン・ゲッツとの共演レコーディングも残されていたわけですが、公式に世に出たのは、このアルバムが最初でしょうか?
 ここではエレピによるビル・エバンスの思わせぶりなスタートからエディ・ゴメスのペースがテーマをリードし、そしてアップテンポのアドリブへと入っていく展開が、なかなかにモダンジャズしています。
 というか、当時のサイケおやじには、この明快で饒舌な4ビートの感覚が、魔法のように感じられましたですね。特にエディ・ゴメスの手数の多いペースワークには幻惑されました。今日的な聴き方としては、失礼ながら音程の危うさとか、その場シノギのアドリブ構成とか、ツッコミどころもあるわけですが……。
 肝心のビル・エバンスは前半でエレピ、そして後半が生ピアノによるアドリブソロを披露して、やはり安定したエバンス節の大サービス♪♪~♪ 特に終盤でのドラムスとのソロチェンジとそれ以降の勢いには熱くさせられます。
 そのマーティ・モレルのドラミングも、一本調子だとか、あまり良くは言われませんが、初めて聴いた私にはロックっぽいフィーリングも感じられるド迫力でした。

A-2 The Two Lonely People
 一転して、如何にもビル・エバンスらしいジェントルなムードが最高の演奏です。
 それは十八番のワルツテンポと自身のアドリブフレーズから作りだしたようなテーマメロディの不思議な和みが、最初のソロピアノのパートからトリオの演奏となっていく展開の中で、少しずつ熟成されていくような♪♪~♪
 微妙な「泣きメロ」を含んだ演奏全体の雰囲気の良さもあって、このアルバムの中では一番好きになりましたですねぇ。
 もちろんエディ・ゴメスのツボを押さえた絡み、またマーティ・モレルの力感溢れるブラシも名演だと思います。

A-3 Sugar Plum
 これも「らしい」と言えば、全くそのとおりという、この時期ならではエバンス節が全開のオリジナル曲で、生ピアノとエレピの使い分けで演じられるアドリブパートは爽やかさ優先主義♪♪~♪
 そして若き日のサイケおやじは、エディ・ゴメスのペースに耳が奪われたというか、それを中心に聴かずにはいられないほどでした。
 というよりも、実はこの時点での私は、あの素晴らしいスコット・ラファロとの決定的な黄金時代を知らなかったというのが本当のところでしたから、モダンジャズといえば典型的な4ビートウォーキングを脱していたエディ・ゴメスに圧倒されたというわけです。

A-4 Waltz For Debby
 ビル・エバンスでは一番有名なオリジナル曲でしょうねっ、これは!
 とはいえ、既に述べたように、私は1961年のライブバージョンはもちろん、その前のスタジオバージョンも聴いたことがなったのですから、今にして思えば、それなりの出来栄えというここでの演奏にも、なんだかなぁ……。
 些か大袈裟な無伴奏ピアノソロのスタートから、良い雰囲気のエレピのアドリブも、前述したスコット・ラファロとの共演バージョンを知ってしまえば、それで終わりというのが正直な感想です。
 ただし「初エバンス」という条件があれば、エディ・ゴメスの熱演も眩しい限り! 前向きなビル・エバンスも流石だと思います。特にヤケッパチ気味の後半が良いですねぇ~♪

B-1 T.T.T.
 「12音階主義」で作られたオリジナルと解説されますが、どこかしら煮え切らないテーマ部分の縺れとか自己満足的なアドリブパートが、なかなかの緊張感を醸し出した名演かもしれません。
 ある意味では冷徹なムードが支配的なアップテンポの展開が、実に心地良いと思います。
 妥協しないエディ・ゴメスのペースワークにエレピで対抗するビル・エバンス、そしてポリリズム的なジャズビートを叩き出すマーティ・モレルというトリオ3者の自己主張には、明らかにモダンジャズの魔法が潜んでいるはずです。
 それゆえに十代だったサイケおやじは心底、夢中にさせられたのではないでしょうか。

B-2 Re:Person I Knew
 1960年代からのオリジナル曲ですから、ここでのエレピの使用は新鮮味を出すための方策でしょうか……? 変則ブルースのようでもあり、モードの見本市のようでもあり、クールなロックジャズのような雰囲気も濃厚に感じられる演奏になっています。
 告白すれば、私は既にマイルス・デイビスの「In A Silent Way (Columbia)」あたりを聴いていたので、この演奏の途中で、マイルスぼっいミュートのトランペットとかロック系のギターが飛び出してきそうな幻覚を感じたほどです。
 あぁ、この絶妙の浮遊感♪♪~♪
 そしてグイグイと盛り上がっていく終盤の纏まり!

B-3 Comrade Conrad
 これまたビル・エバンスとしかいえないムードが支配的な名曲名演だと思います。
 思索的な和みを追求するテーマメロディの不思議な存在感、自然体のワルツビートでスイングしていく展開は、まさにそれじゃないでしょうか。
 ある意味ではミステリアスな雰囲気から少しずつ霧が晴れていくようなアドリブパートへの流れの良さが、本物のジャズを聴いているという充足感に繋がるようです。
 そしてビル・エバンスはここでも前半は生ピアノ、そして後半はエレピと使い分けていますが、案外と個性が出しにくいエレピという楽器で、きちんとエバンス節をテンコ盛りにしているのは流石!

ということで、突然にジャズモードが復活したサイケおやじです。

決して名盤扱いにはされていないアルバムですが、それでも私をジャズ天国へと導いた1枚として、今もって時々は聴きたくなるんですよねぇ~♪

ちなみに最初に買ったのは、当然ながら日本盤でしたが、後にアメリカ盤と聴き比べてみると、その音のモヤモヤ感がエレピの音色の魅力と絶妙に合っているんですよ♪♪~♪ もちろん若い頃の思い出という美しき十代の感性もありましょうが、すっかり中年ド真ん中となった現在でも、この感覚は大切な宝物なのでした。

コメント
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