OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

初夏に聴くヴァン・モリソン

2009-05-19 08:59:03 | Rock

A Sence Of Wonder / Van Morrison (Mercury)

キング・クリムゾンの「エピタフ」は、グレッグ・レイクが畢生の名唱だと思いますが、さりとてグレッグ・レイクが自分のバンドで歌うことには必然性が無いのでは?

と書いたのは、先日の「宮殿」の文章でしたが、それではグレッグ・レイク、あるいはキング・クリムゾン以外で、誰がそれを歌ったら!?

という希望的観測に相応しいのが、ヴァン・モリソンでしょうか。それとアート・ガーファンクルでも聴いてみたいもんです。

そこで本日はヴァン・モリソンが1984年に出してくれた、サイケおやじの愛聴盤♪♪~♪

この人はアイルランド出身の白人ソウル歌手で、そのキャリアは1960年代の英国ビートバンドのブーム時からスタートしていますが、大きな注目を集めたのは1967年頃からアメリカのレコード会社と契約し、所謂ブルーアイドソウル系の、しぶといレコードを出し始めてからでしょう。

特に私にとっては、「Tupelo Honey (Warner Brs.)」という若き日のサイケおやじをシビレさせた名盤以降、新譜が出る度に迷わずそれをゲットさせられてきた偉人となっています。

そしてこのアルバムは、なんと引退騒動の渦中で突如発売されたという、実に印象深い問題作!

 A-1 Tore Down A La Rimbaud
 A-2 Ancient Of Days
 A-3 Evening Meditation
 A-4 The Master's Eyes
 A-5 What Would I Do ?
 B-1 A Sense Of Wonder
 B-2 Boffylow And Spike
 B-3 If You Only Knew
 B-4 Let The Slave
 B-5 A New Kind Of Man

一聴、まず嬉しい驚きだったのは、収録楽曲が押し並べて分かり易い♪♪~♪ このアルバム以前に続いていた宗教的(?)価値観に基づいたような自己満足っぽい雰囲気が薄れていたことです。

それをあえて「問題作」としたのは私だけではなく、ほとんどのファンが逆に戸惑ったというか、実は既に述べたように、ヴァン・モリソンはこの数年前から引退を公言しては撤回するという狼少年、いや、正確には狼中年を繰り返していましたし、前作はなんとサヨナラ公演ともいうべきライブ盤「Live At The Grand Opera House Belfast」まで出していたのですから……。

それゆえに、ここでの妙に明るい悟りのような、ふっきれた雰囲気は嬉しくもあり、逆にせつなくもあったのが、サイケおやじの偽らざる気持ちです。

さらにヴァン・モリソンのアルバムと言えば自作自演曲が普通だったはずが、ここではカバー曲がふたつも演じられています!

まずレイ・チャールズの「What Would I Do ?」が、スローテンポでジワジワと熱気を滲ませていく、ヴァン・モリソンが十八番の名唱♪♪~♪ バックの女性コーラスやリズム隊のハートウォームな伴奏、さらにツボを外さないホーンのアレンジも、こちらの思っているとおりの快感をプレゼントしてくれました。

また、もうひとつの「If You Only Knew」は、ジャズ者にも気になる存在のモーズ・アリソンがオリジナルで、実は私の大好きな名曲「Sunny」の元ネタ的な味わいも強く含んでいますから、いゃ~、本当にたまりませんよっ! ハモンドオルガンの使い方も良い感じ♪♪~♪

そしてオリジナル曲の充実度は言わずもがな、その歌唱と演奏が絶妙の融合度で和みと興奮を両立させてくれます。

特にヴァン・モリソンのハミングと中華メロディのアイルランド的解釈が最高という「Evening Meditation」は、何時、何度聴いても不思議な感動を呼ぶことが必定♪♪~♪ ピアノやベースの醸し出す味わいは、ちょっと「戦場のメリークリスマス」に近いムードがありますね。もちろん私は両方とも大好き♪♪~♪

そして、それに続くソウルフルなイントロから熱く歌われる「The Master's Eyes」が、これまた最高の極み! 歌詞の内容は相当に宗教的ですから、こうなって当たり前かもしれませんが、単なるゴスペルの模倣ではなく、完全にヴァン・モリソンの世界! その味わいがファンをシビレさせるボーカルのディープな魅力が、本当に素晴らしいです。

さらにここから前述したレイ・チャールズのカバー曲「What Would I Do ?」へと続く流れは、キリスト教徒ではない私にとっても、まさに至福としか言えません♪♪~♪

ところがB面に入ると、もちろんそうしたソウルフルな世界は継続されていますが、タイトル曲の「A Sense Of Wonder」では英国トラッドの味わいも潜んだ独自の世界が楽しめます。バックの演奏には当時の事ですから、シンセやデジタル系の楽器も密かに使われていますが、そのヒューマンな味わいは絶品! 当然ながらヴァン・モリソンも魂の歌を聞かせてくれます。

それがギリギリまで行ってしまったのが、続く「Boffylow And Spike」で、なんとアイルランド民謡をロック化したようなインスト曲なんですねぇ。いったいヴァン・モリソンは何を演じているのか??? アルバムの趣旨からすれば全くの意味不明なんですが、深読みすれば、このアルバムのセッションをしっかりと支えてくれたバンドの面々に花を持たせたのかも?

なんて勘ぐっているところに入ってくる前述の「If You Only Knew」が、尚更に痛快という仕掛けが鮮やかです♪♪~♪

そしてオーラスの「A New Kind Of Man」が、実に分かり易い和みを提供してくれます。ラテン風味も入ったAOR系のメロディと演奏、そして肩の力が適度に抜けたヴァン・モリソンのボーカルが心地良いですねぇ~♪ 女性コーラスのミエミエな存在感も憎めません。

ということで、これはサイケおやじの初夏の定番アルバムです。

とにかくヴァン・モリソンの必要以上に力まない姿勢が好きです。もちろん何時もの熱血に入れ込んだボーカルも大好きなんですが、やはり今の時期には、このあたりがジャストミート♪♪~♪

発売当初はAORに走ったとして、一部からは批判もされていたんですが、今となっては関係なく楽しめると思います。

ところでヴァン・モリソンは、「エピタフ」を歌ってくれるでしょうか?

コメント
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