OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ローラ・ニーロで温故知新の扉を開く

2009-05-05 11:18:15 | Laura Nyro

Gonna Take A Miracle / Laura Nyro & Labelle (Columbia)

サイケおやじは古い物が大好きですから、音楽だって最新流行よりは所謂オールディズがお好みなんですが、そうなってしまった理由のひとつが、このアルバムです。

主役のローラ・ニーロは皆様ご存じのとおり、シンガーソングライターの代表的な女性アーティストとして言わずもがな、自作の多くがカバーされて大ヒットとなった名曲が山のようにあります。ですから自己のリーダー盤はオリジナルというのが当然ながら、その中から忽然と発表された通算5枚目の本作は、驚きのカバー作品集!

まあ、このあたりは最近ではすっかり定番となった煮詰まり解消&契約履行の常道といえば、全くそれまでなんですが、彼女自身のある意味ではアクの強い歌いまわしやメロディ作りのキモが、なんと意外にもストレートにカバーされている曲もある中では、ほとんど何の変化も無かったというのが、初めて聴いた時の私には大きな衝撃でした。

告白すれば、サイケおやじはフィフス・ディメンションの「Wedding Bell Blues」でローラ・ニーロに邂逅し、以降は彼女の作る歌が自分の感性にジャストミートし続けて今日に至っているわけですから、そのルーツを知り得たことは喜びでもありました。

で、このアルバムはアメリカでは1971年11月にリリースされていますが、我が国では翌昭和47(1972)年の発売で、当時高校生だった私は昼メシ代を浮かせて速攻ゲットし、聴きまくった愛聴盤です。

もろちん、その中身はローラ・ニーロ自作の曲がひとつもないということは、音楽誌の情報から知っていました。しかしそれでも買わざるをえなかったほどに、私はローラ・ニーロに夢中でしたが、その当時、他に私的な愛聴ロック系アルバムとしては「イマジン / ジョン・レノン」「展覧会の絵 / EL&P」「ウェルカム・トゥ・ザ・キャンティーン / トラフィック」「サンタナⅢ」「テュペロ・ハニー / ヴァン・モリソン」「ハーヴェスト / ニール・ヤング」等々でした。う~ん、往時が偲ばれますねぇ……♪

 A-1 I Met Him On A Sundy (Shirelles 1958)
 A-2 The Bells (Originals 1970)
 A-3 Monkey Time - Dancing In The Street
            (Major Lance 1963 - Marth & Vandellas 1964)
 A-4 Desiree (Charts 1957)
 A-5 You've Really Got A Hold On Me (Miracles 1963)
 B-1 Spanish Harlem (Ben E. King 1961)
 B-2 Jimmy Mack (Marth & Vandellas 1967)
 B-3 The Wind (?)
 B-4 Nowhere To Run (Marth & Vandellas 1965)
 B-5 It's Gonna Take A Miracle (Royalettes 1965)

しかし上記演目を歌うローラ・ニーロは全くこれまでの自分を隠していないというか、私にはほとんど彼女自身のオリジナル曲に思えたほどでした。というよりも、実はほとんど原曲バージョンを知らなかったわけですが、例えばその中ではビートルズのカバーで有名な「You've Really Got A Hold On Me」にしても、同様です。

演奏の基本は彼女のピアノの弾き語りと黒人女性コーラスグループのラベルとのコラボレーションに、当時上昇期だったフィリーサウンドの立役者達が伴奏をつけたものですが、それにしてもローラ・ニーロの強固な意思が滲み出るボーカルパートの潔さ!

いゃ~、本当にシビレますよ♪♪~♪

歌うことの素晴らしさを存分に楽しませてくれる冒頭の「I Met Him On A Sundy」から一転してビューティフルなバラードの世界に入る「The Bells」の、それこそ泣きたくなるような情熱には、いきなり胸キュンです。

そして躍動的な「Monkey Time - Dancing In The Street」のメドレーは、モータウン伝来のリズム&ビートの楽しさ、そしてローラ・ニーロの歌いまわしのタネ明かしが嬉しいところですし、同系の「Jimmy Mack」も私の大好き♪♪~♪ さらに蠢くエレキベースが痛快至極な「Nowhere To Run」も、たまりませんねぇ~♪ なによりも歌とコーラスにナチュラルなグルーヴが満ちていて最高! これは後に知ったところによれば、全ての歌入れが、一発録りのワンテイク完了だったとか!?

その意味で「Desiree」は静謐な歌いだしからシンプルなラブソングに素直な情熱と愛の感情を込めた名唱ですが、実は後で聴いた The Charts のオリジナルバージョンとは相当に雰囲気が異なっているのは要注意かもしれません。

というように、最初っから完全にこのアルバムの虜になった私は、演目のオリジナルバージョンを追い求めていくのですが、当時すんなりと聴けたのはモータウン系のヒット曲だった「You've Really Got A Hold On Me」や「Monkey Time - Dancing In The Street」、あるいは「Spanish Harlem」あたりだけでした。なにしろ、ニューロックやシンガーソングライターが全盛期だった頃ですからねぇ……。我が国のレコード会社にすれば、完全に過去の遺物という楽曲なんて、とっくに廃盤か発売そのものがなかったか、とにかく忘れられたメロディばかりだったと思います。

ちなみにそれが再注目されるのは、アメリカンオールディズ懐古の名作映画「アメリカン・グラフティ」が1974年12月に公開されて以降なのです。

ということは、当時はそうしたシングル盤は中古屋でも安値でしたから、サイケおやじには嬉しい状況♪♪~♪ 1枚百円とかいうレベルで、昔の洋楽シングル盤を買いまくっていましたが、周囲からは完全にバカにされていたというか……。

もうひとつ言えば、こうした趣味と嗜好はキャロル・キングの大ブレイクから、彼女が昔は作曲家として多くのヒットメロディを書いていた事実を知ったのも、大きなきっかけでしたねぇ。

そんなこんなで集めたシングル盤は、それなりに傷んでいましたが、聴くという喜びと過去の探究という楽しみは確実に増えていきました。

しかしそうして集めたシングル盤は現在、手元にほとんどありません。前述した「アメリカン・グラフティ」のヒットから我が国でも1975年に入ってオールディズのブームが到来し、過去のシングル盤が一気に十倍以上の値段となり、手が出せなくなったのと、私が既にジャズの世界にどっぷりと陥っていた所為で、纏めて七百枚ほどを我が国の某コレクター氏に高値で買われていったのです。

今となっては後悔モードにも入っていますが、その引き換えに得たお金で、欲しかったジャズのオリジナル盤を入手出来たことを思えば、マニア心も「もって冥すべし」でしょうか……。

ということで、収録演目の後に原曲を歌った歌手やグループ名を添えておきましたので、聴き比べも楽しいかと思います。

最後になりましたが、コーラス隊としてローラ・ニーロを盛りたてているラベルという黒人女性グループは、その前身がパティ・ラベル&ザ・ブルーペルズとして1960年代前半に幾つかのヒットを出していたのですが、このアルバム制作時の1971年には既に「あの人は今、どこに」状態……。それでもローラ・ニーロが彼女達の大ファンだった事に加え、グループ自体も新生ラベルとして再起を図っていた時期とあって、予想以上に素晴らしいコラボレーションが完成したと言われています。この時点でのメンバーはパティ・ラベル、サラ・ダッシュ、ノナ・ヘンドリックスという3人組で、この後には「宇宙から来たソウルクイーン」というイメージ戦略とド派手な衣装で大ブレイク! 1975年には「Lady Marmalade」のメガヒットも飛ばしているほどの実力派ですから、私は大好き♪♪~♪

ちなみに以前に掲載したバニラ・ファッジ演じる「キープ・ミー・ハンギング・オン」のシングル盤B面に収録された私のお気に入り「Take Me For A Little While」も、実は彼女達のオリジナルヒット曲だったのですから、自己のルーツは何時まで経っても否定出来ないものと痛感しております。

コメント
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