全国的に快晴のようですね♪ こういう気持ちの良い日は、なんと「昭和の日」という休日になったのねぇ~♪ 「昭和」万歳!
ということで、本日は如何にも「昭和」な、この1枚――
■The Sixth Sense / Lee Morgan (Blue Note)
ジャズミュージャンには早世した天才が特に多いと感じていますが、デビュー当時からスタアであったリー・モーガンも、その短い生涯の中で活動停止というか、シーンから消えていた時期が何度からありました。
それは悪いクスリの所為というのが定説とはいえ、個人的に不思議なのがレコードリリースの間隔の問題で、契約していたブルーノートから発売されたアルバムのカタログ番号をみると、1966年後半から1968年末頃まで、リーダー盤が途絶えています。
ところが今となって分かることなんですが、レコーディングはその間もしっかりと行われていたんですねぇ……。それらの記録は後年になって発表されていくのですが、う~ん、リアルタイムのリー・モーガンは決して人気が落ちていたわけではないはずで……。
このアルバムも1970年初頭に発売されたものですが、録音は1967年秋頃と言われています。
メンバーはリー・モーガン(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、フランク・ミッチェル(ts)、シダー・ウォルトン(p)、ヴィクター・スプロールズ(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という、なかなか味わい深い人選です――
A-1 The Sixth Sense
いきなりビリー・ヒギンズの快適ドラミングが冴えわたる哀愁のボサロック♪ ちょっと脱力したアフリカ系のメロディは、最初、ちょっと違和感があるのですが、聞くほどにクセになりますねぇ~。
リー・モーガンのアドリブは何時もより若干、肩の力が抜けた感じながら、ビリー・ヒギンズとは相性バッチリ! 続くフランク・ミッチェルはジョー・ヘンダーソンとハンク・モブレーの中間みたいなスタイルで、なかなかの好演ですし、ジャッキー・マクリーンの太い音色と泣き節も健在です。
しかし、ここはやっぱりビリー・ヒギンズ! クライマックスではリー・モーガンと本気度の高いやりとりがあって、しかもジコチュウになっていない楽しさ♪ もちろん痛快なドラミングは全篇で痛快ですよっ♪
A-2 Short Count
如何にもモードでございます、というアップテンポの演奏なんですが、このテーマメロディの手抜きさ加減が??? リー・モーガンの作曲なんですが……。
しかしアドリブパートは熱血&情熱の全力疾走で、こうゆうのを聴いているとジャズはやっぱりアドリブだぁ~! とか言い放ってしまいそうです。
直情のジャッキー・マクリーン、トリッキーなリー・モーガン、真摯なフランク・ミッチェル、俺に任せろのシダー・ウォルトン、それを煽りまくるビリー・ヒギンズのドラミングが痛快至極です。
ビシバシのビリー・ヒギンズが完全に主役かもしれませんよ。最高!
A-3 Psychedelic
タイトルとは全く違う、これもたまらない雰囲気のユルユルなジャズロック♪ シダー・ウォルトンの味わい深いイントロから弛緩したテーマ合奏をビシッと引き締めるリズム隊、ここでも特にビリー・ヒギンズが目立ちます。
ですからリー・モーガンも安心して十八番のフレーズを吹きまくり、ホーン隊のキメのリフも良い感じ♪ フランク・ミッチェルもシンプルな好演です。ちなみにこの人はハンク・モブレーに私淑していたそうですが、さもありなんですねぇ~。
しかしジャッキー・マクリーンは、ひとり浮き上がったような雰囲気で、すぐにアドリブを止めてしまう消化不良……。まあ、それを救うのがシダー・ウォルトンの物分りの良さでしょうか。
全体にユルフンの気持ち良さがあると思います。
B-1 Afreaka
この時期だけのアフリカ色が強いモード曲! というよりも作者のシダー・ウォルトンの趣味が良く出たような、ある種の偏執的な面白みが何とも言えません。
その所為でしょう、リー・モーガンのアドリブには慎重な姿勢が濃厚ですし、ジャッキー・マクリーンは暗中模索でヤケッパチ! これが実に最高ですよっ♪
しかしフランク・ミッチェルはキャリア不足を露呈かもしれません。
気になるシダー・ウォルトンはツボを押えた名演なのは言わずもがな、ビリー・ヒギンズが素晴らしすぎるシンバルワークとバランスの良いスティック捌きで快感なのでした。
B-2 Anti Climax
リー・モーガンの人気盤「ランプローラ(Blue Note)」に入っていた「月の砂漠」を堂々とリメイクした、つまりミエミエのセルフパロディながら非常に素敵な名曲・名演です。もちろんリー・モーガン以下、バンドが一丸となってブッ飛ばす爽快感は唯一無二! このメンバーなればこそでしょうねぇ~~~♪
特にジャッキー・マクリーンは得意技の連発♪ 息継ぎでの唸り声にもニヤリとさせられますし、フランク・ミッチェルはスピード感溢れる新世代のフレーズでアドリブを綴ります。
そしてシダー・ウォルトンが中心のピアノトリオのパートに入っては、ベースとドラムスの息もぴったりで、背後から襲い掛かってくるテンションの高いリフを上手く吸収しています。
う~ん、それにしても素敵なハードバップ! ついつい、音量を上げてしまいます。
B-3 The Cry Of My People
オーラスはリー・モーガンのミュートが冴える哀切のスローバラード♪ まるっきり長谷部安春が監督するニューアクション映画にピッタリという、ハードボイルドな雰囲気が流れ出してきます。シダー・ウォルトンの伴奏も実に良いですねぇ~♪
中盤からはテンポアップしてアドリブに入るという「お約束」の構成もイヤミ無く、フレーズの1音、ひとつの音がジンワリと胸に染入る、リー・モーガンの隠れ名演じゃないでしょうか。
という、このアルバムのプロデュースはフランシス・ウルフ!
実はアルフレッド・ライオンが1966年中頃にブルーノートの権利をリバティに売却して引退という経緯があったようです。とすると、リー・モーガンの冷遇化も何からの関係があるのでしょうか……。
それはそれとして、実質的にはオクラ入りしていたこのアルバムの快楽性は捨てがたく、ビリー・ヒギンズのリーダー盤という聞き方さえ出来るのは私の屈折性の表れかもしれません。
ちなみに私有盤はステレオ仕様ですが、モノラル盤はあるのでしょうか?
ジャケ写のリー・モーガンでは、日野晧正みたいなサングラスも気になるのでした♪