久々に風邪なんてものに……。鼻水が止まらん……。
というトホホ状態を解消するには――
■Opus De Bop Complete Edition / Stan Getz (Savoy / キング)
スタン・ゲッツは間違いなく天才ですが、やはりそのスタイルは一朝一夕に完成されたものではなく、誰でも最初はコピーの世界から試行錯誤の時期を経ていたことが分かる音源集です。
その内容はサボイで製作されたSP音源、そしてその別テイクを纏めたものですが、アナログ盤では数枚のLPに分散収録されていたところを、CD時代になって我国のキングレコードが完全版として発売したものです――
☆1945年12月12 or 14日録音 / Kai's Crazy Cats
01 Sweet Miss
02 Sweet Miss (master / Savoy 602)
03 Loaded
04 Loaded (master / Savoy 602)
05 Grab Your Axe, Max
06 Grab Your Axe, Max (master / Savoy 590)
07 Always (Savoy 590)
このセッションはカイ・ウィンディングがリーダーとなったセクステットの演奏です。メンバーはショーティ・ロジャース(tp)、カイ・ウィンディング(tb)、スタン・ゲッツ(ts)、ショーテイ・アレン(p)、イギー・シーヴァック(b)、シェリー・マン(ds) ですから、一瞬、西海岸系と思い込みますが、実はニューヨーク録音! バンド名が「クレイジー・キャッツ」というのも泣かせますね♪
演奏はアレンジを用いたモダンスイングというところで、時代的にはビバップがようやく形成されていたとはいえ、早くもウエストコーストジャズぽい響きが感じられるのは、このメンバーなればこそでしょうか。
肝心のスタン・ゲッツはレスター・ヤングのコピーがモロ出しですが、若干18歳にしてこの完成度は流石で、特に「Grab Your Axe, Max」の本テイクは、後年の浮遊感溢れる歌心が既に表出した名演だと思います。これが最初に発売されたのも、充分に納得ですね♪
ちなみに本テイクの4曲はオムニバスアルバム「ローデッド(Savoy)」に纏められましたが、残りの別テイクが出たのは1970年代に入ってからだったと記憶しています。
☆1946年7月31録音 / Stan Getz Quartet
08 Opus De Bop (Savoy 903)
09 And Teh Angels Swing (Savoy 909)
10 Running Water (Savoy 954)
11 Don't Worry About Me (Savoy 932)
記念すべきスタン・ゲッツの初リーダーセッションですが、レコード化された時は他のミュージャンの演奏とカップリングされていたようです。例えば「Opus De Bop」は The Bebop Boys 名義でした。
メンバーはスタン・ゲッツ(ts)、ハンク・ジョーンズ(p)、カーリー・ラッセル(b)、マックス・ローチ(ds) という当時のモダンジャズ最前線! もちろん演奏はバリバリのビバップということで、スタン・ゲッツも生硬に吹きまくっていて、ちょっとデクスター・ゴードンかワーデル・グレイに近くなっています。
ところがこれが、意外と魅力的というか、私は好きなんですねぇ♪ 特にミディアムテンポで力強くスイングした「Don't Worry About Me」は、名演だと思うのですが、いかがなものでしょうか? 一般にイメージされるスタン・ゲッツではない、ゴリ押し系のスタイルとはいえ、溢れる歌心が素晴らしい限り♪
そしてセッション全曲におけるリズム隊の凄さは言わずもがなでしょう。
ちなみにこの4曲は「オパス・デ・バップ(Savoy)」というオムニバスLPに纏められていましたですね。
☆1949年5月2日録音 / Stan Getz Octet
12 Stan Getz Along
13 Stan Getz Along (master / Savoy 966)
14 Stan's Mood
15 Stan's Mood (master / Savoy 966)
16 Slow
17 Slow (master / Savoy 967)
18 Fast
19 Fast (master / Savoy 947)
さて、これがスタン・ゲッツそのものといった演奏が聞かれるセッションです。それはウディ・ハーマン楽団で脚光を浴びた所謂フォーブラザースの再現を狙った企画であり、メンバーもスタン・ゲッツ(ts) 以下、アル・コーン(ts)、ズート・シムズ(ts)、アール・スウォープ(tb)、デューク・ジョーダン(p)、ジミー・レイニー(g)、マート・オリバー(b)、チャーリー・ペリー(ds) と役者が揃っています。
もちろん演奏はクールスタイルの決定版! 「Stan's Mood」の甘く幽玄な世界は本・別テイクともに完璧ですし、流麗にドライヴしまくる「Fast」には血が騒ぎます。アル&ズートとの義兄弟とのコラボレーションも最高という、ある意味の全盛期を記録していると思います。
ちなみに本テイクは「レストリアン・モード(Savoy)」というオムにパスLPに纏められ、残りの別テイクは1970年代に発掘されたものです。
ということで、以上を聞き通してみると、スタン・ゲッツの天才性が改めて実感されます。一般的にはプレスティッジに入れた1949年6月のカルテットセッション以降から、本格的な全盛期がスタートしたとされますが、それ以前にも大いに魅力的だったのですねぇ。
個人的にはマックス・ローチとの対決姿勢が強い初リーダーセッションの4曲に捨てがたい魅力を感じます。
もちろんそれは時代の流行を意識した黒人スタイルのモダンジャズでしたから、必ずしも好評を得たとは言えなかったようで、スタン・ゲッツも直ぐに自分が注目される端緒となったフォーブラザース系の流麗なサウンドに戻ってしまうのですが、このけっこうブリブリのスタイルで押していっても到達点は同じだったような気がしています。
いやぁ~、何時の時代もスタン・ゲッツは最高ですねっ♪