なっ、なんとっ、ついに10人かっ!
う~ん、死刑執行!
いくら職権とはいえ、今の法務大臣は凄すぎだぁ!
確かに犯罪抑止効果を狙っているのは分かるけれど、ほとんどの犯罪者は自分が捕まるとは思わないで犯罪をやるのでしょう。
社会正義とは、なんぞやっ!
ということで、本日は――
■Nothing But The Blues / Herb Ellis (Verve)
ハーブ・エリスはオスカー・ピーターソンのトリオでレギュラーを務めてから一躍名を売ったギタリストで、白人ながらブルースフィーリングに溢れた演奏が魅力の名手です。
ところで、この「ブルースフィーリング」という雰囲気がクセモノで、ハーブ・エリスの場合は黒人ブルースというよりはカントリーロックっぽいノリが強く感じられます。
というよりも、これは当時、ヒルビリーと呼ばれていたスタイルらしく、言わばルーツ・オブ・ロックンロールという味わいでしょうか。しかしハーブ・エリスは、そこへ絶妙のビバップフレーズを織り込んで弾きまくりですから、その演奏は立派なモダンジャズになっているのです。
このアルバムは、そんなハーブ・エリスの代表作として定評のある1枚♪ 録音は1957年10月11&12日、メンバーはハーブ・エリス(g)、ロイ・エルドリッジ(tp)、スタン・ゲッツ(ts)、レイ・ブラウン(b)、スタン・リーヴィ(ds) というオールスタアズで、タイトルどおり、ブルースに拘った演奏がたっぷりと楽しめます――
A-1 Pap's Blues
いきなりチョーキングを使ったハーブ・エリスのブルースイントロがニクイばかり♪ 続くテーマはシンプルなリフの繰り返しですが、こういうブルース進行にすうぅ~と惹き込まれてしまうのは、その場の雰囲気の素晴らしさというべきでしょうか。
アドリブパートに入っても、粘っこいリズム隊のグルーヴは冴えわたり、ハーブ・エリスはシブイながらも華麗なテクニックでフレーズを積み重ねますが、続くロイ・エルドリッチの泥臭いトランペットが、もう絶品です!
そして途中から絡んでアドリブに入っていくスタン・ゲッツが、これまた別角度の素晴らしさ♪ モダンでクールなブルースフィーリングというか、ほとんど黒っぽさが感じられないのに、ブルースというエモーションが強烈に発散されるのですからっ!
A-2 Big Red's Boogie Woogie
これもタイトルどおり、ルーツ・オブ・ロックンロールのブギウギ演奏♪ ハーブ・エリスのギターは完全にロカビリースタイルになっていますが、ドラムスとベースに4ビートのビバップ色が強いのでイヤミではありません。
ロイ・エルドリッチの力んだR&Bノリに対し、流麗でモダンなスタイルを貫くスタン・ゲッツには、心底ワクワクさせられますよ。
そして終盤のハーブ・エリスはチャック・ベリーっぽいフレーズの連発ですから、これも憎めません。もちろん十八番のチャカポコというギターのボディ叩きも楽しいです。
A-3 Tin Roof Blues
ジャズブルースの古典をモダンなスタイルに焼き直した演奏で、ロイ・エルドリッジがミュートで神妙に迫れば、スタン・ゲッツがブルーな心情をクールに表現した名演を聞かせてくれます。
そしてハーブ・エリスのジンワリした音色の魅力♪ レイ・ブラウンのベースがコッソリと凄いことをやっているも流石だと思います。こういうじっくりとしたジャズブルースは、実に良い雰囲気ですねっ♪
A-4 Soft Winds
ベニー・グッドマンが十八番にしていたブルースリフで、ジャズ史的にはチャーリー・クリスチャンというモダンジャズギターの開祖の演奏が聖典化していますから、これも興味深々の演目です。
しかしここではスタン・ゲッツが会心のアドリブ♪ まあ、この曲はモダンジャズでも頻繁に演じられますから、当たりまえだのクラッカーなんですが、続くハーブ・エリスの些か緊張感が強いソロパートと比べて、なんてリラックスした名演か! と溜息が出るほどです。
そしてロイ・エルドリッジのシンプルなアドリブのバックでは絶妙のコード伴奏とチャカポコリズムが、やっぱり楽しいのでした。
B-1 Royal Garden Blues
これもジャズの古典で、原曲にある楽しさ優先モードが大切にされた軽い演奏が最高♪ そのキモはロイ・エルドリッジのミュートとスタン・ゲッツの軽やかなテナーサックスでしょう。基本に忠実なアレンジも高得点♪
そしてハーブ・エリスの軽快なギターが存分に楽しめる展開から、ホーンリフを活かした合奏が痛快至極です。
B-2 Patti Cake
ハーブ・エリスが書いた楽しくファンキーな名曲で、スタン・リーヴィのモダンなグルーヴが、まず最高♪ 粘っこくて弾んだブラシ&ステック捌きは流石だと思います。
するとハーブ・エリスがチョーキングを多用したブルースリックを弾きまくりです。あぁ、こうしたノリって、ケニー・バレルあたりとは決定的に違うブルースフィーリングが濃厚で、別れても好きな人状態なのでした。
B-3 Blues For Janet
思いっきり粘ったジャズブルースの典型的な演奏で、黒っぽく、ゆるやかなグルーヴが噴出していきますが、決してドロドロではありません。むしろ白っぽい演奏かもしれず、それでいて魅力的なのは後年のブルースロックと同根の解釈ということでょうか……。
スタン・ゲッツはブルースというよりはハードバップに近い雰囲気ですし、ハーブ・エリスの伴奏は様式美に陥っているとか……。またロイ・エルドリッジにしても最初から諦めている感じがあって、個人的には違和感が払拭出来ません。
ちなみにセッションはハリウッドで行われていますが、これがニューヨークあたりだったら、どうなっていたか? ちょっと気になるところです。
B-4 Blues For Junior
オーラスは、これもブルースの様式美をなぞった雰囲気ですが、ミディアムテンポのグルーヴがなかなかイケてます。ただしアルバム全部を聴き通してくると、些かダレた雰囲気が……。
それでもハーブ・エリスの細かいフレーズの妙技は、やっぱり流石だと思います。
ということで、個人的にはB面終盤でテンションが下がってしまうのですが、アナログ盤は両面をブッ通して聴くことがそれほどないので、結果オーライなんでしょう。
しかしA面の充実度は最高で、特にド頭の「Pap's Blues」はロイ・エルドリッチが出色の好演もあり、アルバムの最初は一番良い演奏を入れるという王道の製作方針が黄金期の証となっています。
またスタン・ゲッツの参加は一瞬、ミスマッチかと思われますが、実際に聴いてみれば流石の名演ばかり♪ むしろクールでモダンなスタイルのテナーサックスが出てくることで、ハーブ・エリスやロイ・エルドリッチのドロ臭さやブルース衝動というものが、一層際立ったと思います。
些かの軽さもあるアルバムですが、これもモダンジャズであり、決してブルースのインスト作品とは一線を隔す名盤じゃないでしょうか。