OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

おもいっきり中毒盤

2008-04-13 16:56:38 | Weblog

今日は観桜会、つまり花見の宴会があって、またまた楽しいはずだったんですが、現代はケータイなんていう不粋な道具があって、やれやれです。もちろん仕事の云々なんですが……。

ということで、本日は――

Look Out! / Satnley Turrentine (Blue Note)

ジャズはアクの強い音楽ですから、感染症を引起こすことも度々です。どういう事から言うと、例えば誰かの演奏を聴いてシビレ、続けて関連する音源やアルバムを次々に聴かずにはいられないという中毒症状に陥るんですねぇ。これは皆様にも、きっと思い当たるフシがあるのでは?

で、私の場合はホレス・パーランという黒人ピアニストに中毒しています。それはもちろん「アス・スリー(Blue Note)」という畢生の名盤を聴いて以降の事で、その毒々しいまでに真っ黒なフィーリングには心底、降伏状態! 忽ち同じ味わいを求めて、ジャズの地獄を彷徨い続け、今日に至っているのです。

さて、このアルバムはまさにそうしたストライクゾーンにビシッときまった快演盤♪ メンバーはスタンリー・タレンタイン(ts)、ホレス・パーラン(p)、ジョージ・タッカー(b)、アル・ヘアウッド(ds) という、私的には前述したアス・スリー・トリオ+1というところで、録音されたのも1960年6月18日ということは、「アス・スリー」のセッションからほぼ2ヶ月後なんですから、たまりません。ちなみにスタンリー・タレンタインにとっては、ブルーノートでの初リーダー盤にあたります――

A-1 Look Out
 まずグゥィィィ~ン、ガッガァ~ンという、リズム隊が一丸となったグルーヴィなイントロのノリで完全KO状態! まさにアス・スリー・トリオが本領発揮です。
 ところが次に登場してテーマメロディをブローするスタンリー・タレンタインが、負けじと強烈な存在感なんですぇ~~♪ もうこの瞬間を聞いただけで、このアルバムは間違いないとシビレるはずです。
 もちろんアドリブパートも熱気溢れるファンキーハードバップの典型という素晴らしさで、力んでいないのに熱血なスタンリー・タレンタイン、ゴリゴリに押しまくるホレス・パーラン以下のリズム隊は黒人ジャズの真髄かもしれません。
 正直言うと、私はこのアルバムで初めてスタンリー・タレンタインを知ったのですが、これまた忽ち中毒症状に陥ったというわけですから、ついついアンプのボリュームを上げてしまいます。

A-2 Journey Into Melody
 あまり有名では無いスタンダード曲ですが、夜の雰囲気が満点のメロディをスタンリー・タレンタインはゆったりと吹奏してくれますから、これまた辛抱たまらんモード♪ 高級クラブのムードが横溢し、決して場末のキャバレーではないところに賛否両論はあろうかと思いますが、説得力は充分だと思います。
 なんと言うか、黒人だけのスウィートソウル、所謂“甘茶物”と一脈通ずるメロウなフィーリングは、後年のフュージョンっぽい演奏でも大きな魅力になっていましたが、すでにここで萌芽が♪
 リズム隊も極めて正統派なサポートで好感が持てますね。

A-3 Return Engagement
 と思った次の瞬間、またまた毒っ気の強い世界へ逆戻りです。
 曲は前述の「アス・スリー」でも演じられていたホレス・パーランのオリジナルですから、熱い演奏はお約束! スピード感満点のバンドの勢いはどうにも止まらないという山本リンダ現象です。
 スタンリー・タレンタインのモロにタフテナーのスタイルは、しかし同時に独特の歌心が確かにあって、なかなか魅力的♪ ハードな中にもソフトな情感が滲むという素晴らしいさは、これぞ黒人だけのお洒落感覚かもしれません。
 そしてリズム隊ではジョージ・タッカーの4ビートウォーキングが激烈ならば、アル・ヘアウッドはシャープなシンバルワーク、そしてホレス・パーランは得意技のガンガン節で突進です。

B-1 Little Sheri
 スタンリー・タレンタインが書いたマイナー調の名曲で、日活アクションの歌謡曲という趣も滲んだ、私の大好きな演奏です。ミディアムテンポのテーマ吹奏はたっぷりとしたテナーサックスの響きがとても魅力的♪ そしてアドリブ前のブレイクでは、一瞬のヒステリックな泣き叫びから、再びグッと落ち着いたフレーズを綴っていくという展開がニクイばかりで、グイノリのリズム隊も良い感じです。
 あぁ、それにしてもこんなに素敵な曲とアドリブフレーズの繋がりの良さは、今日のジャズではほとんど楽しめなくなりましたですね。まさにモダンジャズ黄金期の証のような、というよりも大衆音楽の王道が楽しめると思います。
 ホレス・パーランは、もちろんファンキーでストンピングしたピアノで、もう最高です!
 
B-2 Tiny Capers
 クリフォード・ブラウン(tp) が西海岸派の白人ジャズメンと演奏した珠玉の聖典が残されているオリジナル曲ですから、ここでもテーマ部分はライト感覚で、前曲に比べると一気に爽やかな風が吹いてきます。
 ところがアドリブが始ると、アップテンポの演奏がグングンと熱くなっていくのです。ハードな音色でまろやかに歌うスタンリー・タレンタイン、ツッコミの烈しいリズム隊、ともに好演! 演奏時間の短さが残念なほどです。

B-3 Minor Chant
 これまたマイナー調で書かれたスタンリー・タレンタインが珠玉の名曲♪ ジミー・スミスのリーダー盤「バック・アット・ザ・チキンシャック(Blue Note)」でも演じられていますが、リズム隊のアクが強いこちらのバージョンには、より一層、エグミがあります。
 まずスタンリー・タレンタインのテーマ吹奏が力んだ雰囲気ですし、アドリブに入ってもエッジの鋭いフレーズが連発されています。もちろんホレス・パーランも熱いですねぇ~! リズム隊の一体感もイヤミなく、存分にゴスペルフィーリングを撒き散らすのでした。
 あぁ、何度聴いても、グッとシビレます♪

ということで、前半はリズム隊にリードされていた雰囲気のスタンリー・タレンタインが、後半になると強烈な自己主張に転じていくという、演目の流れも最高です。

個人的には圧倒的にB面を愛聴していますが、アルバム全篇を通して聴かずにはいられない衝動に突き上げられてしまいます。あぁ、それこそが中毒症状、そのものですねっ♪

まずはB面を聴いてみて下さいませ。

個人的にはホレス・パーランからスタンリー・タレンタインへと中毒が感染してしまった、文字通りの病みつき盤なのでした。

コメント
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