あぁ、最近はというか、今年に入ってからの私には、ロクなことがありません。これも日頃の行いが悪い所為なんでしょうねぇ……。
と反省してみても、どうもそれが神様にはヘタな芝居と見透かされているようです。
ということで、本日は――
■Root Down Jimmy Smith Live 拡大版 (Verve)
オリジナルは1972年にMGMを通して発売された1枚物のアナログ盤LPでしたが、その白熱したライブ演奏の充実度に反して、無残無理解な編集が施されていたため、ジャズ喫茶では困り者の存在であり、フュージョン時代にも無視されていた作品です。
ところが前世紀末に復刻CD化された時にはノーカット編集が基本となり、さらに未発表演奏までもが追加されたことで、ようやく当時のイケイケファンキー路線を押し進めていたジミー・スミスの凄さが、ストレートに楽しめるようになりました。
録音は1972年2月のロス、メンバーはジミー・スミス(org)、アーサー・アダムス(g)、ウェルトン・フェルダー(el-b)、ポール・ハンフリー(ds)、バック・クラーク(per)、スティーヴ・ウィリアムス(hca) という心底黒いグルーヴィな面々です――
01 Sagg Shootin' His Arrow (unedited performance)
いきなりポール・ハンフリーがイケイケのドラミング、そしてウェルトン・フェルダーのファンクなエレキベースとアーサー・アダムスのワウワウなリズムギターが最高の露払いとなって、ジミー・スミスのオルガンが呻くという本当にたまらないオープニングです。
アドリブの先発はアーサー・アダムスのニューソウルなギターソロですが、バックで炸裂するポール・ハンフリーのシャープなドラミングは最高! ちなみにこの人は西海岸を中心に活躍するスタジオ系のドラマーですが、ファンクビートも4ビートも両方上手いという達人で、この曲でも絶妙の4ビートを混ぜ込んでバンドを鋭く煽っています。
ですからウェルトン・フェルダーもうねりまくって、強烈なグルーヴを生み出せば、ジミー・スミスは刺激的なカウンターコードで応戦し、アドリブパートではもちろん強烈な天国と地獄を披露しています。特に4ビートのパートでは本領発揮なんですが、16ビートの伴奏も強い印象を残していますねぇ~。
そのミソはやっぱりエレキベースの加入だと思います。つまり当時の流行から16ビートの演奏に深入りすれば、これまでのオルガンフットペダルの低音表現では、流石のジミー・スミスですら無理も出てきていたはずですから、ここは堂々とエレキベースを入れて大正解という演奏を聞かせているのでした。
終盤のドロドロした展開には、絶句です!
02 For Everone Under The Sun
メロウな歌物のファンク的な展開で、けっこう泣きが入った演奏がたまりません♪ もちろんここでもポール・ハンフリーとウェルトン・フェルだーのリズムコンビは最強のグルーヴを演出し、アーサー・アダムスのギターソロは我国のニューミュージックに大きな影響を与えることになる名演です。
そしてジミー・スミスは終始、オルガンの魅力を堪能させてくれる、これもツボを外さない名演だと思います。とにかく歌心、メロディを大切にしがらも、決して黒いフィーリングを失わない心意気♪
本当に心に滲みてくる気持ち良さ♪ 最高ですねっ♪
03 After Hours
これはモダンジャズでもお馴染みのブルース曲、というかモダンジャズにも応用されているブルースインストですから、素直にジミー・スミスの魔法のようなオルガンを堪能出来ます。
それは粘っこく、ストレートな黒っぽさとケレンが大きな魅力♪ この曲だけにゲスト参加しているスティーヴ・ウイリアムスのハーモニカも雰囲気を盛り上げています。
もちろんリズム隊の重心の低い伴奏も素晴らしく、アーサー・アダムスのギターも歌いまくり♪ ちなみにこの人も西海岸のファンク租界では名人のひとりですが、同時に元祖AORというリーダー盤を幾枚か出している隠れ人気者ですから、要注意です。
お客さんのイェ~の掛声も、全く共感の演奏ですよ♪
04 Root Down (unedited performance)
ウェルトン・フェルダーの蠢くエレキベースからビシバシにカッコ良いポール・ハンフリーのファンキードラム、そしてワウワウなアーサー・アダムスという、お約束の導入部からジミー・スミスのオルガンが鳴り出せば、もうあたりはジャズファンクがいっぱいです。
そしてここでもアーサー・アダムスが良い味出しまくり♪ バック・クラークのパーカッションも効いていますし、こういう粘っこい演奏はフュージョン期には自然消滅していきますから、この時期だけの味わいとして存分に楽しみたいところです。
ちなみにウェルトン・フェルダーはクルセダーズの一員としてサックスを吹くことが多いのですが、スタジオセッション等ではエレキベース奏者としても活躍していましたから、ここでの名演もムベなるかな♪ 安定感があって、私は大好きです。
もちろんジミー・スミスはブルース魂が満点の名人芸ですが、ここではボール・ハンフリーのドラミングを筆頭に、共演者が凄すぎますねっ!
05 Let's Stay Together
メンフィスソウルの大物歌手=アル・グリーンの代表曲で、ディープで優しいメロディが最高のヒット曲を、このメンツで演奏してくれるのですから、たまりません♪
もうジンワリと心に染入るテーマメロディが出た瞬間、イェ~~、と歓声が飛び交うのも無理からんところ♪ あぁ、このメロウファンクな雰囲気こそが、1970年代前半の空気かもしれません。
ジミー・スミスのオルガンは狂おしいばかりに泣き、グルーヴィなバックの演奏が、これまたエクスタシーを呼ぶのですねぇ~♪ アーサー・アダムスのギターソロと伴奏が、些かラフなところも逆に効果的で、狙ったんでしょうか。だとしたら裏ワザというところですね。
06 Slow Down Sagg (unedited performance)
ド頭で演奏された「Sagg Shootin' His Arrow」のアップテンポバージョンという趣で、熱血ファンクが展開されています。いゃ~、気分は最高ですねぇ~♪ 聴いていて思わず一緒にリズムギターを弾いてしまうのが私です。エアギターでもいいんじゃないでしょうか。
実際、アーサー・アダムスの熱演は物凄く、ワウワウチャカポコが良い感じ! ジミー・スミスもド派手なフレーズを多用してストレートな分かり易さに撤していますし、ポール・ハンフリーのドラミングなんか手がつけられないほどです。
あぁ、本当に熱くなります!
07 Root Down (alternative / unedited performance)
トラック「04」の別テイクですが、これも負けずに真っ黒な演奏です。まあ、このあたりになると、アルバム編集にはどのテイクを選んでもOKという充実度なんでしょうか。ここで公にされたことを素直に喜ぶ私ではありますが♪
う~ん、それにしても気持ちの良いシンコペーション、キメのリズムがビシバシに決まっていますねぇ~♪ 身体が揺れっ放しなのでした。
ということで、リマスターによって音質も向上していますから、このCDを聴いたらオリジナルアルバムは完全に物足りないと感じます。
しかしジミー・スミスは、何故かこの路線からフェードアウトして、中途半端に正統派なジャズに回帰してみたり、はたまたシンセを大胆に導入した大袈裟フュージョンを演じてみたりして、この後はしばらく精彩を欠いてしまったようです。
それでも1980年代からは往年のブルーノート時代のような、真っ黒な4ビート物に専念してみせるのですが、私的にはここで聴かれたようなソウルファンクな演奏が一番好きなのでした。
あまり一般向きの作品ではありませんが、一度は聴いていただきたいと思います。
コメントありがとうございます。
いや、本当に、これですよ!
ジミー・スミスには、この路線で突き進んで欲しかったです。
シャーリー・スコットとかも、似たことをやっていましたが、失礼ながら、やっぱりジミー・スミスには敵いませんでしたからねぇ。