OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

これがドアーズのうつし世は夢

2011-02-09 16:38:45 | Rock

まぼろしの世界 / ドアーズ (DVD)

昨年公開された、ドアーズにとっては初の公式ドキュメント映画のDVD版です。

なんでも各方面で絶賛されたらしく、我国でも短期間だけ劇場公開されたそれを鑑賞した友人の話によれば、なかなかリアルタイムに惹き込まれる仕上がりという事でしたので、ちょいとは期待していたサイケおやじの天の邪鬼はウズウズしていました。

そしてDVDながら、ようやく鑑賞を終えた時、やはりドアーズという存在の曖昧な強烈さにはKOされましたですねぇ~~。

ご存じのとおり、ドアーズといえばジム・モリソン(vo) ばかりがスタアのバンドというのが、今日までも一般的な認識でしょうが、ファンにとってはロビー・クリーガー(g)、レイ・マンザレイク(key,vo)、ジョン・デンズモア(ds.per) が揃ってこそのドアーズ!

ですからジム・モリソンが急逝した1971年7月以降もドアーズ名義の作品を出し続け、また近年では往年の未発表ライプ音源やスタジオアウトテイク、さらにはリミックスバージョン等々を執拗に売るという、ある意味では顰蹙すれすれの活動が???です。

しかし結局、サイケおやじのようなファンは、その度にお金を使わされてしまいますし、それなりの満足感を与えてもらうのですから、このドキュメントフィルムにしても、期待しないほうが不思議というものです。

なんと言っても、全てが当時の映像だけで構成されているという前宣伝も効果絶大!?!

そこでいよいよ鑑賞してみると、まずはトム・ディチロ監督の脚本と構成が本当に絶妙で、しかもジム・モリソンが生前に撮っていた未完成映画「ハイウェイ」の映像を狂言回し的に使い、そこにリアルタイムでのライプやスタジオにおけるドアーズの演奏場面、そして日常の記録フィルムをミックスさせるという手法が実に生々しくて、秀逸です。

些かネタバレになりますが、ジム・モリソンの訃報を知らせるニュースを本人が知るというケレンがイヤミ寸前の演出です。

あぁ、こういう使い古された遣り口を堂々とやって許されるのは、ドアーズが本当に時代の寵児だった事実の裏返しだからでしょうか……。

まあ、それはそれとして、全篇に堪能出来るドアーズというバンドのギスギスした存在感は、スタジオセッション時の不穏な人間関係やメンバー各々の成功と未来への不安をも描き出し、加えてライプの現場での狂騒や様々な事件の真相にも迫っていくポイントが、これでもかと提出されます。

例えば人気絶頂時からジム・モリソンが悪いクスリや酒に溺れ、それゆえにライプステージではメロメロで意味不明の「語り」だけを続ける時、演奏担当の3人が即興で衝撃的な効果音やアドリブ、さらにキメのリフをやっているという真相が暴露されたのは、その証拠映像が実際に観られるだけに衝撃度も高いと思います。

もちろん客席のファンは「ハートに火をつけて」を常に求め、それをリクエストする大合唱があったり、サービス精神が旺盛なジム・モリソンが、それを逆手に利用するといった、まさにトリックスタアっぽい行動が賛否両論になったのは言わずもがなでしょう。

例の「マイアミ事件」を筆頭にした多くのトラブルは、全てがそこに起因するというバンドメンバーの証言も意味深です。

つまり、これは個人的な感想ではありますが、今も現役のドアーズである3人が、自分達だけ良い者になろうとしている印象が強いところもあるんですねぇ……。

例えば最初はメンバー全員が浸り込んでいたドラッグについても、途中からジム・モリソンだけが抜けられず、自分達3人はクリーンな生活に目覚めたというあたりの信憑性とかは、どうなんでしょうか? それはそれで当たり前の事ではありますが、決して良いとは言えない道を歩んでいるジム・モリソンを諌める行動をしなかったのは、例えそれがジム・モリソンの自由だったとしても、ちょいと後味が悪いと思うばかりです。

ただし、そんな諸々も含めて、やっぱりこのドキュメントフィルムは強烈!

使われた映像のリアルなエグ味を損傷しない編集も流石ですし、1960年代後半~1970年代初頭という、ロックが最も熱かった時期を凝縮するには、ドアーズしかないという確信が強く表出されています。

ちなみにドアース関連の映画には、オリバー・ストーンが監督した1991年公開の「ドアーズ」という伝記映画あり、また1980年に日本で公開されたフランシス・コッポラ監督の「地獄の黙示録」では、ドアーズの「The End」が使われたという有名過ぎる過去もありますが、その何れとも異なるのが、この「まぼろしの世界」です。

実に濃厚な本篇85分!

せひともご堪能下さいませ。

コメント (2)
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