OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

イエスの超絶ライブ盤

2011-02-27 15:24:55 | Rock Jazz

Yes Songs / Yes (Atlantic)

洗練された様式美!

そうしたイエスの音楽性を支えているのは、メンバー各人の超絶的なテクニックであることは言うまでもありませんが、しかしそれでもスタジオで作られた作品群を聴けば、そこには音源編集やオーバーダビングの多用が明白でした。

しかも最初の黄金期とされる1970年代前半にやっていた楽曲は、従来の曲メロ~間奏アドリブ~曲メロという構成ではなく、最初から忽せに出来ない骨組みがあり、それを複雑なアンサンブルや基本のメロディで彩る方法論の中にアドリブパートをも組み込むという、実に恐ろしい目論見が追及されていたのですから、これを観客を前にしての実演ライプで、レコードどおりに再現するのは、それを発展させる事も含めて、現実的に不可能だろうというのがリアルタイムの思い込みでした。

ところが実際は、それが出来ていたんですねぇ~、イエスには!

そして1973年に世に出た本日ご紹介のアルバムこそ、その最初の証明となった驚愕のアナログ盤3枚組LPです。

 A-1 Opening (excerpts from Firebird Suite) / 「火の鳥」から抜粋
 A-2 Siberian Khatru
 A-3 Heart Of The Sunrise / 燃える朝やけ
 B-1 Perpetual Change
 B-2 And You And I / 同志
 C-1 Mood For A Day
 C-2 Excerpts From“The Six Wives Of Henry Ⅷ”/ ヘンリー八世の6人の妻
 C-3 Roundabout
 D-1 I've Seen All Good People
 D-2 Long Distance Runaround ~ The Fish
 E-1 Close To The Edge / 危機
 F-1 Your's Is No Disgrace
 F-2 Starship Trooper

既に述べたように、これはイエスの最初の黄金期とされる1971~1972年という、あまりにも短かった時代の記録ですから、上記演目もその間に制作発表された「サード・アルバム」「こわれもの」「危機」という3枚のアルバムから採られています。

しかし既に演奏メンバーは流動し、ジョン・アンダーソン(vo,per)、スティーヴ・ハウ(g,vo)、リック・ウェィクマン(key)、クリス・スクワイア(b,vo) に変動は無いものの、ビル・ブラッフォード(ds,per,vib) がアルバム「危機」の制作セッション完成直後に脱退してしまったので、この1972年に録音された音源の大部分にはアラン・ホワイト(ds,per) が急遽参加!

それでも全く揺るぎない演奏をやってしまうところに、イエスの真骨頂が痛感出来るという、これぞっ、逆もまた真なり! もちろん、それは既にセッションミュージシャンとして場数を踏んでいたアラン・ホワイトの物凄い力量があっての成果ですし、実際、イエスから突然の参加要請があって後、僅かの間に複雑怪奇(?)なバンドのライプ演目を覚えたというは奇蹟だと思いますが、そこに妥協を許さないグループの厳しい姿勢こそが、このアルハムを発表出来たポイントでしょう。

ちなみにそんな経緯もあり、ここでは「Perpetual Change」と「Long Distance Runaround ~ The Fish」の2曲でビル・ブラッフォード在籍時の音源も聴けるのが興味深いところです。

そこで肝心の内容ですが、まず初っ端がストラヴィンスキーの組曲「火の鳥」からの抜粋という事で、これはテープによるオーケストラ演奏の最終部分にバンドとしてのイエスがライプで加わり、そのまんま「Siberian Khatru」へ突入するという仕掛なんですが、観客からの期待のざわめきやイエスのメンバーが登場した時の拍手歓声等々が雰囲気満点に録られているのは結果オーライ♪♪~♪

ですから後は怒涛の超絶演奏が展開され、特に「Perpetual Change」は、何時の間にか天空に飛翔して燃え上がるスティーヴ・ハウのギターソロ、極めて自然発生的に炸裂するビル・ブラッフォードのドラムソロも含め、まさに圧巻!

しかし後任のアラン・ホワイトの奮闘も素晴らしく、そのタイトなドラミングはジャストでドライヴするクリス・スクワイアのベースワークと相性も良く、完璧さを求められるアンサンブルが必須というイエスの音楽性を決して壊していません。

またライプならではの楽しみというか、「ヘンリー八世の6人の妻」はリック・ウェイクマンの人気ソロアルバムからのサービスであり、そこから引き続いて始まる「RoundAbout」のヒット性感度の高さも侮れません。

こういうファンの気持を大切にするところが、プログレという頭でっかちに陥り易いジャンルで絶大な人気を集めたイエスの信条じゃないでしょうか。

ですからギリギリの緊張感が音楽的な快楽へと変換されていく後半は、例えばサイケおやじがリアルタイムで諦めの境地に追い込まれたスタジオバージョンの「危機」にしても、このライプバージョンでは、意外と素直に楽しめるんですよねぇ~♪

もちろん既に述べたように、レコードと生演奏の差異は無いに等しいのですから、これこそ不思議なイエスの魔法!?!

と同時に、スタジオバージョンとは似て非なるライプ用のアレンジや自然に置かれたアドリブパートも実は相当にあって、このあたりはスタジオバージョンに馴染んでいればこその楽しみが、ちゃ~んと仕込まれているんですねぇ~♪

そして全篇をリードし、纏め上げるジョン・アンダーソンのボーカルとバックコーラスの存在感の強さも流石だと思います。

あぁ、イエスは恐るべし!!

まさにプログレとイエスの蜜月を堪能出来るベスト盤でもあり、プログレというジャンルがリアルタイムでどのように成立し、受け入れられていたかを検証出来る最高のドキュメントでもあるわけですが、ちょうどこの3枚組アルバムが発売される直前の昭和48(1973)年春、イエスは待望の初来日を果たし、絶賛の嵐を巻き起こしています。

そして追い撃ちの如く登場した大作ライプ盤によって、イエス黄金期の伝説は確立されたのですが……。

個人的には、もっと暴れていると思ったクリス・スクワイアのペースが、そのショウケース的な即興パートの「The Fish」も含めて、以外にも基本に忠実というか、堅実さと調整能力の高さを示しているのは予想外でした。

その意味で安定感抜群のドラミングで忽ちイエスに馴染んだアラン・ホワイトとのコンビは、スリルとサスペンスが不足している気も致しますが、既に煮詰まりが表面化しつつあったプログレが、新たな段階へ進む方向性を提示していると感じます。

ご存じのとおり、イエスは次作アルバムで2枚組ながら4曲しか入っていない「海洋地形学の物語」を発表し、さらにはフュージョンど真ん中の人気盤「リレイヤー」を出すという進化を遂げた後、ついには些か長いお休みに入ったのですからっ!

結局、イエスの凄いところは、充実して完成度の高いスタジオ録音の作品群を出しつつ、活発なライプ活動も並行してやっていた事に尽きるのではないでしょうか。

つまりライプの現場で再現出来ないような演奏は作らないという主義が徹底しています。

そして、そう思って過去のアルバムを再鑑賞するという楽しみも、このライプ盤は与えてくれたのでした。

願わくば所謂アーカイヴ音源として、この第一期黄金時代のライプが蔵出しされますようにっ! これは全てのイエスファン、共通の祈りだと思います。

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