OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

まだまだ硬派だったシカゴの1972年

2011-02-04 16:40:17 | Rock

Chicago Ⅴ (Columbia)

これは十代だったサイケおやじが、リアルタイムで最初に買ったシカゴのアルバムです。

なにしろタイトルどおり、通算5作目にして、ようやく出た1枚物のLPということで、それまでの2&4枚組という高値地獄からの解放があり、さらに我国でも安い輸入盤が普通に手に入る状況が出来つつありましたから、この新譜が当たり前のような顔をしてバーゲンセールに並んでいた昭和47(1972)年、喜び勇んでゲットしたというわけです。

 A-1 A Hit By Varese / ヴァレーズに捧げる歌
 A-2 All Is Free / 今は自由さ
 A-3 Now That You've Gone / お前が去って
 A-4 Dialogue part-1
 A-5 Dialogue part-2
 B-1 While The City Sleeps / 街が眠りについて
 B-2 Saturday In The Park
 B-3 State Of The Union / 俺たちのアメリカ
 B-4 Goodbye
 B-5 Alma Mater / 俺達の見た未来

収録された上記演目は、やはり1枚物アルバムということで、それまでの諸作に比べるとコンパクトに纏められた意図が曲毎に感じられますが、しかしテンションが落ちているなんてことは絶対にありません。

メンバーもロバート・ラム(p,key,vo)、テリー・キャス(g,vo)、ピーター・セテラ(b,vo)、ダニー・セラフィン(ds)、リー・ロックネイン(tp)、ジェームズ・パンコウ(tb)、ウォルター・バラゼイダー(sax,fl) というデビュー時からの不動の7人が、各々に自己主張を声高にしつつも、上昇期のバンドらしい結束力はますます強固!

それは各トラック、聴けば納得の仕上がりに顕著で、まずはA面ド頭の「ヴァレーズに捧げる歌」からして、強烈なロックジャズとニューソウルの幸せな結婚というか、唸るギターにドライヴしまくったベース、不穏なコードを提供するキーボードに呼応するが如きホーンセクションの咆哮が実に熱いです。そして当然ながら、如何にも「らしい」リフの間隙を縫うように展開されるメンバー各自のアドリブ合戦が混濁した状況を作り出していく中で、ビシッとタイトに全体を纏めながら、それを煽っていくドラムスの痛快さは、本当にたまりません。もちろんボーカル&コーラスも気合いが入っていますよ。

あぁ、これこそ当時のサイケおやじが一番望んでいた歌と演奏の形態だったんですねぇ~李♪ もう、レコードに針を落した瞬間から、歓喜悶絶の金縛り状態でしたよ♪♪~♪ まさにファンキーロックのプログレ的展開!?!

ところが続く「今は自由さ」は一転、後のAOR路線を想起させる爽やかなソフトロック調なんですから、その落差には???な気分になることが必定とはいえ、演奏が進むにつれ、シカゴ特有のリフを活かしたブラスの合奏パートやリズム隊の些か鈍重なノリが良い感じ♪♪~♪ つまりポップな感覚を本格的なロックに融合させんとする意気込みが良くでた習作なのかもしれません。

ですから忽然として土人の太鼓が炸裂し、そんなポリリズムに導かれてスタートする「お前が去って」が、テリー・キャスの強引なリードボーカルと溌剌とした明るいコーラスの対比で組み立てられている深淵な企みも憎めません。

そしてそれが最高に成功したのが、このアルバムのひとつのクライマックスともなっている「Dialogue part-1 & 2」でしょう。

軽快なギターのコードカッティングに導かれ、テリー・キャスが過激派学生の主張を演じれば、ピーター・セテラがノンポリ派の立場で対抗するという歌の展開がヘヴィでウキウキするようなロックビートに煽られ、と同時に場面毎でジャストミートするホーンリフや熱血のギターソロが炸裂するんですから、本当に練り上げられた名曲名演だと思います。

もちろん長尺のトラックを手際良く編集したシングルバージョンがヒットした事は言うまでもありませんが、やはりこのアルバムバージョンの暑苦しいばかりの勢いは圧巻! 最後のコーラスパートがソウルフルに変質していくあたりは、如何にも狙い過ぎかもしれませんが、サイケおやじは好きです。

こうしてレコードをB面にひっくり返せば、暴風のようなSEから疑似4ビートのシンバルが鳴り出し、アッという間に重心の低いヘヴィなブラスロックが始まるという「街が眠りについて」が、叫びたいほどにツボです! 意図的に乱れ気味のコーラスとテリー・キャスの性格の悪いギターソロは絶妙のコラポレーションだと思いますし、それが終盤に至り、見事に完成されていく構成も憎たらしいですねぇ~♪

さらにお待たせしましたっ! シングルカットされ、デビュー以来最高の大ヒットになった「Saturday In The Park」の浮き立つようなピアノのイントロからキャッチーなメロディが流れてくれば、あたりは幸せなシカゴ色でいっぱい♪♪~♪ 前曲の不穏なムードが完全に一変させられるわけですが、歌詞の中身はアメリカ独立記念日の長閑な風景を綴っているんですから、例えそれが逆説的な目論見だとしても、政治的過激さをウリにしていた初期の姿勢から体制側に寝返ったが如き誤解を招きかねないことは……。

まあ、こういう部分がシカゴを人気バンドにしていった要因のひとつかもしれませんし、以降に発表されていく諸作品が順を追うごとにポップス風味へと傾斜していく分岐点が、ここにあるのかもしれません。

ただしサイケおやじは、この曲調が大好きなんですよ♪♪~♪

そして次なるファンキーなブラスロックの「俺たちのアメリカ」が鳴り出せば、それだけで納得させられる流れの良さが、シカゴのアルバム特有の魅力だと思う他はありません。些か物足りないアドリブパートの隙間風も、それゆえに狙ったものかもしれませんし、相変わらずカッコ良いホーンリフやリズム隊の弾み方、さらにはバックで終始ウネル続けるギターソロには血が騒ぐばかり!

さらに変則4ビートを使いながらジャズっぽさをモロに出した「Goodbye」からシンプルにして厳かな「俺達の見た未来」へと続く流れは、ロックも完全にアルバムで聴く時代に入ったことを証明するものだと思います。

つまり、これはCDで楽しめば尚更にはっきりするはずですが、リアルタイムではアナログ盤LPという長時間のメディアを有効に使おうとする意思をデビュー当時から強固に保ち続けたシカゴというバンドの、これはひとつの集大成とも言える完結の名場面でしょう。

既に述べたように、また皆様が良くご存じのとおり、以降のシカゴはロックバンドとしての体面を保ちつつ、人気ポップスグループとしての顔を強めていったわけですから、実はサイケおやじにしても、このアルバムあたりが熱中して聴けるか否かの分岐点になっています。

しかし素直に熱中したアルバムだったことは間違いなく、ということで、やはりロックの名盤としての評価は疑うことも出来ないでしょう。

こうしたスタイルが今日、新しいファンを速攻で獲得するとは思いませんが、機会があれば、一度は楽しまれんことを熱望しております。

最後になりましたが、全体のミックスとしてはギターが引っ込み、ベースが前に出た雰囲気が濃厚という、なかなかライプっぽい音作りが新機軸だったかもしれません。それも「時代の音」ということなんでしょうねぇ……。

コメント
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