■メリー・ジェーン / つのだ★ひろ (日本フォノグラム)
今や日本のスタンダードロックとなった、所謂「泣きのスローパラード」ですが、それは全篇が英語詞で歌われるというのが、なかなかでした。
というのも、これが世に出た1971年には、ロックは英語が本道!?!
つまり、日本語のロックは邪道!?!
な~んていう、今となっては曖昧な議論が真剣にあった中でのヒットでしたから。
ご存じのように、つのだ★ひろは十代の頃から天才ドラマーとしてプロ活動をスタートさせ、モダンジャズでは渡辺貞夫のレギュラーカルテットのメンバーとなって海外でのツアーにも参加したり、あるいはジャックスやミカバンド等々で日本のロックを作る助っ人もやっていたわけですが、やっぱりこの「メリー・ジェーン」のイメージが強いのは否めません。
確か初出は昭和46(1971)年、つのだ★ひろが元フィンガーズの成毛滋と組んでいたストロベリー・パスというバンド名義のアルバム「大鳥が地球にやってきた日」に収録されていたんですが、リアルタイムではそれほどの評価もなかったと思いますし、アルバムそのものも売れなかったと記憶しています。
ただし先輩から聞かせてもらったその内容は、ハードロックからプログレ、フュージョン系のインスト等々も含んだ幕の内弁当のようなバラエティ盤で、それゆえにイマイチ、私にはピンッとこなかったという……。
それが同年の秋の終り頃から、何故か「つのだ★ひろ」名義のシングル盤となって、ラジオの深夜放送から人気を呼び、ジワジワと売れていったのです。
なにしろ曲メロが抜群に良いですからねぇ~♪ 間奏のギターも泣いていますし、地味~なペースや如何にものドラムスにビートの芯があり、さらに作り物っぽいストリングやコーラスも胸キュンフィーリングを増幅させるのですが、なによりもフィリーソウルなつのだ★ひろの歌いっぷりが琴線に触れまくり♪♪~♪
ちなみに作曲はもちろん本人ですが、作詞の Christopher Lyn とは、これまた元フィンガーズの蓮見不二男で、アレンジが成毛滋になっていますから、まさにニューロック歌謡ですよねぇ~♪
そして既に述べたように、今日までロングセラーの名曲名唱になっているわけですが、その秘密のひとつが、1970年代の我国のゴーゴー喫茶やディスコでは、チークタイムの定番になっていたからでしょう。実際、本当に良いムードが広がるんですよね♪♪~♪
で、ちょっと余談になるんですが、学生時代の私が入れてもらっていたバンドが、夏休みのバイトで仲間のひとりの実家が経営していた地方の海浜ホテルで演奏出来たという思い出があります。それは10日間、昼夜2回の演奏をやって、後は海の幸がどっさりの食事と遊び時間がいっぱいという、大変に美味しい話だったんですが、実際にはビアガーデンの掃除もやらされたし、酔っ払いに物を投げつけられたりして、現実の厳しさを思い知らされました。しかし、それでも夜の部でやっていた、この「メリー・ジェーン」はウケましたですね。
もちろん演奏は相当にトホホだったんですが、それでも良い雰囲気をなんとか醸し出せたような自己満足の気分になったのは、曲の魅力というところだと感謝しています。
ということで、誰しも一度は耳にする名曲として、これからも様々な思い出と共に生き続けるんじゃないでしょうか。
最後になりましたが、「つのだ★ひろ」は何時の頃からか「つのだ☆ひろ」になったようですね。でも、このシングル盤を出していた当時は「★」でした。
また曲そのものにも幾つかのバージョンがあって、まず前述したアルバム「大鳥が地球にやってきた日」には当然ながらフルバージョン、そして掲載したシングル盤には部分的に編集されたショートバージョンが収められているんですが、実はその間には最初に出されたジャケット違いの初版シングル盤があり、これまたミックスや編集ポイントが微妙に異なる別パージョンが入っているという未確認情報があります。
というか、その初回シングル盤にしても、この再発シングル盤同様のバージョンが使われているという事実も確かににありますので、う~ん……。
そして現在ではアルバムバージョンに統一されてしまったようですねぇ。
まあ、それはそれとして、これも立派な日本のロック!
最初に目をつけたのはフィリピンバンドだったという説もありますが、当時から大抵のハコバンがやっていましたし、後年にはブラターズにもカパーされ、国内はもちろん、外国向けのカラオケも作られているんですから、もう永遠のスタンダードなんでしょうね。