■心のひとみ / Small Faces (Decca / キングレコード)
1960年代の中頃、ロンドンで一番にファッションセンスが良かったとされるバンドがスモール・フェイセスだったと言われています。
で、本日ご紹介のシングル盤は、そのジャケットスリーヴの写真からも、そのあたりをウリにしていたことがミエミエなんですが、野暮天のサイケおやじには、どうも……。
しかし、A面に収録された「心のひとみ / My Mind's Eye」には、ノー文句でシビレましたですね。
極言すれば、ストーンズの「Tell Me」をザ・バーズが作り返したような、実にフォークロックで黒っぽい歌と演奏は、スモール・フェイセスがやってこそのオリジナリティが濃厚に楽しめます。エグ味の強いギターと重いビート、時にファルセットも使うコーラスワークと一抹の哀愁を秘めたリードボーカルのバランスの良さ♪♪~♪
恐らく彼等にとっては6枚目のシングル曲だろうと思うのですが、裏事情としてはデビュー期からのデッカレコードを去り、新興のイミディエイトに移籍するゴタゴタが真っ最中に、なんとバンド側の了解を得ずに発売されたという因縁の1枚!
その理由は最初っからアイドル扱いで売り出されたスモール・フェイセスが、本来の音楽性を理解してもらえなかった事もありますが、もうひとつ、契約上の不備からギャラや印税が入ってこないという理不尽もあったようです。
ただし普段着も含めての衣装は好き放題に買えたそうですし、それゆえに何時もカッコ良すぎるファッションでキメていたのは、当時のモッズ族と呼ばれた流行の最先端組の支持を大きく集めていたそうですから、結果オーライだったと思います。
当然ながら、スモール・フェイセスのレコードを買うファンはモッズ族が中心だったのです。
そしてイミディエイトと契約して以降は、それがサイケデリックの流行と歩調を合わせるように、些かの凝り過ぎも感じさせるようなものに変質していくのですから、賛否両論でしょう。
個人的にはスモール・フェイセスは非常に好きなバンドで、特にR&B色が強くてフォークロックの色彩も感じられる「心のひとみ」は愛聴曲のひとつです。
ちなみに以前ご紹介したアルバム「オータム・ストーン」に収録のバージョンと、このシングル盤収録のテイクは微妙にミックスが異なりますし、フランスで発売されたEPバージョンは完全なる別テイクですから、要注意だと思います。
おそらくは人気絶頂だった頃のスモール・フェイセスが、そのファッションセンス共々に楽しめるシングルとして、機会があればお楽しみ下さいませ。