■The Beatles At The Hollywood Bowl (Capitol / Parlophone)
いよいよ今秋、ビートルズのリマスター版CDが出ますねっ!
もちろんCDは、これまでも出ていたわけですが、時代の流れから音質等々の改善が求められるのは当然が必然ですから、やっぱりビートルズの曲は分かっていても楽しみが尽きません。
こうした企画は、あの賛否両論が渦巻いたアンソロジープロジェクトやアメリカ盤仕様アルバムのCD復刻、またネイキッド騒動等々、その度に喜怒哀楽が伴いました。
しかしここまで来ても、未だにCD化されていない幻のアルバムが本日ご紹介の、ビートルズにとっては唯一の公式完全ライブ盤です。
ご存じのとおり、ビートルズは1963年の大ブレイク以降、そのライブステージはファンの狂騒と歓声に支配され、当時のロクな設備も整っていなかった音響システムでは、その演奏や歌が客席はもちろん、ステージ上のメンバー達にもほとんど聞こえていなかったのは、歴史上の真実となっています。
ただし、それでもライブ盤を作りたかったレコード会社の要請は厳しく、既に1964年のアメリカ巡業時から、各所で実況録音が試みられましたが、その中で特に有名なのが「ハリウッドボウル」における音源です。
これは、まず1964年8月23日に録音された中から、12曲が翌年に発売予定とされましたが、音質的な問題はもちろんの事、演奏レベル云々の事情もあってオクラ入り……。そして翌1965年8月29&30日、場所も同じハリウッドボウルで再びライブレコーディングが敢行されますが、これもまた……。
ところがその音源が巧みに編集され、1977年5月に1枚物で待望の発売となったのは、既に流出していた音源による海賊盤の存在があった事に加え、ビートルズが下積み時代だった1962年のライブ音源が、「Live! At The Star-Clue」としてドイツのレコード会社から堂々と世に出ることになった所為だと言われています。
そして前述した3ステージ分のマスターテープが、ビートルズと言えば、この人というプロデューサーのジョージ・マーティンに委ねられ、録音エンジニアのジェフ・エメリックとの共同作業の末に完成されたというわけです。
A-1 Twist And Shout (1965年8月30日録音)
A-2 She's A Woman (1965年8月30日録音)
A-3 Dizzy Miss Lizzie (1965年8月30日録音)
A-4 Ticket To Ride (1965年8月30日録音)
A-5 Things We Said Today (1964年8月23日録音)
A-6 Roll Over Beethoven (1964年8月23日録音)
B-1 Boys (1964年8月23日録音)
B-2 A Hard Day's Night (1965年8月30日録音)
B-3 Help ! (1965年8月30日録音)
B-4 All My Loving (1964年8月23日録音)
B-5 She Loves You (1964年8月23日録音)
B-6 Long Tall Sally (1964年8月23日録音)
上記のプログラムのとおり、音源は両年の演奏を混ぜ合わせて使われていますが、それでも当時のステージの流れが上手く再現されています。またビートルズのパフォーマンスも、流石に長年の巡業で鍛え上げられた現場主義というか、その纏まりやノリは、ロックの根源的なビートが荒っぽさの中で存分に活かされた名演といって、過言ではないでしょう。
ジョンの熱いシャウトが観客の熱狂を煽る「Twist And Shout」、スタジオバージョンよりも、さらにロックっぽいアレンジに変えられた「She's A Woman」、そして強烈なドライヴ感が永遠に不滅の「Dizzy Miss Lizzie」と続くド頭3連発には、ビートバンドの本質を鋭く演じていたビートルズの凄さが凝縮されています。
確かにジョージ・ハリスンのギターは、今となっては些かショボイのは否めませんが、リンゴのドラムスの的確な上手さは流石ですし、ジョンのサイドギターとボールのペースが鉄壁のコンビネーションで、これぞロックの熱気が歴史となったのも肯けます。
また、そのジョージにしても、持ちネタの「Roll Over Beethoven」では、後年の悟りの境地とは雲泥の熱血節を披露して素晴らしく、ツッコミ過ぎるギターソロや微妙にリバプール訛りの歌いまわしが憎めませんねぇ~♪
同時にポールのドライヴしまくったベースも強烈な存在感! 今でも驚異という「All My Loving」での歌いながらの4ビートランニングには圧倒されますよ。
そしてバンドとしての纏まりの良さは、本当に特筆すべき点が多く、例えばリンゴの楽しいボーカルを支える「Boys」でのコーラスワーク、随所で聞かれるジョンとポールの胸が熱くなるようなハーモニーのせつなさ、さらにオリジナル楽曲の不滅の良さ♪♪~♪
ただし、こうした音源は、既に述べたように、多くの海賊盤としてコアなファンの間に流通していましたから、それらよりは音質が良くなっていることを除けば、特に新鮮味が無いのも事実でした。以下に一応、リアルタイムのレコーディング演目を記しておきます。
☆1964年8月23日
01 Twist And Shout
02 You Can't Do That
03 All My Loving
04 She Loves You
05 Things We Said Today
06 Roll Over Beethoven
07 Can't By Me Love
08 If I Fell
09 I Want To Hold Your Hand
10 Boys
11 A Hard Day's Night
12 Long Tall Sally
キャピトルで作られたオリジナルマスターミックスでは、ステレオとモノラルの両バージョンが残されているようですが、海賊盤としてアナログ時代に流出していたのは、主にモノラルバージョンでした。これは関係者用のアセテート盤が元ネタらくし、ヒスノイズも確かにあるのですが、海賊盤そのものの盤質の悪さと音場を占有している歓声の凄さゆえに、それほど気になりません。
そして何よりもビートルズ全盛期の勢いが素晴らしく、個人的には大好きな「You Can't Do That」のライブバージョンには感涙♪♪~♪ また「I Want To Hold Your Hand」でのジョンとポールのハモリも、本当にせつないですよ。それとミディアムスローな「If I Fel」では、劣悪なステージ環境でありながらのハーモニーワークの上手さ、そしてバンドアンサンブルの纏まりの良さに驚かされます。
☆1965年8月29&30日
01 Twist And Shout
02 She's A Woman
03 I Feel Fine
04 Dizzy Miss Lizzie
05 Ticket To Ride
06 Everybody's Trying To Be My Baby
07 Can't By Me Love
08 Baby's In Black
09 I Wanna Be Your Man
10 A Hard Day's Night
11 Help!
12 I'm Down
こちらの音源は主にステレオミックスが流出していて、まずは何といっても公式盤では使われていないとされる8月29日の演奏に興味深々! しかし結論から言えば、バンドメンバーがお疲れ気味なのか、ミスの連発……。全体的に、もっさりとした感じがリアルではありますが、加えて音響システムの不備から「She's A Woman」ではポールのボーカルが入っていないという大失態! それは「I Feel Fine」でも同様に続き、それゆえにジョンの魂の歌が楽しめるというのは言い訳にすぎません。なんとか「Ticket To Ride」あたりからは持ち直すのですが、う~ん……、録音の不備は最後まで随所に汚点を残していきます。
ちなみに私のアメリカ人の友達のワイフが十代の頃、この日の公演に行ったそうですが、彼女の話によると演奏も歌も覚えていないほどに興奮したそうで、つまりはビートルズとその場を共有した事のほうが大切な思い出だとか!? 演奏や歌が聞こえなくても、何らの問題も無い!?
あぁ、それも「あり」、なんですよねぇ~、大衆芸能の本質は♪♪~♪
一方、翌日8月30日の音源は、公式盤でもメインで使われたとあって、ビートルズの演奏もビシッと芯が通っています。
気になる新演目では、「Baby's In Black」の和やかなムードが実に素敵♪♪~♪ また「I Feel Fine」でのイントロフェードバックやジョンとジョージによるツインリードのギターアンサンブルが、これまたニューロックの萌芽として貴重ではないでしょうか。
ということで、この3日間の音源は全て、3トラックのオリジナルマスターが存在しており、公式盤の「ハリウッドボウル」も、そこから作られたわけですが、実はその後にも度々、拡張バージョンの発売が噂されてきました。個人的には前述の「アンソロジープロジェクト」の時点で、それが実現するかと期待したのですが……。
そして今回の新規盤でも無かったことにされているのは???
それゆえに、このアナログ盤が尚更に愛おしくなったりもしますが、海賊盤では完全バージョンも楽しめるわけですから、このあたりは皆様それぞれの思い入れの大きさによるところでしょうか。
ビートルズ神話への期待と夢は、やっぱり尽きませんね♪♪~♪